三人目
イブレーテを捜して川の中。
溺れているんじゃないかって思ったけれど、イブレーテはちゃんと生きていたよ。
それどころか変身しちゃって襲い掛かって来ちゃうんだ。
水を操って渦を飛ばして来るけれど、私は負けたりしないから!
躱して躱して躱してね、ちょっと傷つきながらも近づいたの。
声をかけると苦しみだしてその隙に猫ちゃん達に頑張ってもらったよ。
イブレーテの悪い物が全部落ちて元に戻ってくれたんだ。
町に戻るとね、ジャック・スローにシャーンが目を覚ましたって教えて貰ったの。
イブレーテのことはお任せして、お見舞いに行ったんだ。
居なくなった時のことを教えてもらったんだよ。
それじゃあ次は誰にしよう。
うーんって悩んでいると近くにメイドさんが通りかかったよ。
そういえばパーズが声をかけていたって云っていたよね?
私はその人を呼び止めて声をかけてみたんだ。
「パーズ様ですか、確かに声をかけられました。あれはお昼前のことだったでしょうか?」
行き成り大当たり?
「それで何処で消えちゃったの?」
「いえ、実は私が目撃したのではないのです。パーズ様はメイドを見かけたら必ず声をかけられるので最後に目撃したのは西棟掃除担当の子だったという噂みたいですよ?」
「そうなんだ? 西棟ってどっちかなー?」
「あちらにある塔ですよ」
「ありがとう、行ってみるねー!」
メイドさんに場所を教えてもらってその場所に。
何人か掃除をしているみたいだけれど、誰かに聞けばわかるよね?
一人に声をかけるとその子のことを教えてもらえたよ。
「あー、見つけたよルーカ! ちょっと聞きたいことがあるんだー!」
「あらモモじゃない。私に何かようかしら」
この子はルーカ。
お城で働いている元孤児で、シャーンと結婚したいって狙っていたんだよね。
最近会えなかったけれど、今は大人しく働いているのかな?
「私ね、パーズのことを教えてほしいんだ」
「まさか恋敵!? 私とパーズ様とを引き離そうと企んでいるの!?」
「えー、違うよー? 居なくなったって聞いたから捜していたんだよー」
「それならば問題ありませんわ。だってあの時、私はプロポーズを受け入れて結婚を誓い合ったのですから。プレゼントを持って来て下さるということですので今頃はこっそりとご用意してくださっているはずもの」
「うーん、違うと思うよー? 他の子達も居なくなっちゃったもん」
「え、そうなんですか!?」
「知らなかったのー?」
「あまりにも嬉しくって他のことは一切気にしていませんでしたので」
(色々聞かれたと思うんだけど?)
「居なくなったこととか聞かれたんじゃないのー?」
「もちろん聞かれました。私に愛を語らってくださったことやプレゼントをしてくれようとしたことまで全部隠さず伝えましたもの。近くに居た同僚の方も見ていたのでアリバイもありますから!」
ルーカはうんうん頷いているよ。
実は何にも知らないのかも。
仕方ないからパーズとどこで別れたのか聞いてね、そこから捜し始めたんだ。
二つ角を曲がった階段辺り。
確かに臭いを感じるね。
ここから向かったのはあっちかな?
お城の中を移動しようとしたけど途中で方向を変えて外に出て行っちゃったみたい。
途中で悪魔の呪いがかかったのも。
それじゃあ追跡開始だね。
町から外に出て行くのは何時もと同じ。
結構広い町なんだけど、子供の足なら普通なら一日ぐらいかかっちゃいそう。
だけど今まであんまり時間がかかっていないのはものすごく足が速くなっているから?
謎が謎をよんじゃうね。
それからシャーンやイブレーテとも違う方向へ向かい、長い草原を抜けてほぼ草木のない乾いた土地に。
何処かからグルグルと腹を空かせたモンスター達の声が聞こえる。
パーズがここに居たらちょっと危ないかも。
急いで臭いを辿ってね、大きな崖の上に出て来たの。
丁度崖の先端辺りにパーズの気配を感じるんだ。
「御主人はこの辺りで待っていてね。パーズがまた変身しちゃうかもしれないもん」
(うん、でももうちょっと離れておくよ。邪魔になっちゃうかもしれないからね)
「それじゃあ先に移動するね!」
御主人の準備をして私は崖の先端に。
「みーつけた!」
ギュッと抱きしめると人のぬくもりを感じちゃう。
そしたらゴゴっと大地が揺れ始めるの。
まるで磁石みたいな波動で私の腕は引きはがされちゃった。
パーズの体にも色が戻って来るよ。
大きく大人の姿になって岩のような鎧を着ているんだ。
武器は持っていないかな。
「我はパズズ。災徒なる悪意の大地。誰一人逃れられぬ王の力に恐怖せよ。潰れろ、命よ!」
パーズが宣言するとあまりにも重いものが体全体に圧し掛かってくるの。
形のないこれはもしかして重力ってやつ?
