金を生む者
ラヴィーナとの激闘で背中の腕を折りつくし、ようやく猫ちゃん達の力が通ったよ。
体が元に戻ってね、フルールが送ってくれるんだって。
私は茶室で別れたマーニャを捜すの。
ずっと移動を続けてね、森の中に入って行くよ。
割れた大地の崖下にマーニャの気配が留まっていたんだ。
ヒョイッと抱きしめちゃうと変身が始まっちゃった。
周りが真っ暗になってね、何だか不安になっちゃったけど、頑張って捕まえて猫ちゃん達に助けてもらったよ。
そしたら周りが明るくなって金色の鎧が見えて来たの。
今からが本番っぽい。
戦いが始まったけど、猫ちゃん達は金の像に変わっちゃった。
動かない者を金にさせるんだって。
どうにかして猫ちゃんを戻さないとマーニャを元に戻せない。
頭かそれとも腕?
もしかして足?
考えていても分かんない。
止まっていたら金になっちゃうし、考える前にやっちゃわないと。
グッと地面を蹴り込んだら、キャットスレイヴが手からすっぽ抜けちゃった。
やっぱり金ぴか、カチカチに固まっていて全然動いてくれないの。
また素手でやるしかないみたい。
「てえええええい!」
だけどもう怯まないよ。
ババンと足場を飛び渡り怪しそうな金ぴか兜にアタックしちゃうんだ。
狙いはちょっとバレバレだった?
ガッツリ右腕で受け止められちゃったよ。
代りに飛んで来るのは金ぴか錫杖。
当たったら痛そうだからサッと避けたらね、金色の粒子が飛び散って金色だった分部がよりピカピカに変わるんだ。
もしかしてあれがそう?
でも触ったら危ないかもしれないね。
一度距離を取っちゃって、カチカチのキャットスレイヴのところに戻ったよ。
動かしたいけれどやっぱり無理。
他の方法を考えないとね。
周りを見ても金ぴかだらけ。
ちょっと目が痛くなっちゃいそう。
それじゃあこれに賭けてみよう。
ヒョイっと握り込んじゃうのは地面に落ちていたほどよい小石。
重さもずっしり良い感じ。
金に変えても金は金だもん。
後はこれを投げつけちゃうよ。
「てえええええい!」
流石にまん丸じゃないから狙いは定まらないけれど、数撃てば何時かは当るんじゃないかな?
球の数はほぼ無限。
威力も速度も充分だから。
このまま体力が尽きるまでやっちゃうからね!
ヒュンヒュンバンバン外れた球が壁を砕く。
だけどちゃんと良いところに行く物もあるよ。
流石に予測できなくって錫杖を使ってガンと弾くの。
一撃で破壊は出来なかったけど、大きな傷がついている。
もう数回も当てれば壊れるかもしれないね。
「無駄な足掻きを!」
「無駄かどうかはこっちが決めるよー!」
引き続き手頃な石をドンドン投げつけ続けたよ。
百、千、万。
反撃さえさせない感じ。
無理やり前に出てくるけれど、私もその分下がっちゃうもん。
マーニャの顔にいらだちが見える。
向うにも攻め手がないのかも。
でもそろそろ決着をつけるのもいいかもね。
「こんなものを続けていられるかあああ! 貴様はここで動かぬ物となれええええ!」
怒り任せの突進に合わせてね、こっちも一気に突進するよ。
気を付けるのはあの錫杖だけだもん。
交差する一瞬、バチンと錫杖を持つ手を殴りつけたんだ。
金の粒子のお蔭で私の片腕はガッチガチに固まっちゃったけど、錫杖は何とか手に入れたよ。
後はこれを……!
どうしよう?
振ったところで金の粒子が飛ぶばかり。
近くの私も危険かも。
うーん、分かんないから壊しちゃえ!
「てえええい!」
バキっと叩きつけると簡単に壊れて消えちゃったよ。
片腕も動くようになってサッと景色が戻っていくの。
猫ちゃん達も治ってふるふる体を振っているんだ。
これで準備は整ったね。
私はマーニャの方を向き、近くにあったキャットスレイヴの一部を触る。
その部分が剣となって何時も通りの握りの感覚が手の中に。
「錫杖がなくなったからといってどうだというのだあああ!」
手を広げて襲って来るけれど、もうそこは罠の中。
細い糸でガッチリと絡み取って動けなくしちゃうんだ。
「さあ皆、マーニャを治してあげて!」
皆がニャーと返事をすると輝く光がマーニャを包む。
「うおおおおおおおおお!? ああああああ!?」
バキバキと金の鎧が割れて怨霊のようなものが飛び出していく。
空一面が真っ黒になっちゃうぐらいの量だよ。
「我はマモン、欲望を……。ちがああああう! 余は、余はマーニャなのだ!」
全てが抜け出るとマーニャはフラフラの状態で立っていたんだ。
倒れそうになっちゃったからバッと支えると、
「余は簡単に負けたりせぬのだ……」
そう云ってガクッと気を失っちゃった。
「頑張ったね!」
私はマーニャを抱っこして御主人を迎えに行ったんだ。
残りは一人、ルシフェリアを見つけ出さなきゃね!
