表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/335

取り返そう

 フェンリルを拘束し、私との上下関係を教えてあげた。

 大人しくなって話をしたのだけれど、リーズとカリンに通訳するのはちょっと大変。

 人を襲ったというのは認めたが、食料しか奪っていないと。

 他に犯人がいるのではないかと考え、カゴを持ったあの三人が怪しいとにらんだ。

 カリンの人捜しの法という魔法を使い、あの三人の居場所を探る。

 意外と近いみたいで、私は子犬のアウロを連れてその場所へ。

「あ、姉御、どうしてここに!?」


「な、何かようですかい?」


「うお……もしかして芋の匂いにつられたんですかい? た、食べますか……?」


 大柄のビグル、細身のグラミ、小柄のミグリ。

 三人は私を見ておどおどしている感じ。


「お芋さん食べるー!」


 色々やる前に、私はお芋さんを要求した。


「どうぞどうぞ、持って帰ってください」


 ビグルは私にお芋さんを手渡してくれる。


「うわー、美味しそー!」


 まだ熱々で猫舌の私にはフーフーしないと食べられそうにないけれど、絶対にこれは美味しいやつだ。

 熱が冷めて食べられる時が来るのを待ち続けた。


(あの、モモさん? ご飯を食べに来た訳じゃありませんよね?)


 私の頭の中でカリンの声が聞こえてくる。

 前やった時と同じだけど、今回は視界も共有しているとか。


「あ、カリン、ごめんね、ちょっと美味しい匂いがしたからー」


(食べるのは後にして、先にお話しを済ませてから出も良いのではないですか?)


 確かに、今は食べられないんだからその間にやっちゃうのもいいのかも。


「うん、そうするね!」


 私はお芋さんを大事に地面に置いて怯えている三人を見つめる。


「落ちていた物返してねー」


 そして本来の目的を告げたのだった。


「うおおおお、やっぱりそう来たか!」


 ついに来たという感じで身をのけ反らせる三人。


「どどどどどど、どうしましょう親分!?」


「これは困りましたよ。あんなのに勝てる訳がないんですから。親分、どうするんですか!?」


「まだ慌てるな、別に俺達が盗みを働いた訳じゃねーんだ。それに誰の物かも分からない物を拾っただけだし、別に捕まるような事じゃねーし、返すものでもねーんだぜ!」


『確かに!』


 自分達で相談して何かやる気を取り戻したみたい。

 不敵に笑って胸をふんぞりかえしている。


「ふーん、返してくれないんだ?」


 じゃあやっぱり力ずく?

 爪だとやり過ぎてしまいそうだから、ここはキャットスレイヴでいいかなぁ。

 私はペンダントを剣状に変えて戦いの準備をしたのだった。


「うおおお、やる気かお前! 俺達は別に悪いことをした訳じゃねーんだぞ! それなのにやる気かお前!?」


『そーだそーだ!』


 これじゃあ私の方が悪者だ。

 戦うのはダメなのかなぁ?


「カリン、どうしよう?」


(モモさん、騙されないでください。分かって持ち帰っている時点でもう悪です。そもそも誘拐犯なんですから普通に悪人です!)


「そっかー、じゃあ大丈夫だねー!」


 私は一歩踏み出した。


「やべぇ、奴はやる気だぞ。皆、逃げろおおおお!」


『うおおおおおお!』


 でもそれを察知して洞窟の奥へ逃げて行くけど、私が追いつかないわけがない。

 バラバラになる前にポンポンポーンと掴み、地面に転がした。


「くうううう、逃げられもしないだと!?」


「親分、何か手を、手を考えましょう!」


「あの道具の中に何かあるかもしれませんぜ! 行きましょう親分!」


「よし、誰か一人でもあそこに辿り着くんだ!」


『おおおお!』


 と、三人が這いつくばって移動を始めた。

 カサカサカサカサ虫のように意外と素早く動いている。

 別に逃がさないこともできるのだけど。


(モモさん、道具がある場所まで案内してもらいましょう。後で探すのも面倒ですから)


「そうだねー!」


 私は三人が移動するのを見届けた。

 ここはあっちの洞窟より複雑みたい。

 道が分岐して右に左に上に下に、もう何処に向かってるのか分からない。

 帰るのにもちょっと迷いそうな感じがする。


 時には別れようとしてくるけど、それは阻止して前に進み、奥の奥。

 ようやくその場所に辿り着いた。

 八畳ぐらいの行き止まりの空洞に高く積み上がった道具がある。


 ティアラ、剣、盾、宝石、化粧道具、他にもよく分からない物の数々。

 これが拾ってきた物なのだろう。

 きっとこの状態を覆す何かがあるのかも?

