王位獲得戦
ミエルに説得されたアカネ。
ちょっと落ち着いたら分身の剣を渡してくれるように頼んだの。
それで承諾してくれたんだよ。
でね、ウィーディアに戻ろうかって自警団代表のライルに伝えたら、明日この国の王様を決めるイベントがあるんだって。
御馳走してくれるみたいだから頷いて返事をしたんだ。
それで次の日。
トーナメントを見学していたんだけど、アカネの姿も見えたんだ。
順調に勝ち抜いているみたい。
残り四人となったところで模擬戦が行われるけど、一人が辞退して余った人が私と戦うことになっちゃった。
三分ぐらい戦ってある程度頑張ってもらったところでパシッと倒したんだよ。
「大丈夫ー?」
ゾーンを治療して声をかけてみたら頭を押さえながらゆっくり起き上がったんだ。
「……畜生、こんな大勢の前で恥をかかせやがって。俺が王になった暁には覚えていろよ」
そう云うと背中を向けて去って行く。
わざと負けちゃうようなことはしたくないしこれは仕方ないかな?
それで私も観客席に戻ったの。
「ただいまー!」
(モモ、お疲れ様!)
「お見事でした。流石はウィーディアの英雄ですな。さあ、次の戦いが始まりますぞ。もうこのようなことはないと思いますので落ち着いて見学いたしましょう」
「そうだね!」
始まるのは残り二人の模擬戦だよ。
私と同じように木剣を使うアカネと魔導士風の男、ポードが戦うみたい。
それで魔法を使っても良いのかと相談しているみたいだね。
一応使える魔法を確認してね、殺すような威力じゃなければ問題ないということで合図がかかったよ。
「行きます!」
木剣を構えて迫るアカネ。
剣を腰に差したままにして距離を取るポード。
当然距離があっても使える魔法が先制で放たれちゃう。
ビリっと電撃が混ざったバスケットボールぐらいの水の球。
剣じゃ受けられないし触ったら濡れて痺れちゃいそう。
そんな攻撃をアカネはヒラリヒラリと躱して追い詰めていくよ。
バシバシバシバシ魔法が飛ぶ。
地面は多くの水を吸って泥が広がっている。
「追い詰めたのは此方の方だ」
そんな感じの顔をしている。
正直歓声で二人の声は聞こえないよ。
ポードは濡れた地面を伝わせるように電撃を放つ。
一瞬後、アカネに届くはずだった攻撃は、地面につき立てられた木剣を足場にしてやり過ごされちゃった。
確か木って電気を通さないんだっけ?
近場で魔導士は剣士には敵わない。
魔法を使う間を与えず、バスんと一発与えて気を失わせたんだ。
それでアカネの勝利が告げられたよ。
後はもう一回投票が行われてね、三人が選ばれることになったんだけど、私が戦った鎧のゾーンが落とされたんだ。
もしかして私が倒しちゃったから?
うーん、まあ皆が選んだんだもん。
仕方ないよね。
そして最後の決勝戦。
三人がもう一度自分達の主張を述べて奥の手の開示をしたの。
ポードが大範囲の攻撃魔法、もう一人の男は自分では何も出来ないから町の人々の力を借りると。
アカネは隠してあった小さな刀のアーティファクトを取り出した。
空に掲げると刀の刃が無尽蔵に現われる。
この力を持つ私こそ王に相応しいってね。
投票と開票は迅速に行われて結果が告げられる時間。
盛大なファンファーレ。
そして告げられた名前は……。
「次の王は、ウル・リンデスに決定いたしました! 盛大な拍手と歓声をお願い致します!」
私達が全く気にしていなかった人物だったよ。
会場はウル・リンデスの名前を復唱して大盛り上がり。
アカネとポードは何も云わずに闘技場を去って行くの。
「私ちょっと行ってくるよー」
(アーティファクトを持っているのなら放って置けないもんね)
「うん、まだ持っているなんて思ってもみなかったよ」
ライルに声をかけてアカネを追い掛けるんだ。
ちなみにミエルもついて来ようとしているけれど、追いつけないから置いて行くね。
気配を探って見つけたのは闘技場の入り口辺り。
「あら、追いかけて来られたのですね。負け犬を笑いに出も来たのでしょうか?」
「違うよ、そのアーティファクトも出来れば渡して欲しいんだ。危ないかもしれないもん」
「いいえ、これだけは渡せません。そもそもこれはウィーディアにあったものではないのですから。我が家に伝わる家宝なのです。どうしてもというのであれば力尽くできなさい!」
アカネはキッと睨みつけてくる。
渡してくれる気はないみたいだね。
そもそもウィーディアで出て来た物じゃないのなら私が持って帰る必要はないかも。
「じゃあ渡さなくてもいいよー。だけど悪いことに使ったらダメだよー」
「……ご安心を。これは守り刀。悪鬼を退ける為の物。血で穢しては御先祖様に申し訳が立ちません」
要らないって伝えてあげると構えを解いてくれたよ。
(つまり使うつもりがないってことだね)
「それじゃあこれで解決かな!」
「では私は失礼いたします。ムサシ様の願いも叶えられず王となれぬのならば、もうこの国に長居する必要すら感じませんので。一応、見逃して下さったことに感謝致します」
アカネは軽く頭を下げて去って行こうとするけれど、途中で一回止まったよ。
「……一つだけ。今回の選定戦、少しだけ怪しい気配がします。王に選ばれたあの者はそれほど目立ったことを成した気がしませんでした。もちろんただの想い過ごしなのかもしれません。ただ、私はそう感じたのです。精々お気を付けくださいませ」
そして去って行っちゃった。
もしかしたら幽霊になったムサシを追い掛けるのかも?
