玉座の罠
デゼンとの戦いは続く。
傷は与えられても転移して逃げちゃうから致命傷を与えるのは大変そう。
だったら小さな傷を積み重ねちゃおうと、相当な速さで跳び回るんだ。
デゼンは堪らず逃げ出して、外で大きな魔法を作っていたよ。
あまりにも大きくて、逃げたら王宮まで吹き飛んじゃいそう。
あそこには皆が居るから防いじゃうことに決めたんだ。
大きな盾を出現させてガッチリ防御したんだよ。
耐えきった私達は疲れ果てたデゼンに止めを刺したんだ。
気を失ったデゼンにはレヴィアンが封印術をほどこして魔術を使えなくしたの。
そして薄情させたのは玉座の裏に仕掛けられた罠のこと。
レヴィアンも魔力がなくなっちゃったからペンネと一緒に玉座に向かうんだ。
玉座の間。
「うひゃははははは。うひひゃはははは!?」
狂ったように叫んでいるのは下着さえつけていない裸の男。
走り回るモンスターに担がれて玉座の間を移動し続けているよ。
「あれがこの国の王の姿です。しかし、あんなものを紹介するのも煩わしい。さあ行きましょう。目的地は直ぐそこですよ!」
「うん!」
私達を見つけると、王様をポイっと投げ捨て襲い掛かって来るんだ。
「はああああ!」
「たあああああ!」
無限に湧き続けるから大変だけど、ペンネも中々の腕前で庇う必要は全くなさそうなの。
これなら安心。
二人してモンスターを倒しながら玉座までの道を真っ直ぐ進んで行くんだよ。
数分もかからず滑り込み、玉座の裏を見てみたの。
「何かあるかなー?」
「……見つけました。これですね」
掘り込まれたような小さな文字がかかれた魔法陣。
たぶんこれが原因なんだよね?
「えーっと、どうすればいいの?」
そういえば解除の仕方を聞いていなかったよ。
ペンネに聞いてみたら、
「このような物は、こうすればいいのです!」
剣を振り、権力の象徴である王様の玉座をスッパリと切り裂いた。
魔法陣は真っ二つ。
でも出てきていたモンスターは消えたりしないみたい。
それに、仕掛けがなくなったら代わりに何かが出てくるって云っていたよね。
油断せずに待っていると、玉座の間の中央からボトンっと何かが落ちて来る。
道を塞ぐような巨大さ。
赤く透き通った体には呑み込まれたモンスター達が暴れているの。
でも内側からはゴムのようで武器さえも貫けないんだ。
直ぐに力尽きちゃってじわりじわりと融けていく感じ。
「あれは……パニシメントスライム!? 不味いです、武器耐性が異様に高い魔物です。呑み込まれないように気を付けてください!」
パニシメントスライムは獲物を求めて動き出す。
呑み込めるのなら何だって良いみたい。
近くに居たモンスターを取り込んで、段々大きくなっていくの。
もう入ってきた扉はパニシメントスライムの体に押しつぶされそう。
ここから脱出するには倒さなきゃいけないみたい。
うーん、最悪は天井を切り裂けば出て行けるかな?
