川の中
変身したシャーンを何とかし私達はお城に戻って行ったよ。
後は他の人達にお任せしてルシフェリアを捜したの。
図書室から自室に戻ったみたいで私達も向かったけれど、ベランダから臭いが消えていてそれ以上は捜せなかったよ。
飛んでいるみたいだからベノムが何とかしてくれるんだって。
今度はイブレーテを捜しに向かったの。
訓練場から外に出て町を越えて外。
大きな川の中に臭いが消えちゃったんだ。
向う岸に臭いが無いみたいだから川の中なんじゃないかって調べ始めたの。
うーん、水の中じゃ臭いも分からないし、イブレーテが透明になっていたら全然分からないよ。
もしかして流されちゃった?
ちょっと困っちゃう。
だけど諦めたりはしないからね。
皆でまた遊ぶんだから!
しっかりと目を開いて川の中を探索するよ。
岩の隙間も小さな穴も見逃したりはしないんだ。
一回息継ぎもう一回。
何度も続けているとちょっとだけ違和感を見つけちゃった。
何だかお魚さんがその部分だけを避けて通って行くんだもん。
もしかしてそこに居るの?
私は手を広げてねギュッとその場所を抱きしめたんだ。
ふんわり人の暖かさを感じちゃう。
ヒョイっと持ち上げようとしたら、川の水がうねり始めたんだ。
渦がグルグル出てきちゃってちょっと耐えきれない感じ。
下流に行っちゃう前にピョンと川から飛び出すよ。
水上にはいくつもの水の竜巻が踊り狂い、中心の何も無いところからイブレーテの姿が現れたよ。
「我はイブリース。災禍をもたらす悪意の深淵。全てを呑み込む王の力を刻み付けよ。罪人よ死ぬがいい!」
胸は大きく、全身に鱗のような鎧を纏い、手には大きなトライデント。
髪も随分長くなり、背もかなり大きくなっているよ。
躊躇いもなく放ってくるのはゴウゴウと音を立てる渦巻く水流。
ズバンズバンと地面を削り巨大な岩でさえ打ち壊しちゃう。
しかも飛び跳ねた水滴さえジュウジュウと皮膚に痛みを与えて来るんだ。
まともに触れたらちょっと危険そう。
だったら全部避けちゃうよ!
ヒョヒョイっと移動し右左。
ドンドン近寄って行っちゃうよ。
足場のぬかるみも大丈夫!
キャットスレイヴの上を移動しイブレーテの目の前に。
「イブ、そろそろ戻ろうよ。皆心配しているよ?」
「下賤の者が馴れ馴れしいぞ。語り合いたいのであれば死骸となれ!」
「それじゃあ話せないもーん!」
イブレーテはグンと後に。
代わりは四方からの水の渦。
ちゃんと避けていたらまた接近が大変そう。
だったら私は前に進むよ。
「待っていてね!」
近づくにつれて攻撃が激しくなる。
渦の数が六本、そして八本に。
飛び散る水が皮膚を焼く。
頬が、首が、手が、足が、胸元だってとても痛い。
だけどそのぐらい我慢するよ。
イブレーテを助けたいんだもん!
「愚かしい者よ。溶かしつくしてくれようぞ」
正面から来る大きな渦巻。
周りに逃げ場はないみたい。
シチューにカツで開いている真ん中に。
飛び散るしぶきは想像以上。
小石の弾丸も飛んで来る。
道も真っ直ぐにはなっていないの。
突然現れる断崖絶壁。
右も左も折れ曲がり、骨さえ融かすつもりだよ。
一回でもぶつかったら終わりかも。
タイミングよくキャットスレイヴを操作するんだ。
一分二分三分四分、もう全身に痛みが奔る。
「そろそろ死んだか?」
我慢比べは私の勝ちだね。
イブレーテは確かめるように水の渦を解除したの。
「死んでないよーだ!」
「まさか。王の力が効かぬだと!?」
「違うよ。それはイブレーテの力じゃないもん。イブレーテは剣術が得意だったでしょ。そんな力じゃ絶対私に敵わないんだからね!」
「う……ぐ……剣術。そうだ、我は。私は剣に生きると誓ったはず。こんなのは私、我の違う違う違う違う。あああああああああああ!?」
「大丈夫、ゆっくり思い出せばいいよ。ね、イブ! 私が手伝ってあげる!」
シャーンの時を思い出して。
想いの輝きを力に変えるよ。
「猫猫召喚! 皆出て来てー! イブレーテを癒してあげてー!」
呼びかけに応じて今まで呼び出した猫ちゃん達が空中から飛び出して来る。
ニャーと鳴くと邪悪なものをしちゃうんだ。
「ギャアアアアアアアアア!」
イブレーテの体からドロッと黒い物が水の中に垂れ落ちて行く。
体がちょっとずつ元の大きさに戻り、前と同じように気を失っちゃったんだ。
でも私もフラフラしちゃう。
傷を治して御主人を迎えに行かないと……。
★
(モモ、起きてモモ。もう治してもらえたよ!)
