無事着地……できたらいいな(十二章終了)
黒い蝶を防ぎ続けているとやっと相手が諦めたみたい。
今度は大人の男になって大きな剣を振るってくる。
衝撃だけでも斬れ飛びそう。
キャットスレイヴで隙をついたんだけど、体をバラバラにしても元に戻っちゃうんだ。
黒猫ちゃんに聞いたらね、ここに弱点はないんだって。
それはこの空間の遥か先にある赤い物。
私は一つの線を伸ばして辿り着かせたよ。
空間が歪みだし、カオスナグラルが爆散したんだ。
それはいいけれど、出て来たのは青空の上。
キャットスレイヴがない私は普通に着地することはできないよ。
頑張って炎を使って勢いを弱めるんだ。
少し速度は落ちたけど、まだまだそうとうなスピードがでているよ。
覚悟を以て足先を。
膝を使って和らげる。
瞬時の衝撃。
今までの怪我もあって耐えられずにガクンと落ちる。
ゴロゴロゴロゴロ転がって石や砂が体に刺さったの。
痛くて痛くて死にそうだけど、私はちゃんと生きているんだ。
だけどこのぐらいの怪我なら自分の力で治せるよ。
「猫猫召喚。……出て来て、癒しの猫ちゃん」
力を振り絞って呼び出した白猫ちゃん。
近くに着地しペロッと舐めてくれるんだ。
少し楽になった気がするよ。
もうちょっと治してもらおうって思っていたら、ドーンと何かが着地した。
見上げると全身の皮膚をはがしたような血を流した化物が居たよ。
何処かのモンスターが弱った私を狙っている?
ううん、たぶんこいつは違うよね。
まだ生きていたんだ。
カオスナグラル!
「貴様の所為で魔界が滅びた。悠久より積み上げて来た努力が水の泡だ! どうあっても殺す! 確実にだ!」
大きな腕が振り上げられる。
回復は……間に合わない。
防ぐのも逃げるのもできなさそう。
でもまだ終わりじゃないからね。
キッと睨んで威嚇しちゃう。
だけど止まってはくれない感じ。
「終わりだああああ!」
だったら噛みついてやろうかと思ったけれど、どうやらしなくてもいいみたい。
急速に近づく気配が二つ。
『お前がなあああああ!』
ベノムとジャック・スローが駆けつけるんだ。
そのままカオスナグラルの背中に二つ斬撃が叩き込まれたよ。
「貴様等ああああああ!」
『がああああああああ!?』
それでもまだ倒れない。
ブンと腕をふり払い、二人を遠くに吹き飛ばしちゃった。
打ち所が悪くて動かないけれどまだ死んではいないかな。
ほんの少し、ほんの数秒の時間が得られて私は立ち上がるよ。
「二人ともありがとう。かなり良くなったよー! 後で治してあげるね!」
白猫ちゃんも頑張ってくれたんだもん。
まだ本調子にはならないし武器もなくなっちゃったけど、こんな相手に絶対負けたりしないから!
「死ねえええええ!」
「死なないもーん!」
相手の突撃に二つの拳で迎え撃つよ。
地面を削り取る手を躱し、稲妻のような蹴りを避ける。
あまりにも鋭い手刀や背中から飛んで来る蹂躙するような踵。
人の常識すら超える角度から来る攻撃。
剣がなくても相手は強い。
だけど慌てず騒がずに、軽い隙でも逃さずに!
シュパッと一発、バキッと二発、背中の傷に三発目!
皮膚が吹き飛び凹っと穴が開くよ。
だけど致命傷には程遠い。
カオスナグラルから止まらない連撃が続くんだ。
私はゆっくり確実に、その腕を、足を、相手の体を破壊する。
続けて続けて続けると、ドンドン動きが鈍ってね、私の方が有利になっていく。
もうちょっと、後少し。
そろそろ止めを刺してあげる!
