獣人の野盗
ファイスが移送されて直ぐ、私は何処かも分からないお城を探して向かったんだ。
案外簡単に見つかったんだけど、そこはモンスターの巣窟になっていたよ。
バシバシ倒したりしながら地下への階段を見つけたの。
奥には金貨や宝石が置いてある部屋がある。
そこでファイスを見つけたんだけれど、黒竜が寝ていたみたい。
気にしないでって言っても追い掛けて来ちゃったんだ。
とりあえずバラバラに崩れるお城を脱出して追い払ったんだよ。
ファイスも無事でよかったけれど、今度は百人近くの獣人の野党が集まって来ちゃったの。
ニヤニヤと笑いながら近寄って来る多くの野党。
ボスはたぶん一番前に居るワニの獣人だね。
「ほう、これはこれはストレイキャットとは珍しい。こいつは高く売れそうだ。そちらの男は希少性も何も無い人間か。あまり高値で売れそうもないな。手間の方がかかりそうだ。面倒だ、殺してしまえ!」
『いやっはあああああ!』
陣形や作戦なんてまるでなし。
一斉に武器を振り上げて襲って来ちゃう。
「そもそも貴様等のような悪人が居るから俺の母が殺されたのだ! 俺が死ぬまで殺してやるぞ!」
普通なら怯みそうな数だけどファイスもやる気みたいだね。
もちろん私も負ける気はないよ。
チャッキり妖精剣を構えちゃって戦闘体勢を取っちゃうの。
「御主人、ちょっと待っていてね! 直ぐに倒して戻って来るよー!」
(うん、このぐらいなら楽勝だね! 頑張って来て!)
「はーい!」
なるべくファイスに敵が雪崩れ込まないようにっと!
「てええええい!」
一気に加速しシュシュっと斬撃。
手あたり次第にバッタバッタとなぎ倒すんだ。
一応手加減はしてあげる。
それでも百人なんてあっという間。
全員空に打ち上げると地面にドスンと落ちて来る。
背中を打ち付けたりお腹から落ちたりして流石にこれで動けないかな?
残っているのは後数人。
「な、なんだこいつ。恐ろしく強いぞ!? 一体何者だあああ!?」
ワニは狼狽えているみたい。
でも大丈夫。
一分もかからないよ。
ほら、もう手が届く距離。
「うおおおおおおああああああああ!?」
ズバンとパンチで一発やってポーンとまたまた空に打ち上げるの。
ドンと落ちたところに私は剣を突き付けた。
「まだやるのー?」
「き、貴様は一体!?」
「私はモモだよー!」
「モモ!? ウィーディアの英雄モモだとおおおお!? まさかそんな大物が!? 俺達が悪かった、もうしないから許してくれないか!?」
「えー、どうしようかなー?」
「モモ様、悩む必要などありません! こんな奴等はこうしてしまうのが世の為なのです!」
「ギャアアアアアアア!」
近くにやってきたファイスがワニの心臓に剣を突き立てた。
流石にこれは助からない。
止める間もなくまた近くの相手に近づいて……。
「やめろおおおお! 父さんに手を出すなああああ!」
叫んだのは狙われている犬の野盗じゃないよ。
少し遠くに隠れていたまだ子犬の男の子。
とても怒った顔でこちらに走って来るの。
ビックリしたファイスは手を止めている。
今の内にパシッと剣を奪ったんだ。
武器も何にもなくただ体を張って居るだけの子供にファイスも握った拳を崩したの。
子供の自分を思い出したのかもしれない。
それでも怒りは収まらない。
力いっぱい全力で子供の頬を平手で打ったんだ。
ズザっと地面に滑ってね、涙を流しながら睨みつけてくる。
その子を庇うように犬の父親が包み込むように抱きしめるの。
「……正義感ぶるなよ。お前達のやっていることは犯罪だ。どれだけの悪事を働いた? どれだけの人間を殺して来た!? どれだけの人間を不幸にしたと思っている! そこに居る限りお前達こそ大悪で、お前達こそ死ぬべき者だ! それが嫌なら真面に生きろ! 出来ぬならばここで死ね!」
再びファイスは拳を握る。
だけどそれは地面に落ちた。
思いっきりやったみたいだから拳がズタズタになって血が流れているんだ。
自分の心で出来るギリギリの譲歩だったのかも。
それで生き残った野盗達は負けを悟って逃げて行ったよ。
さっきの親子も一緒にね。
「もう追う必要はありません。あいつらの拠点も潰したのですから。あの規模では何れ食料が尽きて立ちいかなくなるでしょう。餓死するか、道を正すか……。まだ悪事を働くのならば次は容赦なく叩き斬られるでしょう」
「うん、そうなるかもね」
これで解決。
御主人は……。
あ、走って来たよ。
怪我もしていないし汚れもなさそう。
(二人共無事だったね。それじゃあ帰ろうか!)
