私達の日常
お城に昨日助けた商人さんがやって来た。
客室で対応するけれど、グリフは手渡して来たお土産を受け取らなかったよ。
たぶんお城にコネが欲しかったんだろうってグリフは伝えて来たの。
キッパリお断りして帰ってもらったんだ。
次の日はシャーンの訓練を見守ることに。
皆が見ている中で頑張っていたみたいだけれど、体力の限界がきてランニング中に倒れちゃった。
次の日にはやっぱり体ビリビリでお休みになったからルシフェリアのところに遊びに行ったんだ。
床にごろ寝しながら本を読んだりベッドにゴロンとしてお菓子を食べたり、やっていることは今までと変わらないよ。
話さなくっても何となく通じている感じがして一緒に居ると落ち着くんだ。
そんな感じでゆったり時間が流れるの。
だけどちょっと眠くなっちゃうよ。
それも気持ちよさそう。
目を閉じて微睡の中に。
このままご飯の時間まで……。
「ルシフェリア様、たまには外にお出にならなければ体に悪うございます。今日はお休みですがシャーン様も訓練に励んでおりますぞ。是非とも爺と一緒に運動いたしましょう!」
と思っていたけれど、グリフの声がちょっとうるさい。
ルシフェリアも出る気がないみたいだし、
「今日こそは是非!」
こっちもまるっきり諦めなさそう。
「さあ御一緒に! おいっち、にぃ、さん、しぃ!」
開けられない扉の向こうで騒がしく運動をしているみたい。
これじゃあグッスリ眠れないよ。
ルシフェリアも本に集中できなさそうで、
「モモ、外に出かけましょう」
部屋から出る決心がついたみたい。
「いいけど、グリフと一緒に行った方がいいんじゃないのー?」
(うん、どうせ外に行くのならその方がいいよ)
「ダメ。運動させられちゃうもの。疲れるのは嫌」
「いいけど、アリアには言って行くよー? いきなり居なくなったら心配させちゃうもん」
「分かった。それでいいわ」
ということで私はアリアに話しに行ってからルシフェリアを部屋の外に連れ出したの。
「それで何処に行きたいのー?」
「特に決めていなかったけれど。そうね……。新しい本を手に入れたいわ。書庫に連れて行って」
「いいよー!」
私はルシフェリアを抱きあげて書庫に向かっちゃう。
場所は知っているけれど、行くのは今日が初めてかも?
お城の一角にあるその部屋に入ってみたら、私の背丈よりも数倍は先にある天井までギッチギチに詰まった本棚でいっぱいだったよ。
入口近くのカウンターには眼鏡をかけた男と女が本を読んでいたの。
私達に気が付くとスッと頭を下げてくれたんだ。
ここを管理しているみたいだから声をかけてみよー!
「こんにちはー! ちょっと本を探しに来たよー!」
「リヴァイル、ユイリア、何時も通り私が来たことは内緒にして」
『畏まりました』
二人を知っているみたいだね。
本が好きだから誰にも内緒で入り浸っていたのかも?
ルシフェリアはそれだけ伝えると奥の方に行っちゃったから私と御主人もついて行ったよ。
幾つもの本棚の先。
地下に伸びる階段がある。
『この先禁書庫立ち入るべからず』だって。
ルシフェリアが足を踏み入れようとしたんだけれど、バチィって結界があるみたい。
「やっぱり今日も無理。でも丁度良い。モモ、これを壊してちょうだい」
「えー、いいのー?」
(ダメだから結界が張ってあるんじゃないのかなぁ?)
「だよねー?」
私達が話していたら、
『ダメです!』
と、慌てた感じで書庫の管理人が飛んで来ちゃった。
「そんなに言うなら仕方ない。モモ、適当に倒しちゃって!」
「えー!?」
私、そんなことしたくないよー?
「モモ様を味方につけてルシフェリア様が暴走していらっしゃる!?」
「私達には勝ち目がありません。一度陛下にご相談にいきましょう!」
二人とも走って書庫を出て行くの。
後で絶対怒られそう。
「さあモモ、邪魔者は居なくなったわ。今の内にやっちゃいましょう」
「やらないよー?」
(まあ、そうだよね)
「だったらいい。自分でやる。この時の為に勉強して知識を蓄えていたのだから。アリアに感謝!」
私は手を出さなかったけど、それならって感じでルシフェリアが動き出しちゃった。
バチっと痛そうな結界に触れてブツブツと呪文を呟いている。
(モモ、止めなきゃ不味いんじゃないの?)
