貴族の屋敷
死を望むガイサルはこれからもずっと酷い目に遭わされるらしい。
そっちは問題ないけれど、お城が壊れちゃって色々大変なの。
備蓄してある食料を救いに行かなくちゃ。
壊れた内部を探索し食堂の奥の通路から場所を見つけ出したんだ。
道具とかも確保してバーって脱出しちゃったよ。
運び出しが終わったら今度は転移場の修復だね。
瓦礫を除けて道を作ったら全然無事な状態だった。
それで住むところをどうにかしなきゃってことで近くの屋敷に行くことに。
「陛下、ようこそお出で下さいました。ご宿泊にわたくしの屋敷を選んでいただき感謝します。どうぞごゆるりとお寛ぎくださいませ」
私達がお邪魔するのは、エリス・ビ・ウォールスという人の屋敷。
エリス夫人は歓迎してくれるみたいで、スカートの裾を上げて挨拶してくるの。
優しい笑顔で暖かく迎え入れてくれたんだ。
「ブルーツ、支度は出来ていますわね?」
隣に立っているのはその使用人かな。
「もちろんです奥様。持て成しの準備は整っております」
結構若い少年だよ。
きちんとした格好で仕草も様になっているけど、笑顔がちょっとだけぎこちないね。
「では皆様をご案内して差し上げて」
「承りました。皆様、どうぞこちらに」
案内されたお屋敷の中。
さっき大きな地震があったのに頑張って整理したのかな?
物が落ちたり何かが壊れたりしている形跡はなさそうだよ。
お城は簡単に壊れちゃったけれど、この屋敷は造りが違うのかな?
まあそんなのどうでもいっか。
「こちらが食堂です。中に晩餐の準備が整っております」
ご飯はさっき食べたんだけど、せっかく用意してくれたんだから食べないのは失礼だよね!
「わーい、ご飯だー!」
私は喜んで部屋に飛び込んだよ。
少量のパン、少しのスープ、二口サイズのお肉。
お庭で栽培されていた野菜のサラダ。
貴族にしては質素だけれど、この状況じゃ仕方ないよね。
「どうぞお召し上がりください」
「はーい、いただきまーす!」
(いただきます!)
もちろん御主人のお肉もちゃんとあるよ。
お食事が終わって他愛無い話し合い。
色々決められたりして進んで行くんだ。
私のお部屋は個室みたい。
「それではこちらに」
食べ終わると早速ブルーツに案内されて綺麗なお部屋に到着したよ。
花とかも飾られていて見るからに豪華な感じ。
絨毯もフカフカで飾りも多くって大きな絵画だってあるんだよ。
でも私はそれよりお布団にひかれちゃう。
ポフンとダイブしちゃったら、お日様の匂いを堪能できるんだ。
「モモ陛下、私とダイダロスはこの部屋の両隣に宿泊します。不審者が入り込まないように庭に見張を立てておきましょう。ですので安心してお眠りください。もし何かあれば何時でも気軽に声をかけてくださいませ」
「うん、分かったー!」
シロツキとダイダロスも居なくなって私はそのまま眠りについたの。
グースカ眠ってその深夜。
私はキュピンと目を覚ます。
ちょっとおトイレにいきたくなっちゃったから。
御主人を起こさないようにお布団から抜け出そうとした時、廊下を歩く気配を感じちゃった。
これって確かブルーツって執事のものだね。
何かこの部屋の前で立ち止まっているよ。
用事でもあるのかな?
ちょっともじもじしちゃうけど。
「入っていいよー!」
私は扉の外に居るブルーツに呼びかけたんだ。
待たせておくのも可哀想だもんね。
「……起きていらっしゃったのですね。それでは失礼いたします」
ブルーツは扉を開けて入って来てその場で御辞儀をしちゃったの。
「何か用かな?」
「主から陛下を愉しませよとの御命令。今宵はどのようなことでも致しましょう……」
そういいながら何故か服を脱ぎ出しちゃうんだ。
もしかして裸になるのが好きな人?
踊りでも見せてくれるかもしれないけれど、私トイレにいきたいの!