 そんなことはさせなければいいだけだけど。


 キャットスレイヴを取り出し拘束してしまおうとしたのだけれど、


「行けミグリここは俺達が抑えこむ!」


「お前が一番速いんだ! がんばれー!」


「へ、へい!」


「行くぞグラミ、うおおおおお!」


「へい、親分!」


 大柄のビグル、細身のグラミ私の前に立ちはだかった。

 でもそのぐらい一瞬で制圧できる。

 キャットスレイヴをビョーンと伸ばし、二人をグルグル巻きにしようとしたけど、それを望むように両手を広げて私に向かってきた。


 時間稼ぎ徹されるとちょっと厄介。

 私は身を躱して二人を一緒に投げ飛ばす。

 たった二秒程度の時間、もう一人が道具の下に辿り着いている。

 道具の中から手に取ったのは真っ黒い炭のような棒。

 まさかそれで戦うつもり?

 それなら全然大丈夫。

 一気に距離を詰めた。


(モモさん、あれは不味いです!)


「出て来い、棒に住むモンスター!」


 でも肩に手を触れたぐらいで、その棒から黒い靄が広がってしまう。

 なにかおかしな感覚、危険な匂いが体を離せと告げている。

 私はその感覚に従い後方に飛び退くと、体が合った場所に大きな赤い斧が横切った。

 その爪から指が生え、腕が作られ、体や頭が。

 完成したのは一角の生えた一つ目の牛だ。

 でも体は人みたいな感じでちょっと不気味。

 でも大きすぎてこの場所では真面に動けないかも。


「カリン、棒からモンスターが出て来たよー?」


(あれは黒妖の魔業棒(ダークネスステック)です。モンスターを封じることができるアイテムですよ! しかも出て来たのはミノタウロスの変異種(バリアント)です。強力なモンスターですよ。充分に気を付けてください、モモさん!)


「うん!」


「よし、やってしまえミノタウロス!」


 呼び出したミグリが命令したけれど、ミノタウロスVA(バリアント)は赤い斧を振り上げ、そのまま下へ振り下ろした。


「ぎゃああああああ!?」


 ミグリは避けられなかったけれど、斧は全く当っていない。

 天井の岩に偶然斧が当たって軌道がそれたみたい。


「あわわわわわわわわわわ!」


 腰を抜かしたまま両手で地面を掻いてこちらに逃げて来た。


「だ、大丈夫かミグリ!」


「ミグリいいいい!」


「操れるんじゃねーのこれえええ!?」


 見る限り操れていないっぽい。


(出て来たモンスターのレベルが高すぎましたね。あんなものは優秀な魔導士でしか使いこなせませんよ)


 ミノタウロスVAが私達を敵とみなしたようだ。

 ヴォオオと叫び、巨体を揺らして進んできた。

 これは戦わなきゃならない感じ?

 でもキャットスレイヴは二人を拘束する為に使っているし、もう片方にはアウロを抱いている。

 これで戦うのはちょっと無理。


「うーん、もう逃げていいよー」


 置いてある道具は見つけたから、この三人は必要ない。

 私は拘束を解き、二人の身を自由にさせると、


「おい、逃げるぞ!」


「へい親分!」


「ここここ腰がああああ!?」


「よし、掴まるんだ!」


「手を貸すぜ!」


 三人は力を合わせて逃げだした。

 たぶんもうこの洞窟には戻って来ないだろう。

 でも、あとはこのミノタウロスを倒すだけだ。


「てえええい!」


 私はキャットスレイヴの刃を急激に伸ばし、槍のように相手の胸を貫かせた。

 手応えは充分、剣をスッと引き抜いてみるものの、ミノタウロスはまるっきり気にしたようすがないみたい。

 痛みを感じていないのかな?


(モモさん、ミノタウロスVAは異常な回復能力を持っています。一気に留めを刺さないと勝つことは難しいですよ! もし無理だと思ったなら逃げてください!)


 カリンの声。

 色々教えてくれているけど、それでも勝てないとは思わない。

 全力なら大丈夫なはず。

 でも無茶なことをしたら後ろにある道具も壊してしまいそうだ。

 もうちょっと広くて戦いやすい場所に行きたいかも。

 そう思って私は洞窟の道を引き返したけど……帰り道、わかるかなぁ?

家猫のモモ

御主人ごしゅじん(ヒロ)

王子シャーン

シャーンのお母さんテルナ

グリフ・リスマイヤー

青鎧のブルース・グライブス

教育係アリア・ファイリーズ

赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)

桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)

ルーカ(孤児)

プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)

ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)

クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)

シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)


剣と魔法の世界 ミドレイス

翼の生えた子供 ウリエリア

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