キャットタワー、お魚の美味しい町
洞窟の中でミノタウロスVAと対峙した私。
道具の積み上がった部屋から離れて撃破するものの、やりすぎて天井が崩落してしまう。
道に迷った私は誘拐犯三人の位置を頼りに進むけれど、複雑に入り組んだ道に困惑する。
そんな時、フェンリルから託されたアウロがアンと鳴いてやる気を出した。
あの三人の臭いを頼りに進み、私達は洞窟の外へ。
三人には逃げられてしまったものの、無事に仲間達と合流し、フェンリル達の事を受け入れて貰ったのだった。
ガタゴトと馬車の車輪が回る。
私と御主人は柔らかい座席の上で気持ちよく目を閉じた。
意識はあるものの、まぶたが上がる気がしない。
このまま長い旅がまだまだ続くみたい。
先日から隊列に参加したフェンリルは、先行して敵の発見や殲滅をしている。
そのためにほぼ平穏な道中だ。
子供達も自分達が出来ることを見つけて色々しているみたい。
男の子であるリキは力仕事を、女の子のシアとソキシは洗濯物を手伝ったりお料理に挑戦したりしている。
三人とも隊の皆からも可愛がられているし、すごく楽しそうな感じだ。
それと子犬のアウロは私の乗った馬車の屋根に悠然と立って周りを見回したりしている。
この子もマスコット的な感じで愛されている。
こっそりと餌を与える人もいるみたい。
出来れば私にも持って来てほしい。
そんな感じで移動が続き、私達は王国の国境を越えた。
もう旅を始めて一週間は経つ。
そろそろ半分を超えたぐらい?
ここからはキャットパラダイスの寮内だ。
風も緑も変わりはないけれど、人よりも獣人さんが多く暮らしているという。
ほら、そこの草むらにもトカゲの姿をしたリザードマンがのんびりお昼寝をしている。
この国はすごく平和な国なのかも。
その国で最初の町はストレイキャットが多く暮らすキャットタワー。
私としてもすっごく登りたい感じの高い矢倉が沢山ある町だ。
もう報せを受けているみたいで、町の人達が大勢見学にきてくれて、すっごい歓迎されたんだよ。
「いらっしゃいませ勇者様ニャフ、歓迎しますニャフ! ニャーはコテツですニャフ。よろしくですニャフ」
一番前に立っているのがこの町の偉い人かな。
白髪で目が隠れているストレイキャットの長老さんだ。
「明日には出立します故に今日はよろしく頼みますぞ」
「はいニャフ、皆勇者様を待ち焦がれていたニャフよ。手を振って応えてあげてくださいニャフ」
「はーい!」
私は見に来てくれた人達に手を振った。
歓迎の声が沸き起こり、すごく嬉しい。
皆に見送られながら案内されたのは、大きな会場の中に用意された歓迎の場だ。
花飾りやデッカイ看板で色々言葉が書かれている。
最初に到着した村の時よりも大きく盛大な感じ。
「さあ料理を運ぶニャフ!」
コテツの合図で出てくるのは、とても大きなお魚の料理だ。
前の家にあった、ふすまという扉よりもうちょっと大きいぐらい。
私一人では絶対に食べきれない量がある。
香ばしく焼けて、お魚独特の匂いがたまらない。
ちょっとよだれが出てきそう。
(モモ、よだれよだれ。皆見てるんだから拭いときなよ)
あ、本当に出てたみたい。
「御主人、皆も流れてるよー?」
私以外のストレイキャットも、お魚さんの匂いにやられている。
猫はこれに抗うことはできないのだ。
更に他にも鰹節の匂いとか、マタタビの匂いとか結構いっぱいあったりする。
絶対欲しいと手を伸ばしてしまうのだ。
(でも勇者様って呼ばれてるんだから、ちゃんとしておいた方が良いんじゃない?)
「うん、わかったよー! お魚食べたらちゃんとするよー! それでもう食べていいのー?」
村長のコテツに尋ねると、
「食べて良いですニャフ。勇者様からどうぞニャフ」
許可を得た私は、固い決意をもってお魚と向き合った。
まだ切り分けられていないけれど、それは全然大丈夫!