★
お城に戻った私達。
マーニャを預けてルシフェリアの部屋に向かったんだ。
だけど調べているベノムは帰って来てないし、途切れた臭いがあるだけだよ。
(どうしようか?)
「手掛かりがないもんね」
でも今までのことを考えると皆が行っていない方向が怪しいよね。
「このまま真っ直ぐ行ってみるよー!」
(うん、そうしよう!)
塔の窓から飛び出してお城の屋根を走りだすの。
障害物もポポンと飛び越え真っ直ぐ真っ直ぐ進むんだ。
そのまま町の中。
やっぱり手掛かりはなさそうだけど、もしかしたらシャーンみたいにこの辺りに居るのかもしれないもんね。
見逃さないように臭いを探してそのまま外へ。
草原に手掛かりはないしこのまま前に行くしかないよ。
湿地帯を走り抜け、辿り着いたのは薄く広い水たまり。
風もないから水面はピタッと止まって鏡面のように光を反射しているんだ。
恐る恐る入ってみると波紋が全体に行きわたるの。
ただ一点を除いてね。
そこには透明な何かがあるみたい。
ここからなら分かるよ。
あれはルシフェリアに違いないんだ。
「御主人、ちょっと待っていてね!」
(うん、負けないでね!)
「負けないよー!」
うんって頷くとキャットスレイヴを使って御主人をかなり遠くに移動させたんだ。
直ぐに水たまりに戻って準備完了したんだよ。
「ルシフェリア、みーつけた!」
私はルシフェリアをギュッと抱きしめるの。
瞬時にして輝く闇が膨れ上がる。
透明なルシフェリアはギュンと手の中から飛び出して空で変身していくよ。
背中にあるのは六枚の白と黒の翼。
右が白二枚、黒が一枚。
左が黒二枚、白が一枚。
天使様かと思うほど綺麗な大人の女性だよ。
ただしその目は冷酷で、何もかもを嘲笑うの。
手には分厚く大きな剣。
軽々と振り回しているよ。
「我はルシフェル。災いの権化。我は悪意。悪意とは我。眼前に立つ愚かしき者よ、眠れる死など与えはしない。無限なる絶望を与えよう。ただ永久に苦しむがいい」
光が降って来る。
あまりにも強い光が。
「あうぅ」
避けられないぐらいに速くって熱くて重いんだ。
耐えきれなくって地面に膝を突いちゃった。
そのまま腰が曲がるとね、両手がもう地面に落ちるの。
ベチャっと水たまりに顔をうずめちゃった。
鼻や口から水が入って来てすごく息苦しい。
だけど負けてはいられないよ。
キャットスレイヴを杖にしてググっと踏ん張り続けたんだ。
腕に力を込めたり場所を移動したりもしたんだけれど、光が追って来ちゃって立ち上がるのがかなり辛い。
「終わりなき苦痛を……」
いきなりピンチ。
すっごいピンチ。
「にゃああああ!?」
強烈な重量が背中に圧し掛かって来るの。
何とか逃げなきゃ大変だ。
足掻いて足掻いて足掻きまくるけど体力だけが削れちゃう。
「うぅぅ……」
痛くて重くて辛くてきつい。
「諦めんなあああああ!」
遠くからベノムの声が聞こえてくるよ。
気配が近づきルシフェリアとぶつかっちゃうの。
ふっと重さがなくなってようやく真面に立てたんだ。
これで何とかしたいよね!
「どんなモンスターだか知らねぇが、こいつでぶった切ってやらあああ!」
そしてベノムも続けて攻撃しようとしているよ。
狙うのは急所ばかりだけど、もしかして相手がルシフェリアだって気が付いていなかったり?
「ベノム、それルシフェリアだよー!」
「は? ……うおおおおおおおお!?」
いきなり静止しちゃうからぶん殴られて飛ばされたったよ。
大丈夫かな?
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン(元気少年)
王女ルシフェリア(元引きこもり)
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(妹弟ラブ)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
王女アンリマイン(泣き虫)
王女マーニャ(派遣王女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