何もかもを拳に込めて、
「たあああああああ!」
極限の一撃を貫き通す。
ドーンと強烈にぶつけると、
「バカ……な……。私は魔界の王、神なのだぞ……」
「そんなの知らないよー!」
背中の傷痕へ衝撃が突き抜けるんだ。
直ぐに大量の血液と黒い何かが弾け出る。
カオスナグラルの体が砂のように崩れていくよ。
色々大変だったけど、ようやく勝てたみたいだね。
ふぃーと息を一吐きしてね、倒れた二人を治療したんだ。
「どうやら勝てたみたいだな」
「モモ様が無事でなにより。皆も待っています。このまま勝利の凱旋と参りましょう」
「うーん、それはいいけど、キャットスレイヴは魔界に置いて来ちゃったかも」
「ふむ、魔界に置いて来たとなれば我々のようにこちら側に投げ出されているかもしれませんよ。帰る前にこの辺りを探してみましょうか」
「だな、あれは国宝だからな。全軍をあげて探させるか」
「うん、頑張って探してみるよー!」
兵士の皆と合流してね、皆で一緒に探し回ったんだ。
木の上も草の根も掻き分けたんだけど、キャットスレイヴは何処にも見つからなかったよ。
帰ったら怒られちゃうかなぁ?
★
お城の玉座で。
死んでいった皆の追悼。
そして勝利のお祝いが始まっているよ。
「キャットスレイヴを無くしてしまったことは残念です。しかし世界を蝕む悪魔どもを殲滅したのであればお釣りが出るほどの働きです。怒るどころかご褒美を差し上げてもいいほどですよ。むしろ今ご用意して差し上げます」
お母さんがパチンと指を鳴らすととてもいい匂いの何かが向かって来ちゃうんだ。
これはご飯の香りだよ。
ガラガラと運ばれて来たお料理はとっても多くて美味しそう。
私一人じゃ絶対に食べきれない量だよ。
色々頑張ったんだもん、これ食べていいんだよね!?
待ちきれなくってお母さんの顔を見つめると優しく頷いてくれたんだ。
「さあ宴席を始めましょう。皆で飲んで食べて今までの疲れを癒すのです」
『おおおおお!』
「にゃあああああん!」
声がかかると真っ先に料理に飛び掛かっちゃうんだ。
楽しそうな音楽を聞きながら、美味しいお肉をガッツリ食べて、美味しいお野菜しっかり食べて、美味しいデザート楽しんじゃうよ。
「さてモモさん、そろそろお腹もふくれた頃でしょう。まずはこちらをお渡ししましょう。国を救ってくださったお礼、というには少し足りぬかもしれませんが、この国では一番良い勲章です。どうぞお受け取り下さい」
「わーい!」
ツルツルピカピカ綺麗な勲章。
私は喜んで受け取ったよ。
「それと、こちらをどうぞ。国宝であるキャットスレイヴには見劣りしますが素晴らしい名剣です。ティターニアという名で、ウィーディアの初代が妖精の女王から頂いたとの伝説があります。とても良い物なので大切にしてくださいね」
「うん、ありがとー!」
渡してくれたのは虹色の蝶が付いた綺麗な剣なの。
名剣だっていうけれど、形が変わらないからちょっと不便だね。
でも綺麗な装飾がついているから意外と気に入っているよ。
私はもう一度お母さんにもう一度お礼を言ってね、療養しているシャーン達のお見舞いに行ったんだ。
ちゃーんとお土産も持ってるからね!
「シャーン、皆、遊びに来たよー!」
(こんにちは!)
「あ、モモお姉ちゃん、お帰り!」
『お帰りなさい!』
「たっだいまー!」
今日もいい天気。
世界がちょっとだけ優しくなった気がするよ。
皆と仲良く遊んで食べて、お城に鳴り響く笛の音を聞きながら楽しく時間を過ごしたんだ。
これからもいっぱい遊んで楽しんじゃおう!
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン(元気少年)
王女ルシフェリア(元引きこもり)
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(妹弟ラブ)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
王女アンリマイン(泣き虫)
王女マーニャ(派遣王女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




