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出口はどこ? 洞窟からの脱出

 アリアを誘拐した犯人三人の潜む洞窟。

 私はお芋さんを御馳走してもらった。

 しかし熱々で食べられなかったからその間に取られた道具を取り返そうとしたけれど、三人は洞窟の奥へ逃げて行く。

 丁度いいので案内してもらおうとついて行き、複雑な内部を通り抜けてその場所に辿り着いた。

 何かする前に取り押さえようと思ったけれど、二人に邪魔をされて棒みたいなものを使われてしまう。

 その中から現れたミノタウロスバリアントが。

 私は三人を逃がしてそいつと対決することに。

「そろそろいいかなー?」


 あのお部屋からちょっと離れ、私はミノタウロスVA(バリアント)と対峙した。

 大きな赤い斧がギラりと輝いて中々恐ろしい感じ。

 でもここは少し広くて戦いやすそう。

 こいつがどれだけ強力なモンスターで、どれ程の回復能力を持っていようと、


「じゃあやっちゃうよー!」


 キャットスレイヴがあればどうとでもなる。

 剣を細く長く分岐させて、壁や天井ごとスッパリと微塵に切り裂いた。

 落ちた肉片を確認しても、もう元には戻らないみたい。

 これで私の勝ちだ。


 ……でもなんだろうこの感覚は?

 敵もいないのに危険を感じる。

 右……は壁、左も壁、下は何にもない。

 前はそもそも道具がある部屋だし、後ろもモンスターが来るような感じはない。

 じゃあやっぱり上?

 見上げてみると、剣で切れた部分から小さな小石がポトっと落ちて来た。

 これってもしかして……。


(モモさん、不味いです! 崩落の危険があります。そこから逃げてください!)


「わわわわわー!」


 バッと身をひるがえしてダッシュすると天井がボトボトと崩れ落ちた。

 かなりの速さで私の後ろを追い掛けてくるようだ。

 前には分かれ道。

 私はどっちから来たんだろう?

 道は分からないけれど、とにかく前に進んでみた。

 ガラガラと崩れる音が止んだのはそれから暫くしてからだ。


(危なかったですね。この辺りの地盤はあまり刺激しない方が良いみたいです。今後は気を付けましょう)


「そうするねー!」


 無事なのは良かったけれど、今居る場所はどこだろう?

 前に三本、後ろにはつぶれた道が一つと、もう一本の道が。


「カリン、帰り道はどっちかなぁ?」


(あの三人が逃げるのよりもモモさんが遅い訳がありませんから。間違った道なのは間違いないでしょう。ですが引き返そうにも道は塞がっていますから、もう全く分かりません。モモさん、頑張ってください)


「えー!」


(でもあの三人が居る方角ならわかります。そちらの方角に向かってみてはどうでしょう)


「そっかー、そうしてみるよー」


 まだカリンにかけて貰った魔法の効果は残っている。

 あの三人の居場所は私の頭の中にも伝わった。

 まだどこかも分からない洞窟の中を走っているみたい。

 その方向は……。


「あれ、後ろ?」


 どんどん遠ざかっているような?

 じゃあこの前の三本の道は全然違うところに行くのかも。

 私は後にあった一本の道を選ぶしかなかった。

 引き返してみるものの、また道が分岐しているよ。


 今度は前に二本、後ろにもう一本。

 後ろじゃないと思うけれど、前の二本も悩みどころだ。

 三人の居る場所は大体二つの道の真ん中ぐらい。

 もうちょっと待ってどちらかに移動してからにしてもいいかもしれない。


「うーん、どっちだろー?」


 そんな感じで待っていると、今まで大人しくしていたアウロが身をよじらせた。

 おトイレがしたくなったのかも?

 身をかがめて下ろしてあげるが、私の前でアンと鳴き、背中を向けてこちらを見つめている。

 もしかして道がわかる?


 犬の鼻は猫よりも敏感だと聞いたことがある。

 この辺りにもあの三人が来たことがあるのかも。

 臭いを辿って出ることができそう!


「アウロ、お願い!」


 アンと返事をしたアウロは誇らしげに胸を張って足を進ませていく。

 私も見失わないように後を追う。

 本当にそっちなのかという道を通り、本当にそっちなのかという地下へ続く道を通り、溶岩っぽい川沿いを通り抜けた。

 ちょっと不安になるものの、洞窟内にビューっと風が吹く。

 涼しく緑の匂いが乗った風だ。

 これは外から流れて来た者に違いない。


「アウロ、がんばってー!」


 私の声にアンと返事をすると、風の吹く方向に足を進ませた。

 次第に風が強くなり……。


「出たー!」


 前の入り口とは違うけれど、ここは間違いなく外。

 もう辺りは真っ暗だ。

 道具の回収はできなかったけれど、場所は分かったからいっかなー。

 リーズとカリンが居る洞窟に戻らなければ。

 でもその前に、


「アウロ、ありがとう!」


 私はアウロにお礼を言い、もう冷えているであろう、お芋さんのある場所へ!

