一人の末路
私やってきたアンギラスの体を調べたよ。
武器とかもなくて変な物を持っていなさそうだったからガルダはこれでお終いって声をかけた。
疑いが晴れたからホッとしているみたいで、疲れたから今日は帰るんだって。
だけどね、ガルダはまだ疑っているみたい。
私に追い駆けてって頼んできたよ。
だからコッソリ追跡してね、何かボロを出さないかって見張ったの。
そしたらこの機に乗じてガルダの暗殺を計画しちゃったんだ。
これはもうダメってことで、集まった悪者達を退治してアンギラスを連れ戻したの。
結局怒られて牢やに入れられちゃったんだ。
一人の潔白が証明されて残りは二人。
ユイエストとペンネが調べを進めているけど、まだどちらが暗殺者なのか分かんないの。
「ねぇねぇ、二人からの連絡はないのー?」
(うん、そっちも気になるよね)
ちょっとガルダに質問してみたんだ。
「ええ、まだ始まったばかりですからな。そもそも黒幕が死亡しているのですから行動を起こさぬやもしれません。そうなった場合はこちらが諦めざるを得ない時間かかるでしょう」
「ま、俺達が諦めるにしろ、それまでは調べるしかねぇんだがな」
「はい、モモさんには頑張ってもらいたいですね」
「うん、頑張るよー!」
(でもどっちに行けばいいんだろうね?)
「そうだねー?」
あと二人って誰だっけ?
分かんないから聞いてみようって口を開こうとしたらね、誰かが走ってここに向かって来るんだ。
やっぱりこの部屋の前で止まって、慌てた感じで扉が叩かれたの。
「陛下、至急お知らせしたいことがあり参上いたしました! お時間を取らせていただけないでしょうか!?」
「何だ、申してみよ」
「ハッ! 護送中のアンギラス卿がお亡くなりになりました!」
「何ぃ!? 何があったのだ、詳しく説明せよ!」
「ハッ! 牢に向かっている最中、突如苦しみだしてあり得ないほどの水を吐き出してそのまま意識を失われました!」
「現場に怪しい人物は見かけなかったのか?」
「いえ、周りに近づいて来る人物は居らず、護衛は全員顔見知りでした。遠くに使用人などを見かけましたが、怪しい行動はしておらず何かしてきたようには見えませんでした! もちろん素性の確認もしてあります!」
「とにかく原因を徹底的に調べるのだ。何かあったらまた連絡をせよ!」
「ハッ!」
それでまた何処かに行っちゃったよ。
きっと調べに行ったんだね。
うーん、私も水を吐いたってのがちょっと気になっちゃった。
ちょっと前に倒したライドラクスが水みたいになって消えちゃったんだもん。
何か関係あるんだったり?
ちょっと見に行きたい気持ちはあるけど、ここを離れるのも怖いよね。
三人が襲われたら嫌だもん。
「どうしたらいいのかなー?」
(そうだね、どうしよう?)
「むやみやたらと動かず、先ずは状況を見極めてから判断したいところですな。しかしこうなってしまえば他の二人の様子も確かめたいところ。モモ様、行って来てはもらえませんか?」
「いいけど、ここは大丈夫なのー?」
「ええ、魔導に秀でる息子の手により結界を作っているのです。強行突破などしようものなら途轍もない罠が発動するのですよ。他にも色々と仕掛けがありましてな、簡単にはいかぬということです」
レヴィアンの方を見てみると、なんだか得意げな雰囲気を感じるよ。
「ま、そういうことだ。こっちのことは気にすんな。お前は何時も通り暴れてこいよ」
「そっかー、じゃあ大丈夫だねー! それで二人は何処に居るのかなー?」
「ペンネ殿は宮の茶室にてオリヴィエ・ハイロ・コーディネラル卿と話をしている様です。ユイエストは町に出ているようなのでペンネ殿と合流してみては如何でしょうか? 場所は――」
「大丈夫、食べたり飲んだりするところは覚えているよー! じゃあ行ってくるねー!」
それで私は御主人を連れて茶室に行ってみたんだ。
天井がガラス張りになっているお部屋。
日差しが入り込んでとっても明るくて、おっきな観葉植物なんかが沢山あるところ。
真ん中にあるテーブル席にペンネ画座ってお茶とお菓子を嗜んでいるよ。
向かい側のブワッとしたドレスを着ているのがたぶんオリヴィエって人だよね?