今まで通りの笑顔にちょっと癒されちゃう。
「うん、帰ろうかー!」
私達はモンスターを警戒しながらゆっくり町に戻って行ったんだ。
ちゃーんと無事に帰れたよ!
そのまま直ぐにファルマー屋敷。
ファイスはあんまり良い顔はしていないけれど、連れて行かなきゃ賭けが終わらないもんね。
見張に話を通してね、武器を没収されて屋敷の中に通されたんだ。
それで部屋に入るとファルマーはやっぱり偉そうに椅子にふんぞり返っているよ。
「助けたから私の勝ちだね!」
「確かに、無事に連れ帰ったようだな。未だに襲って来そうな雰囲気を感じるが約束は約束だ。何処へなりとも行くがいい。ただし、この町以外にな」
「えー、約束が違うよー!」
「ふん、許してやるだけ有難く思うがいい。俺様の命を狙ったのだ。近くにおいておける訳がないだろう。それともまだ付け狙うというのか?」
私はファイス見てみたよ。
武器がなくても殴りかかりそうな感じ。
だけどそれでもグッと我慢しているようだね。
これなら安心……出来るのかなぁ?
「貴様を許すことなど出来ない! だが、お前を殺したとて恨みの連鎖が続くだけだ。貴様が二度と無用な殺しをしないと誓うのならば……!」
やっぱり諦めきれないのかな。
それ以上の言葉は出て来ないみたい。
「……分かった、約束しよう。それでは出て行ってくれ。顔を見るだけでも不快なのだからな」
「……お互い様だ!」
「今後出会うようなことがあれば……」
「もしも俺の前に現れたのならば……」
『その時は必ず貴様を殺してやる!』
結局こんな感じになっちゃった。
(ちょっと不味いんじゃない? 早く出て行った方がいいのかも。兵士の人も睨んでいるし)
ファルマーに止められているから動かないけれど、解除されたら間違いなく斬りかかって来そう。
「うん、そうするよー!」
下手なことにならない内にファイスを引きずって屋敷を出たんだ。
約束通り誰かが追って来るようなことはなかったよ。
「ふぃぃ、危なかったねー!」
(そうだね。とにかくこの町には居られないようだからファイスの引っ越しをお手伝いしようか。あんまり長くやっていたら何か云われそうだし)
「うん、分かった。じゃあファイス、引っ越しのお手伝いをするよー!」
「……その必要はないですよ。新人は兵舎暮らし。手荷物といえばこの剣ぐらいのものですから」
「そうなんだ? じゃあどこへ行くのー?」
「気の向くまま……。と言いたいところですが、こんなに急では路銀もないですね。近くの町で冒険者でもやることにしますよ」
「行けるところなら転移から送って行けるよー?」
「いいえ、これからは自分一人で生きて行こうと思います。この剣一本でやれるところまでやって行きますよ」
「そっか、応援しているよー!」
(頑張ってね~!)
「ありがとうございます。今まで色々と世話になりました。名残惜しいですが、ここで別れようと思います。では」
ファイスは頭を下げて背を向けたよ。
「うん、バイバーイ!」
(また会おうね~!)
私と御主人は手を振ってお別れしたんだ。
「もうこの町にも用事はないね。私達も戻ろうかー!」
(そうだね!)
それでお城に戻ってね、お母さんに終わったって報告したよ。
いっぱい誉められて御馳走を用意して貰ったんだ。
後はお部屋に帰ってグッスリたっぷりお休みしたの。
とっても気持ちよくって次のお昼まで転がっちゃったよ。
★
「モモさん、聞いていますかモモさん!」
「えー、聞いているよアリアー?」
「でしたらそんなに机に突っ伏さないでください! 大切なお勉強なんですよ!」
仕方ないから上半身を起こすんだ。
ただいま私はアリアとお勉強中。
久しぶりだからがんばっていたけれど、途中から右から左へすり抜けていたよ。
でも今からは頑張って聞いちゃうからね。
……たぶん一分、二分ぐらい……?
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン(元気少年)
王女ルシフェリア(元引きこもり)
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(妹弟ラブ)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
王女アンリマイン(泣き虫)
王女マーニャ(派遣王女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