これ以上関わる必要がないし、私はライルの居る客席に戻ったよ。
ミエルも全速力で戻ってきているね。
「ただいまー!」
(戻ったよー!)
「お帰りなさいませ。捜し人は見つかりましたかな?」
「うん、ちゃんと話をしてきたよ」
「それは良かった。それでは宿に戻りましょう。もうここでのイベントはありませんからね」
「その前に教えて。もしかしてさっきの王様ってズルして選んだの?」
「おや、気付かれましたか。流石は英雄、細かいところにも目を配られていらっしゃる。どのような者が参加していようとも元々あの者が王となる結果でございます」
「それじゃあ今までのイベントは全部ウソだったってことだね」
「我が国には必要な措置なのです。国民が自分達で選んだ王であることがね。これで多少の失敗をしたとしても寛容になることでしょう。それよりどうでしょう、新たな王ウル・リンデスにご挨拶をなされては。この国との友好のためにも是非」
「うーん、だけど私あんまりマナーとか知らないよー?」
(あんなに勉強したのにね)
私はしーって唇に指を当てるの。
「構いませんとも。あの方も元は商家の生まれ。気にもしないことでしょう」
「だったらいいよー。今から行くのー?」
「いえ、あの方にも準備がございますので明日の昼ということで調整いたしましょう。宜しいでしょうか? もちろん引き続き宿に泊まってくだされば宜しいので」
「うん、大丈夫!」
あそこのお料理も美味しいもんね。
「良い返事をいただき感謝を。では明日の昼前に迎えの馬車をご用意いたします」
「はーい!」
それで次の日。
ドレスとか何にもないけどある程度身綺麗にして準備を終えたよ。
宿で待っていると六頭もつながった巨大な馬車が迎えに来たんだ。
私と御主人はその馬車にピョーンと乗るの。
ライルと案内役のミエルも居るみたい。
ウィーディアの皆は歩きだよ。
ガタゴト移動しちゃってね、大きなお屋敷に到着したの。
「大きいねー!」
(だね)
お城とまではいかなくても相当な規模の庭と巨大な建物が建っているんだ。
多くのメイドさん達も忙しく働いているよ。
「ええ、城はありませんが王の居住地ですからね。それなりの規模にしなくてはなりませんので居なくなった貴族の屋敷を頂いたのですよ」
「そうなんだ?」
「ええ、そうなのですよ。他にも色々話したいことはありますが、まずは中へ入らせていただきましょう。王をお待たせするのも失礼ですので」
でね、執事さんが数人がかりで屋敷の門を開けて私達はお庭を通って屋敷の中へ。
出迎えてくれたのは王様になったウル・リンデス。
あの時と違うのは豪華な衣服を身に着けているよ。
「こんにちはー!」
(招いてくれてありがとうございます!)
私は元気に挨拶したんだけれど、
「ウィーディアの英雄よ、ようこそ我が国へ。ただ、もう少し礼儀をわきまえてもらえないか? 俺はこの国の王なるぞ」
思いがけない尊大な態度。
これ大丈夫なのかなぁ?
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン(元気少年)
王女ルシフェリア(元引きこもり)
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(妹弟ラブ)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
王女アンリマイン(泣き虫)
王女マーニャ(派遣王女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