「ごめんなさい、私そういうの要らないから!」
「そうなのですか。貴女には国を救っていただいた御恩もありますので、せめて愉しませてからと思っていましたが……」
断わったら背後に隠された剣を抜いたんだ。
何だか殺気を感じちゃう。
音もなく踏み込まれてシュピンと剣が振られちゃった。
結構鋭い一撃だね。
私はヒョイっと躱してね、鍔元をグッと押さえこんじゃうよ。
「私、何かした?」
「貴女の所為ではありません。全ては戦争を起こしたこの国の王が招いたこと。しかしながらそれでも姉を殺した国の人種を許してはおけないのですよ!」
それでも諦めてはくれないみたい。
剣を投げ捨てて二本目の短剣を抜いちゃった。
私、戦争の時はこの世界に居なかったんだけどなぁ。
(もう、何、うるさいなぁ。え、えええ!? 何この状況!? えええええ!?)
それに御主人も起きちゃったし、そろそろ大人しくしてもらわないとね。
「私ちょっと用事があるの!」
結構本気でバチっと叩くとカハッと倒れて動かなくなっちゃった。
(え、用事って?)
「おトイレ行ってくるー!」
私は一生懸命走ってね、おトイレに向かったの。
結構ギリギリだったけれど何とか間に合ったんだ。
「たっだいまー!」
(お帰り。それでこの人どうするの?)
結構強くやったからブルーツはまだ倒れたまんまだよ。
「うーん、出来れば穏便に済ませてあげたいけれど……」
ちらりと横を向くとそこにはシロツキとダイダロスが立っているの。
結構声を上げてたから気がついちゃったみたいだね。
「モモ陛下、それは無理な相談ですよ。ガイサルとは規模が違いますが、あろうことか王に牙を向けたのですからね」
「然り。例えこの場で許したとてまた同じことをするかもしれません。実力では叶わないと知り、次は毒物を混入させるやも。陛下がご無事でも、マーニャ様に何かあればウィーディアとの関係にもヒビが入れば今までの支援が打ち切られてしまいます。そうしたら我々には生きる術がないのですよ」
「しかし、このような深夜に夫人を叩き起こす訳にはいきませんね。我々に住処を提供してくださっているのですから。せめて朝までは安らかな気持ちでいさせてあげましょう。ではこの者は我々の部屋に運び入れると致します。このまま置いておく訳にはまいりませんので」
(二人の言い分はもっともだよ。これはもう諦めよう)
「うーん、可哀想なんだけどなぁ」
襲われたのは残念だけど、お姉さんの仇を討ちたかったんだもんね。
「今回の件だけではありません。このような状況は何時起こってもおかしくないのです。モモ陛下が例えどのような功績を収めたとしても、止められぬ感情というものはあるのですよ。これから起こる悲劇を抑止する為にも厳しい裁きをお願いしたくあります」
シロツキとダイダロスはスッと膝を突く。
王様としての声を待っている感じ。
これは私が決めなくちゃダメなんだね。
被害は私だけなんだもん。
次に起こらないようにしてこの人も出来る限り護ってあげたいよ。
「それじゃあ――」
私はシロツキに彼の処罰を伝えたよ。
「陛下の御心のままに。直ぐに手配いたします。今日の朝には準備が整うかと」
「うん、お願いね」
「朝までにはまだまだ時間がございます。モモ陛下はご就寝なされませ。それでは失礼を」
それでシロツキとダイダロスがブルーツを連れて部屋から出て行っちゃった。
(モモ、明日に備えて寝ておこう。寝てないと疲れちゃうよ?)
「そうだね。御主人、おやすみ」
(おやすみ)
意識が無くなる前に色々考えちゃったけれど、たぶんこれで良かったと思うよ。
そして朝。
あんなことがあったからあんまり眠った気がしないよね。
もう太陽が昇って青い空になっちゃった。
私はゆっくり布団をめくりって起きていた御主人に挨拶したよ。
それでね、直ぐにシロツキの部屋を訪ねたんだ。
「おはようございますモモ陛下。夫人にはこちらから伝えておきました。大変悲しまれていたようですが、きちんとお別れも済まされました。後は陛下が出向けば国外への追放処分が行われるでしょう」
(お見送りしてあげなきゃね)
「うん、直ぐに行こうね」
玄関に向かうと拘束されたブルーツが馬車に乗りこまされている所だったの。
「死ね、全員死ねえええ! 姉さんが居ない国なんて滅んでしまえええええ! うおおおおお!」
罵詈雑言を吐きながらブルーツはこの屋敷を去って行く。
私達は馬車が見えなくなるまで無言で見送ったよ。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン(元気少年)
王女ルシフェリア(元引きこもり)
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(妹弟ラブ)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
王女アンリマイン(泣き虫)
王女マーニャ(派遣王女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




