ファランクスの死
村で保護したシャーンに話を聞いたよ。
でも手掛かりはあんまり無いみたい。
御馳走してもらったおじさんとおばさんにお礼を言ってお城に帰ったんだ。
感動の再会。
それからムサシに罠を張ったんだけれど、三日経っても現れなかったよ。
そんな時ベノムからジェイガストの町にムサシが出たって連絡があったの。
私はアーティファクトの一本、アルマリクを貰ってその町に行ってみることにしたんだ。
「さあここです」
ドムンにつれてこられたファランクスの屋敷。
向かったのは死体がある部屋だよ。
今正に、ここは捜査現場って感じ。
多くの兵士達が隅々まで調べているんだ。
ここからだとまだ見えないけれど、床に血が流れているのは分かるよ。
「これはこれはサンサウド兵長! そちらはどなたでしょうか?」
と、やって来たのはこの場を仕切っていた男の人だよ。
ドムンに挨拶をして私のことを見ているの。
意外と偉い人だったりして?
「聞いて驚くがいい。この方こそウィーディアの英勇モモ様であらせられるぞ!」
「モモだよー、こっちは御主人、よろしくねー!」
(ヒロで~す。よろしくね!)
「うお、モモ様といえば伝説の英雄ではないですか!? まさかこの事件のためにわざわざお越しくださったのですか!? おおっと失礼。自己紹介がまだでしたね。私はコド・ダックネスです。どうぞお見知りおきを!」
この人だけじゃなくて周りの人達もこっちを見ているね。
何だかちょっと照れちゃうよ。
「違うよー、私ね、ムサシがこの町に出たって聞いて来てみたんだ。誰か知らないかなぁ?」
「ムサシ、というとファランクスが従えていた者という話でしたな。消えたファランクスがここに居るということはムサシも同時に現れたはず。しかしそのような話はこの町で聞いたことがありませんぞ? モモ様はどなたからお聞きになられたのでしょうか?」
「んとね、ベノムから聞いたんだよー」
「そんな重大なことであるのなら我々の誰かしらが知っているはず。ならばベノム様は何処からお聞きになられたのでしょうか?」
「分かんないけど、たぶんこの町の通信じゃないのかなー?」
「通信ですか……。確かにその可能性もありますな。ならば一度そちらに行ってみては如何でしょう。何か手掛かりになるような物があるかもしれませんよ」
「ならばこのドムンがご案内いたしましょう」
「うん、ありがとー。でもね、こっちも気になっちゃうなー」
「確かに、どちらも繋がっている予感がしますな。しかしながら我々のやれることはほぼありませんぞ。精々死因を探るぐらいでしょう。して、どのような状態で見つかったのだ?」
ドムンが声をかけるとささっと邪魔な物を退かして道を開けてくれたの。
そこにあるのはファランクスの死体。
胸に穴が開いて恐ろしい表情で倒れているよ。
「御覧の通り、心臓を一突き。他に傷もなく一撃で即死させられたようです。現状を鑑みるに文字通りに切り捨てられたというところですかね」
だけどね、相手は偽物を作れるの。
これが本物なのか確かめないと。
躊躇っちゃうけれど、ちょっと触ってみることにしたんだ。
体温はなくて体がガッチガチに固まっているよ。
見ても触っても本物にしか見えないけれど、確かめるにはどうすればいいんだろう?
私には分かんないな。
「これって偽物だったりしなぁい?」
専門家だったら知っているかもってコドに声をかけてみたよ。
「偽物? 別人がなりすましているということでしょうか?」
「ううん、違うよー。剣の能力で偽物を作り出すことが出来るみたいなんだ。だからちゃんと調べたいんだよー」
「ふむ、よく観察してみましょう」
コドはファランクスの死体の前に腰を下ろした。
「まずは顔のつくり。変装をしている様子はありません。服装に関して言えば連れ去られる前と全く同じ物であると思われます。この布地も……ナイフで切り裂ける普通の物でしょう。この傷口の中、血は完全に固まってはいません。触れてみれば……この通り、ナイフにも付着いたします。流石にここまで精巧な物を作れるとは思いませんが……。一応魔導に精通している者にも調べてもらいましょうか?」
「うん、お願いね!」
それで近くに居た人が調べてくれたんだけど、魔力のようなものは感じられないって。
つまりこれは本物でファランクスの死体なんじゃないかってこと。
私としては敵が一人減ったのかなぁ?