「ルシフェリア、皆に怒られちゃうよー?」
「……構わない。知識欲のためならそのぐらい! さあ、これで、解呪!」
風船が弾ける様な音を立てて結界が弾け飛び、今だという感じで入って行っちゃった。
放って置いたら不味いよね。
私達も禁書庫に入ってみたよ。
上とは違い、本の一つ一つが透明なケースで展示してあって、どれも何かしらの力が宿っている感じがする。
ルシフェリアはその一つに手をかけるとおもむろにケースを外し、中の本を手に取っちゃった。
シュバ―って本から虹色が溢れ出る。
周りの景色が分からなくなって気が付いた時には知らない場所に立っていたよ。
ここは普通よりもとても高く太い木々が生い茂る森の中。
動物や虫の騒めきが耳に聞こえるけれど、気配は全く感じないの。
全部が本物じゃないみたいに。
御主人は……うん、隣に居てくれるね。
ちゃんと温かくって安心しちゃう。
(何だろうここ?)
「分かんない。あの本が関係あるのかなぁ?」
ルシフェリアは……?
気配は近く。
そっちを見てみると、本を片手に走っているよ。
「待ってー、ルシフェリアー! 一人だと危ないよー!」
(僕達はここに居るよ~!)
二人で声をかけても止まってくれない。
だったらこっちから行っちゃおうって走ってみたけれど、ルシフェリアとの距離がどんどん離れて行っちゃうの。
私は結構全力なのに!
何かがおかしい。
やっぱりここって本の中?
とにかく急いで追いつかなくちゃ。
ずっと走ってついて行くと、ペラっとめくられる本の音が。
一瞬で景色が変わってそこそこ大きな湖の畔。
中心には六畳ぐらいの島があるよ。
そこにはゴツゴツとした大きな岩があるぐらいだね。
湖の周りは木々がいっぱい。
さっきの森の何処かなのかな?
ルシフェリアの気配はあの島のところから感じるの。
ぱっと見何にもないように見えるけれど、行ってみたら何か変わるかも。
あそこまではジャンプじゃ遠い。
泳いで行くのは濡れちゃうもんね。
ちょっと下がって勢いつけて、バーンと強く水を踏む。
沈み込む前にもう一歩。
二歩、三歩、四歩って水の上を歩いちゃう。
途中でポーンってジャンプして、真ん中の島に着地したよ。
大きな岩で囲まれた場所にルシフェリアがしゃがんでいたんだ。
「みーつけた!」
(やったね)
「あ、モモ。見つかっちゃった」
声をかけると普通に話しが出来るみたい。
「何で逃げていたのー?」
「この本を読むため。進めるには書かれている通りにしなければいけないみたい。ここで待っていればいいの」
「ふーん?」
それじゃあ何か起きるのかも?
少し待っていると空を覆い尽くすぐらいの巨大な鳥が現れた。
湖の周りにある木々をバタバタ倒しながら着地すると、大きな顔がズイット近づいてくる。
警戒はしていたけれど、敵意のようなものは感じないよ。
そもそも本のモンスターだから感じないのかもしれないけれど。
何かあったら逃げちゃおうって思っていたら、
「デルミスの魔導書に選ばれたか。ならば我が背に乗るがいい。約束の地に送ってやろう」
悪い鳥じゃないみたい。
その場で首を下ろしてくれたんだ。
ルシフェリアは頑張って登ろうとしているみたい。
でも大きすぎて岩に乗っても無理っぽい。
「モモ、手を貸して」
「いいよー。でもその前に教えて鳥さん。この本の中から出るにはどうすればいいのー?」
「本の試練に打ち勝てば出られるはずだ。負けた場合は永久に閉じ込められることになるだろう。この我のように何らかの姿に変えられてな」
元々は人間だったのかな?
鳥さんは何となく寂しそう。
私達もそうならないように頑張って試練を終わらせなきゃ。
御主人とルシフェリアをひょいっと抱えて鳥さんの背中に飛び乗ったんだ。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン(元気少年)
王女ルシフェリア(元引きこもり)
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(妹弟ラブ)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
王女アンリマイン(泣き虫)
王女マーニャ(派遣王女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