当たり前だけど仲が良さそうじゃないよ。
今はだんまりの時間が続いてあそこだけちょっと不穏な空気感。
だけど私は気にしない。
「こんにちはー!」
(こんにちは!)
大きな声で挨拶してね、勝手に席に座っちゃった。
「この猫は……。ああ、噂に聞く英雄殿か。何故か猫になられたと聞いたが楽しそうで何よりじゃ」
オリヴィエは面白い物でも見ているようだよ。
ちょっとした悪意を感じちゃう。
「モモさんに失礼な態度はとらぬ方がよろしいですよ。実力のほどは変わっていませんから」
「それは怖いことでございますじゃ。その英雄殿が何故この場所に? 茶を嗜みに来たようには見えませぬが」
「えー、お菓子とか食べるよー? 食べられる物ならねー!」
「そうなのか? それではチョコレートでも用意させるのじゃ。残さず食うのだぞ」
「チョコレートは食べられないよー!」
「それではナッツでも食べるかえ? ボリボリ食って腹を満たすとよいのじゃ」
分かって云っているのかな?
チョコレートもナッツも猫には毒なんだよ。
「それも無理だもーん! 意地悪ばっかり言っていると怒っちゃうからねー!」
私はプーって頬を膨らませちゃうんだ。
「いやいや、知識不足というやつなのじゃよ。笑って許せ、ほほほほほ」
それでも悪びれる様子もないね。
「むー!」
(ちょっと意地悪な人みたいだね。気を付けなくっちゃ危ないよ)
「うん、気を付けるね」
中々本心を見せてはくれない感じ。
ダメな物とか押し付けて来たり、私としては怪しいと思っちゃうな。
「それで結局なんなのじゃ。のらりくらりと話を続けて英雄殿まで呼び寄せて、そろそろ本題を話したらどうなのじゃ。妾の時間も悠久ではないのじゃぞ。何も無いのであれば帰らせていただくぞ」
オリヴィエは席から立ちあがっちゃった。
このままじゃ本当に帰っちゃいそうだね。
「……すみませんオリヴィエ様、あなたが王妃の座を狙っているという噂がありましたので、こうして事情を聞こうと思っていたのです。あまりあからさまな真似はせぬ方が良いかと」
ペンネは観念してある程度の事情を伝えたんだよ。
「それの何が悪いのじゃ。現状、王のお世継ぎはたった一人。もし事故にでも遭われた場合血縁が簡単に途切れてしまうではないか。それはもう国の一大事なのじゃぞ?」
「それは……。そうかもしれませんけれど」
「それともまさか、貴様もガルダ様に心を奪われているとでも云うのではないのじゃよな?」
「尊敬はしていますが、それは有り得ません! 間違ってもないですとも!」
ペンネはキッパリはっきりだよ。
「だったら黙っておるのじゃ! これは妾の恋路なのじゃぞ!」
「それは本当に恋愛と呼べるのですか!? ただ権力の座に就きたいだけなのではないですか!?」
何だか空中で火花が散っている感じ。
(うあ~、何だか近づきたく無い雰囲気だよ)
「御主人、私もそう思うよー」
諦めるつもりはなさそうだから本当に暗殺者だったら不味いよね。
本当か嘘かどうやって確かめればいいんだろう?
私には分からないからこのままペンネにお任せしとこうかな。
のんびり御主人の隣で香箱座り。
たまに御主人を毛づくろいしたりね、ボロを出すのを待っていたの。
でもね……。
「ふん、もう菓子も茶もなくなった。妾は何時までもこんなところに居られないのじゃ。そろそろ失礼させていただく」
オリヴィエは何処かに行っちゃいそう。
調べる為には止めなきゃかな?
「お、お待ちください!」
ペンネも止めているけれど、
「くどいのじゃ」
全然止まる気がなさそうだよ。
無理やりしなきゃいけない感じ?
キャットスレイヴをシュるっと取り出して、てええいって投げつけようとしたんだけれど、遠くから誰かが走って来るよ。
見えたのはガルダに報告しに来た人だね。
「モモ様、ペンネ様、大変です! ユイエスト様が同行していたハイデル卿が大量の水を吐いて無くなられました!」
「えー!?」
それじゃあオリヴィエが犯人ってこと?
ずっとここに居たみたいだから違うと思うんだけれど?
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
カミル・ストラデジィ(学校のお友達)
プラナ・イスリード(学校の先生)
レヴィアン・イング(真炎ハイグスト国、軍師ガルダの息子)
アギ(レヴィアンの付き人)
ヤー(レヴィアンの付き人)
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