 あの三人の姿はないけど、私の置いたお芋さんは虫や動物にも食べられずに美味しそうな状態だ。


 他にも、あの三人が手を付けていないお芋さん、火の近くにあってちょっと焦げた物も結構いっぱいだ。

 これだけあればお腹も満足しそうだけれど、もちろん一人で食べるなんて真似はしない。


 手伝ってくれたリーズとカリン、それにアウロや、あっちにいる子供達にも食べさせてあげないと。

 私は置いてあったカゴに焼けたお芋さんを詰め込み、戻って行く。


「モモ、事情は聴いていたわ。道具のことは残念だったわね」


「まあ、仕方ありませんね、崩落なんて想定できませんから。それにしても、このお芋さんは美味しいですね」


 リーズとカリンがいる洞窟。

 私の渡したお芋さんを皆で食べているところだ。


「うん、おいしー!」


 フェンリルとアウロ、それにお腹を空かせて起きてきた子供達も美味しそうに頬張っている。

 すごく幸せそうだ。

 満足な食事を取れていなかったのかもしれない。


「でもこれからどうしよー?」


 私はこれからのことを訪ねる。


「事実を伝えるしかありませんね。判断は上の人がしてくれますよ」


「隊の一番上っていったらグリフさんかしら。あの人ならそこまで酷い事にはしないと思うわよ。それと崩れた洞窟にはその内冒険者が行くんじゃないかしら」


「そっかー」


「まあとりあえず、今日はこの芋を食べたらお休みということで」


「そうですね。今から戻るのも大変ですから。ここで皆さんが進んで来るのを待っていましょう」


「うん!」


 食事を終えた私達はのんびりと眠りにつく。

 フェンリルからの夜討ちもなく、充分に休んで朝目覚めた。

 気持ちよく晴れた朝。

 もう皆は起きているみたい。


「おはようございまーす!」


 私は元気に挨拶した。


「おはようモモ、やっと起きたわね。もう出発する準備は整っているわよ」


「おはようございますモモさん、グリフ様達の位置ももう調べてあります。後は向かうだけですね」


「そっかー、ありがとう!」


「昨日はモモさんが頑張ってくださいましたからね、今日はカリン達が頑張りますよ」


「そうそう、私達に任せときなさい。ほら、フェンリルもちゃんということを聞いてくれてるんだから」


 洞窟の前には子供達を背に乗せたフェンリルがいる。


(こちらは何時でも出発できるぞ)


 もう縛られてもいないみたい。

 子供達も満足そうな表情で、口元にはお芋さんのカスがついていたり……。


「まずご飯を食べまーす!」


 私もご飯を食べなきゃいけない!

 昨日のお芋さんがまだ残っているはず!


「そう云うかもしれないと思ったから取ってあるわよ。移動しながら食べましょう」


「うん!」


 リーズからお芋さんを受け取りかじりながら移動していった。

 私とフェンリルの足はかなり速い。

 満腹になった私はリーズとカリンを背負い走り出す。

 グリフの隊を見つけたのはそれから一時間後ぐらいだ。


「モモ殿が襲われているぞ! 助けろ、助けるんだあああ!」


「英雄殿をお助けしろおおお!」


 っと、見張りの人から異常な勘違いをされたけれど、


「ちがうよー、ちがうよー!」


「ちがうからあああ!」


「攻撃はしないでくださあああい!」


 私達は身振り手振りでちゃんと否定した。

 何とか通じたのか攻撃はされず、無事に合流できたのだった。


「だからね、お願いグリフ」


「グリフさん、頼むわよ!」


「お願いしますグリフ様!」


 私はリーズとカリンと一緒に事情を説明した。


「ふぅむ、話しは理解いたしました。まあ移動中ですからな、今回のことは致し方なかったということにしましょう。下手に騒ぎ立てても面倒になるだけですからな。道具のことも王国に文を送らせますので心配は無用ですぞ」


 そして良い返事が返って来たみたい。


「それと、そちらの子共についても何とか致しましょう。見て見ぬふりは出来ませんからな。しかし……ふむ。このまま王国に引き返す訳にもいきませんな。キャットパラダイスにまで同行してもらいましょう。もちろん扱いは丁重にいたしますぞ」


 子供達三人は喜びあって手を繋いでいる。


「フェンリルはそれでいいー?」


(我はそれでもかまわん、どうせ行く当ても無かったからな。殺されぬのであれば問題はない。楽しい旅行と洒落込もうではないか)


「モモ殿、何と云っておるのですかな?」


「――だってー」


 私はグリフにフェンリルの意思を伝えた。


「それは良かった、ですがタダという訳にはいきませんぞ。フェンリル殿には隊列に加わって護衛の任についていただきます。これから長い旅がつづきますぞ。できますかな?」


(うむ、その程度ならお安い御用だ。美味い飯さえつけてくれるならな)


 フェンリルは頷きお話しは終わったみたい。

 やっと通訳から解放されたし、早く御主人のところに帰るとしよう。

家猫のモモ

御主人ごしゅじん(ヒロ)

王子シャーン

シャーンのお母さんテルナ

グリフ・リスマイヤー

青鎧のブルース・グライブス

教育係アリア・ファイリーズ

赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)

桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)

ルーカ(孤児)

プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)

ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)

クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)

シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)


剣と魔法の世界 ミドレイス

翼の生えた子供 ウリエリア

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