気を抜くと倒れちゃいそう。
ググっと足に力を込めてドスンと前に進むんだ。
相当動きが遅くなっている感じ。
だけどパーズはお構いなし。
影響も受けずに真っ直ぐ来るよ。
「直ぐに終わらせてやる」
二つの拳で連打されるけど、動きはそこまで速い訳ないね。
ヒョイっと避けようとしたら思った以上に動けなくて頬に拳が掠っちゃった。
「うにゃ!?」
ザックリ切れるとかそんな感じじゃないよ。
ほんのり触っただけなのに、強烈な重量で体が全部持って行かれそう。
ググっと片膝を突いちゃった。
やっぱりパーズは止まらない。
上から重すぎる拳を叩きつけてくるんだ。
一撃は防御するけどビシッと地面に沈みこむ。
もう二撃目は素手じゃ無理。
キャットスレイヴでズイット防御。
そのまま拘束を試みるよ。
五体を包み込もうとしたけれど、最初の時みたいに体からバチンと弾き飛ばされちゃう。
簡単に無力化はできそうにないね。
でもその隙に攻撃範囲から抜け出せたよ。
今の内ならいけるかも。
「猫猫召喚! 皆出て来てー! パーズを助けてあげてー!」
現れる猫ちゃん達。
重力をものともせず華麗に着地したんだ。
この子達は実体がないからね。
そのまま皆で合唱してね、パーズの悪意に攻撃するの。
光が体を包み込む。
ググっと追い出そうとするけれど、
「こんなものが効くものかあああ!」
パーズは力づくで弾き飛ばしちゃった。
だけどちょっとは効いている感じ。
息を切らして片手で頭を抱えているんだ。
重さも少し緩和された気がするよ。
だったら……!
「猫ちゃん達、続けてもう一回だよー!」
猫ちゃん達から合唱がもう一度響く。
「うおおおおおおお!?」
パーズが苦しがって叫び声を上げちゃった。
今なら戻ってこられるかも!
「パーズ、頑張って! 皆、帰って来るのを待っているよ! ルーカとか戻ってくるのを楽しみにしていたんだよー!」
「あああああ、そうだ! 僕はまだ女の子と楽しくすごしたいんだああああ!」
呼びかけてみたらパーズの体から砂粒のような黒い物がボトボトと落ちて行く。
それでもまだ元には戻らない。
意識とは逆に体は勝手に襲って来るの。
グンと重力に力が戻る。
体が重くなったって負けたりしないから!
相変わらずの強烈なパンチ。
は、ガッチリと両手で受け止めちゃうんだ。
「パーズ、頑張って! 絶対元に戻れるから!」
「ああああああああ!?」
二回目、三回目。
手の平が痛い。
背骨が軋みをあげちゃうよ。
大丈夫、大丈夫って我慢していると黒い砂が落ちる量が増えてだんだんパーズが小さくなっていく。
威力も弱まって行くんだ。
「僕、モモお姉のことが、とっても。モモお姉ちゃああああん!」
後もう少しってところで両手を広げて向かってくる姿になんとなく身の危険を感じちゃった。
「なんでえええええ!?」
ヒョイっと避けてポーンと地面に投げ飛ばすと気を失って元の体に戻ったよ。
「ふぃぃ、ちょっと疲れちゃった。早くここから離れないとね」
遠くに居る御主人をシュシュっと引っ張ると、
(わわわわ、モモ、助けてー!)
大量のモンスターも一緒について来ちゃった。
倒してもいいけれど、もうパーズは助けたんだもん。
わざわざ疲れる必要はないよね。
それじゃあ逃げちゃうねー!
御主人とパーズを抱っこして町まで走って帰ったんだ。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン(元気少年)
王女ルシフェリア(元引きこもり)
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(妹弟ラブ)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
王女アンリマイン(泣き虫)
王女マーニャ(派遣王女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