キャットスレイヴを変化させ、ナイフのようにして切り分けた。
空のお皿の上にパスっと乗るお魚さんの切り身。
程よく焼けてじわっと油が染み出している。
その行動にドッと盛大な拍手が起こった。
そしてナイフにしたキャットスレイヴを切り身に突きさし、パクッと一口。
「美味しー!」
それを切っ掛けに、この会場に集ったストレイキャット全員が動き出した。
我先にと切り身を求めて手を伸ばしている。
でも私と御主人の取り分は充分なのでもう大丈夫だ。
美味しく頂いていると、
「ふぅ、取りそこなったわ」
「まさかあんなに群がってくるとは思いませんでした」
リーズとカリンは取り逃したみたい。
「私のを分けてあげるよー」
「それは大丈夫よ。モモが好きなやつなんでしょ。私達は別の物を食べておくわ。幸い他にも食べ物はあるしね」
「ええ、あちらのパスタも美味しそうですしね」
「そっかー、じゃあこれは私が食べる―」
「ええ、そうしときなさい。それと、今回は変なことに巻き込まれないように気を付けるのよ。毎回何かあったら困るんだからね」
「そうですね、モモさんは巻き込まれ体質ですから。何かトラブルが寄って来そうな雰囲気です」
「えー、そんなことないよー」
私が笑いながら否定していると、
「おお、勇者様、ここにいらっしゃいましたかニャフ。ちょっと人が群がり過ぎて捜すのに手間取ったニャフ。実は勇者様に頼み事があるのニャフ。聞いて貰えないでニャフ?」
この町の町長コテツが私に頼み事があるとやってきた。
「ほらやっぱり」
「こうなってしまうんですね」
(モモ、これはどうにもならないよ、諦めよう)
「えー!」
「ダメニャフ?」
もう御馳走されちゃったからダメとは言えない。
お魚さんがすっごく美味しかったし!
「うん、いいよー!」
私は元気に返事をした。
「じゃあニャーと結婚してほしいニャフ! 勇者様と結婚できたらこの町はもっと発展するニャフよ! どうニャフ?」
でも予想外の頼み事にちょっと困惑。
もういいって言っちゃったし、私は結婚しなきゃダメなのだろうか?
それはちょっと嫌だなぁ。
「はぁ!? そんなの聞く訳ないでしょ!」
「当たり前にダメですね。モモさん、向うに行きましょう」
(可愛いモモをそんな政治の道具みたいにする訳がないでしょ! モモ、断ろう!)
私が返事をする前に、リーズとカリンに背中を押された。
御主人も反対してくれているし、断ってもいいみたい。
「結婚しないでーす!」
ちゃんと返事をして去ろうとしたけど、
「いや今のは冗談ニャフ! ちょーっとだけ本気だったけど冗談ニャフ! 頼みたいことは他にあるのでそっちを聞いてほしいニャフ!」
コテツは慌てて別の頼み事をしようとしている。
「モモは国の重要人物なんだからね。下手なことを言わないようにしなさいよ」
「ええ、その時はお仕置きです!」
「わ、わかってるニャフ。次は真面目な話をするニャフ。実は最近ダンディスの河でお魚が獲れ辛くなってるニャフ。原因はデビルサーペントが手あたり次第に食べまくっているからニャフ。どうにか退治してほしいニャフ」
お魚が獲れない。
それはすごく大変だ。
「リーズ、カリン、デビルサーペントって、なに?」
「えっと、水に住み着くとても大きな蛇みたいなモンスターね」
「体の表面がぬるぬるしていると聞いたことがあります。実のところ蛇ではないのかもといわれています。大きさによりますけどかなりの大食漢で、日に何十匹も魚を食べるそうですよ。池の魚がいなくなってしまったこともあるそうです」
お魚が獲れなくなったら食べられなくなっちゃうよー。
「私がんばるよー!」
「モモはやる気みたいだけど、一応グリフさんに相談したほうがいいんじゃない?」
「そうですね、移動の予定も詰まっていますし」
(まあ時間がかかるなら考えないとね)
「えー、お魚は大事だよー」
(とにかくグリフさんを……って丁度来たみたい)
グリフはお皿にデザートを積み上げて満足そうな表情だ。
「おお、モモ殿、食事は楽しんでおりますかな。あちらにあったデザートは絶品で――」
「デザート!」
それはまだ食べていないし、早く行かないとなくなるかもしれない。
どこにあるのか探していると、
(モモ、話すことがあるんじゃなかったの?)
御主人に引き止められた。
「あ、そうだった。私ね――」
やることを思い出した私は、グリフに事情を伝えた。
「ふむ、デビルサーペントの討伐ですか。まあフェンリル殿のおかげで旅も順調ですし、キャットパラダイスに恩を売っておくのも悪くないですからな。やってみても宜しいのでは?」
旅の方も問題はないみたい。
「ま、グリフさんが良いというなら良いんじゃない」
「そうですね。ではこれからデビルサーペントを討伐しましょう。モモさん、頑張りましょう!」
「うん!」
私達は新たな依頼を引き受け、一日休憩すると遠征隊全員でダンディスの河に向かうことに。
町から数キロ先にあったその河はすっごく大きくて、向う岸まで十キロmぐらいはありそうな感じ。
流れも激しくて底が見えないぐらい深い。
ここにデビルサーペントが潜んでいるのかな。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