御主人の声が聞こえる。
目を開けると私とイブレーテは川の近くで倒れていたよ。
傷を治して気を失っちゃったのかも。
「御主人はどうやって出て来たのー?」
襲われないように檻の中に入れといたのにね。
(うん、何とか念じてね、ちょっとだけキャットスレイヴがいうことを聞いてくれたんだよ。早く帰ろうよ。流石に僕一人だと大きなモンスターには敵わないからね)
「うん、帰ろー!」
御主人とイブレーテを抱えてね、お城の医務室まで走って行ったよ。
到着する前に城門でジャック・スローとバッタリ出会っちゃった。
「おおモモ様、イブレーテ様を見つけてくださったのですね。このジャック・スロー感謝してもしきれません。して、何処に居らっしゃったのでしょうか」
「うん、川の中に居たんだよ。触ってみたら大人の姿になって襲って来たの。でももう大丈夫だよ! 悪い物は落としちゃったもん!」
「それは何よりです。しかし川の中ですか。人は水の中では数分も息がもたぬものです。それでも死ななかったというのであれば余程強力な呪いがかけられていたのでしょうな」
「して、どのように見つけられたのでしょう?」
「イブレーテの臭いを追って行ったんだよ。ジャック・
スローなら出来るんじゃないのー?」
(だよね、猫より犬の方が臭いに敏感だしね)
「確かにハウリングウルフ族は鼻に自信をもっておりますが、残念ながら私は人とのハーフなのでそこまで強いものは感じられぬのですよ」
「そうなんだー?」
「しかし充分な手掛かりにはなり得るでしょう。さあ、イブレーテ様をこちらに。後は私が」
「うん、お願いね!」
私はイブレーテをジャック・スローに預けたよ。
「ああ、それとシャーン様が先ほど目を覚まされたようです。今は事情を聞かれているはず。手掛かりを得る為にも一度行ってみられてはどうでしょうか」
「うん、行ってみるよー! お見舞いにも行きたいもん!」
(そうだね。何か覚えていることがあるかもしれないもんね)
「じゃあ行ってくるー!」
それで私はシャーンの気配を辿ってね、訪ねてみることにしたんだよ。
今は自室に居る感じかな。
だけど弱っているのにあんまりビックリさせたらダメだよね。
コンコンってゆっくり扉を叩いたよ。
「シャーン、開けてもいいかなー?」
「モモお姉ちゃん? 大丈夫だよ」
「それじゃあ入るねー」
入ってみるとシャーンは大きなベッドで寝かされていたの。
周りにはお医者さんとメモを取っている人が三人居るね。
事情聴取をされていたのかな。
じゃあ私も聞いてみよー。
「ねぇねぇ、覚えていることはあるかなー?」
「えっとね、全部ハッキリ覚えているよ。馬車に乗っていた時に笛の音が聞こえて来たんだ。何だか周りが見えなくなっちゃってそっちの方向に行かなくちゃって思って。それでずっとあの場所で待っていたんだ」
「笛? グリフからはそんな話は聞かなかったんだけどなぁ」
(そうだよね。誰かが吹いていたのかな?)
やっぱり悪魔の呪いに関係あるのかも?
「もしかしたら僕にしか聞こえていなかったのかもしれないね。それでね、モモお姉ちゃんがやって来て何かが僕の中に入って来たんだ。このままじゃダメだって頑張っていたら頭が痛くなっちゃって、気が付いたらこうなっちゃってたんだ。参考になったかな?」
「参考になったよ! 私、他の皆を助けて来るからシャーンはゆっくり休んでいてね!」
「うん、皆を助けてあげて。きっとモモお姉ちゃんが来るのを待っているはずだから」
「分かった! じゃあ行ってくるねー!」
「いってらっしゃい。僕応援しているね」
「行ってきまーす!」
(まーす!)
私と御主人はシャーンに手を振って部屋を出て行ったんだ。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン(元気少年)
王女ルシフェリア(元引きこもり)
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(妹弟ラブ)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
王女アンリマイン(泣き虫)
王女マーニャ(派遣王女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