皆にお礼を言ってドムンとお城に通信が出来るところに行ってみたよ。
中心部から随分離れて町の外周に隣接するように建っている砦がその場所だよ。
何かあるかなって警戒していると、血の臭いが漂ってくるの。
……やっぱりこの中から。
急いで扉を開けたらね、斬り殺された兵士達が点々としていたんだ。
だったらムサシが自分で情報を流したのかも。
何時までも襲って来ないってことは、
「お城の方が危ないかもー!」
(うん、戻った方がいいかもね)
ドムンにお別れを言って町を出発するよ。
急がなきゃって感じで結構な速さを出していたんだけれど、途中で急停止して周りをグルグル見渡しちゃうの。
誰かの気配があったわけでも殺気を感じたわけでもない。
ただ何となく、野生の勘的なものだよ。
ここはサッと風が吹き、長く伸びた草草が揺れて音を鳴らす草原。
虫、動物、危険なものの気配は感じない。
でも分かる。
ここには何か居るはずだよ。
モンスター?
それとももしかして……。
(モモ?)
「敵が居るのかも」
御主人は邪魔をしないように口を閉じてくれたんだ。
チャキッとティターニアの鞘に手をかけた。
相変わらず心地よさそうな草原の音を聞きながら今か今かとその時を待つ。
なにげなくフッと移動してみると、自分の居た場所に青白い剣線が飛んでいた。
そこには剣と腕だけが浮き上がりまたフッと消えていく。
「出てこーい!」
呼びかけても返事はないよ。
にらみ合いにもならないにらみ合い。
だけど、何処からでも出てくる相手が有利。
結局待つしか方法はないの。
ただ、相手が居るってことだけは分かったから油断はしなきゃいいだけだよ。
上も下も右も左も前も後も全部に気を張り巡らせて頑張っちゃう。
集中力は無限大。
例え何時間でも大丈夫!
ほんのり油断した瞬間に噛みついてあげるよ!
風が凪いで静けさが増す。
二度目の攻撃は……。
「ここだね!」
足元からビュンと剣が飛んで来る。
ステップで躱してムサシの腕にズバッと一発。
浅い手応え。
赤い血が空中に舞っているよ。
「やはり面倒。貴様は後回しだ……」
そう言って攻撃をしてこなくなった。
嘘かもしれないし数分待ってから移動を再開したの。
今のところは何にもしてこないし本当に消えちゃったのかも。
気を付けながら頑張ってお城まで戻って来たよ。
(ちょっと肌寒い感じがするね)
「うん、お布団でぬくぬくしたいよー」
もう夜だしそろそろお休みしたいけどね、所々凍り付いているし、何かがあったみたい。
現われたのはたぶん中庭。
ヒョイッと向かったその場には多くの怪我人が倒れていたんだ。
今、全力で治療にあたっているいる感じ。
肝心のアーティファクトは……ムサシの手に渡っちゃったみたい。
中庭の中央に立っている姿があるもん。
私はティターニアを構えてね、戦闘体勢を取っちゃうの。
「おいモモ、下手に近づくな。今、奴は厳重に封印されて動けない状態だぜ。封印が解けるどころかお前まで閉じ込められちまったらどうにもならねぇぞ」
ベノムが注意してくれたよ。
確かに全然動かないね。
(それじゃあ僕達が会った奴って偽物だったのかな?)
「そんな感じじゃなかったけど? 普通に転移していたもんね」
(どっちが偽物かは知らないけれど、どの道もう一人の方も倒さなきゃね)
「ま、本物であれ偽物であれまたやって来る可能性は高い。引き続き厳重警戒態勢だぜ。お前も疲れているだろう? 今日はゆっくり休んどけよ。こっちとお前の部屋は俺達が見張っておくぜ」
「うん、お願いねー!」
(お願いしま~す!)
ということで部屋に戻ってゆっくり眠ったんだ。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン(元気少年)
王女ルシフェリア(元引きこもり)
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(妹弟ラブ)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
王女アンリマイン(泣き虫)
王女マーニャ(派遣王女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