まあそんなことにはならないと思うけどね。
それに、今の私は物理攻撃だけじゃないんだよ。
「猫猫召喚……燃え盛れ、戦いのミックス!」
呪文を唱えて飛びだすのは片目に傷がある勇猛な猫ちゃん。
猛るような鳴き声はキャットスレイヴに力を与えるの。
手の内でくるんと回して切っ先を伸ばすと、パニシメントスライムをザックリ切り裂いた。
紅色の炎が傷の内からあふれ出る。
これでお終いって思っていたけど、炎は赤い体を呑み込まないんだ。
プルプルの体はブクブク泡立ち燃える炎は勢いを無くして行くの。
「ああ、だめです。パニシメントスライムは体の色に近い力は吸収してしまう性質があるのです! より大きく巨大になってしまいますよ!」
「えー、先に云っておいてほしかったなー!」
直ぐに炎は消したけど、エネルギーを吸収して倍ぐらいに大きくなっちゃった。
部屋の中は半分以上浸食されちゃって体の各所から触手のような物が生えてきたの。
ブンブン振り回してモンスター達を捉えているんだ。
ミックスの猫ちゃんは残念そうに消えて行っちゃった。
「仕方ありません。ここは外に逃げてしまいましょう。モモ様ならば壁を打ち崩すことも出来るはずです」
「うーん、まだ大丈夫。頑張るよ!」
「手はあるのですか?」
「たぶん?」
結局はやってみなくちゃ分からないよ。
「そう云われるのならば応援しています。私に出来ることはありませんので」
「うん、見ていてね!」
私はもう一度キャットスレイヴを構えるの。
まずはお試し。
ヒュッと移動し触手をザクっと。
小さな切れ込みは直ぐに塞がっちゃうけれど、完全に分断したら落ちて水みたいになっちゃった。
これなら行けそうな気がするよ。
「たあああああ!」
なるべく近づかないように、上から下から斜めから、パニシメントスライムの体を斬り飛ばすんだ。
モンスターを食べている分直ぐに大きくなっちゃうけれど、それ以上の部分を刻み小さくしちゃうの。
玉座の間には馬鹿笑いしている王様を除いて他のモンスターは居なくなる。
後は縮んで行くばかり。
そのまま続けていくけれど、途中から全然縮まなくなっちゃった。
「あれー?」
「モモ様、たぶん扉の先からモンスターを供給しているのでしょう。王宮のモンスターが居なくならない限りは倒せないのかもしれません。やはり逃げた方がいいのでは? 大きくなればこの部屋から出てくることもありませんので」
「もうちょっとだけやってみるよー!」
王宮のモンスターも退治できるんだから手間が省けそうだもん。
ズバンズバンと斬り続けるとようやくパニシメントスライムが小さくなってきたよ。
扉の外にモンスターが居なくなったのかな?
相手も最後の悪あがきをするみたい。
私やペンネを取り込もうと数多くの触手を伸ばして来るんだ。
グニャグニャ、ウネウネ、あれに触れたらちょっと不味い。
私は一気に触手を切り裂き液体に変えちゃうの。
触手だって体の一部。
その分縮んでほら、もう少し。
今は人より小さいぐらい。
さあ止めを刺してあげる。
「行くよー!」
キャットスレイヴを平たく大きくしていくよ。
ズバッと一発、横薙ぎ炸裂。
上と下を分断したんだ。
下がジャバっと液体に変わり、続けて上も同じに。
綺麗サッパリなくなっちゃった。
「あのモンスターに魔法を使わず勝ってしまうとは、なんという力量でしょう。尊敬いたしますモモ様」
「ありがとー!」
褒められるとなんだか嬉しくなっちゃうね。
「あとは王宮内に点在するモンスターを退治してしまえば安全は確保されるでしょう。町の解放はそれからですね」
王宮中に居るモンスターなら大体の位置は分かっちゃう。
結構早く終わらせられそうだね。
「うーん、じゃあこの人はどうしよう?」
私は床に転がりながら笑い続ける王様を指さした。
「……放って置きましょう。この場所は安全になったのですからわざわざ助ける必要はないですよ。それより皆さんが心配していますよ。顔を見せて無事を報せなければ」
「そうだね」
私達は玉座の間を後にして皆の居る部屋に戻って行ったの。
「仕掛けを解除してきたよー!」
「おお、それでは王宮や町からモンスターが消えたという訳ですな! お二人とも、御苦労様でございます」
真っ先に駆けつけてくれたブラムスが労いの言葉をかけてくれたんだ。
「いえ、それはまだですね。無限に湧き出て来なくなっただけで、相変わらずモンスターが徘徊しております。ガルダ様、まずは王宮の中を掃除してしまいましょう」
「ふむ、同意ですな。どこかに隠れている者達も助けねばなりますまい。手分けしてモンスターを退治してしまいましょうか。レヴィアン、行けるな?」
「当然だぜ。魔力も充分回復したからな。飼い猫、お前は少し休んでいろ。この王宮の中ぐらいは俺達だけで退治してやるぜ!」
と、すごくやる気に満ちている。
私もちょっと疲れちゃったし、お休みできるのならそうしようかなぁ。
そろそろ御主人と一緒に居たいもんね。
私は子供達の近くに腰を下ろして休憩したよ。
何にもしていない時間は直ぐに瞼に重力を与えてくるの。
徹夜の疲れが出ちゃったのかな。
完全に閉じちゃうともう開かなくなって、私は夢の中に落ちていく。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
カミル・ストラデジィ(学校のお友達)
プラナ・イスリード(学校の先生)
レヴィアン・イング(真炎ハイグスト国、軍師ガルダの息子)
アギ(レヴィアンの付き人)
ヤー(レヴィアンの付き人)
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




