出発進行、猫の国へ
私はアリアにストレイキャットという自分の種族のことを教えてもらう。
その人達は南のキャットパラダイスという国に住むらしい。
そんな時、ブルースが私を呼びに来た。
何かお客さんが来ているみたい。
ココというストレイキャットの女性。
話してみると、この国で名を上げた私を歓迎したいんだそうだ。
私はその国に行くことを告げ、ココは国に帰って行った。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい、モモお姉ちゃん」
「モモ、しっかりね!」
私はお見送りに来てくれたシャーンとルシフェリアに手を振った。
これから立派な馬車に乗って、キャットパラダイスという国にお出かけだ。
でも行くのは私と御主人だけじゃない。
冒険者のリーズとカリン、それと国の代表でグリフも付いてくるみたい。
あとは百人ぐらいの護衛の兵隊さん。
荷物もいっぱいで結構大勢だ。
「じゃあこれから一ヶ月の長旅よ。モモ、改めてよろしくね。御主人もよろしく!」
「モモさん、御主人さん、よろしくお願いします」
「うん、リーズ、カリン、よろしくね!」
(よろしくね!)
リーズとカリンは私の馬車の近くを歩いて移動するみたい。
一緒に乗って行けばと言ったんだけど、これも仕事だからと断られてしまった。
「それでは出立する。者共、続けえ!」
そして前の方からグリフの合図が聞こえる。
それを切っ掛けに私の乗った馬車が動き出す。
キャットパラダイスまでは二週間、帰りもだいたい二週間。
滞在期間を合せると一ヶ月以上はかかるみたい。
私はのんびりお昼寝して待ってよう。
馬車にかけられた振動軽減の魔法が、丁度眠らせてくれるぐらいの子守歌になってくれている。
直ぐに眠くなって私は目を閉じたのだった。
(モモ、起きてモモ、今日泊まる村に到着したよ)
御主人の声がかかったのは、ほんの数秒後ぐらい。
「えー、もうー? 御主人早いねー」
ちょっとねむねむな目をこすりながら体を起こした。
(うん、早くはないかな。たぶん七時間ぐらいは寝てたみたいだし)
「私そんなに寝てないよー」
(いやいや、普通に寝てたから。ほら、もうすぐ日が落ちるぐらいでしょ)
窓の外を見てみると赤く焼けた夕日が見える。
それに前の方に村っぽい建物があるみたい。
やっぱり寝てたっぽい?
でも何でだろう、全然寝た気がしないよー。
大きなあくびが、あふぅっと出た。
(あそこはブリックの村なんだって。休憩中にグリフが教えてくれたよ)
「……あれ、私ご飯食べてないよー!?」
休憩時間にはご飯かお菓子が出る予定だったはず!
もしかして食べ逃してしまったのかも?
(でもモモは寝てたし、起こすのは可哀想かなって)
「えー! 御主人の意地悪ー!」
ちょっと頬がふくれてしまった。
(ごめんごめん、でもモモが食べる分は取ってあるよ。ほら、そこの座席の上)
御主人が手を向けた場所には魔法で固定されたお皿がある。
その上に乗っているのはお肉が刺さっている串焼きだ。
全く匂いがしなかったけど、それも魔法のせいだろう。
何時もの料理よりはちょっと簡単そうな物だけど、それでも充分に美味しそう。
「わー、やっぱり御主人好きー!」
ご飯を取っておいてくれた御主人に抱き付きほっぺをスリスリした。
(えっとね、僕がやったんじゃないよ。リーズとカリンにお礼を言っといて。あと村に着いたらすぐ晩御飯になるかもよ?)
「うん、村に着いたらお礼を言っとくよー。それと晩御飯も食べるから大丈夫!」
(モモは食いしん坊だなぁ)
「食べたいもーん!」
私は置いてあるお皿に手を伸ばした。
触ると魔法の効果が解けてちょっと冷めているけどお肉の美味しそうな匂いが漂ってくる。
パクッと食べると、お塩のきいたパンチのある味わいだ。
そのまま食べ進めていくと、最後の一欠けらを口に入れた頃に馬車の動きがピタッと止まった。
ちょうど村に到着したみたい?
窓から外を見てみると、藁ぶき屋根のお家が並ぶ村の入り口で、長いあごひげで杖をついているのお爺さんや、村の人達がお出迎えしてくれている。
アリアもちゃんとご挨拶しなきゃって云っていたし、私も下りて行かないと。
私も御主人を連れて馬車から飛びだした。
「こんばんはー、モモだよー!」
(こんばんは)
そして皆に手を振って挨拶を。
「あらモモ起きたのね」
「モモさん、こんばんはです。それともお早うございますでしょうか」
リーズとカリンは何だか笑っている。
「モモ殿は相変わらず元気そうですなぁ」
それにグリフもいるみたい。
「おお、貴女がモモ様ですか。私はこの村の村長をしております。グスタフと申す者です。お噂はかねがね聞いておりますぞ。さあさあ、どうぞこちらへ。御馳走とまではいきませんが、精一杯のお持て成しをさせていただきます」
グスタフが村の中心にある広場に案内してくれた。
「わーい、ご飯だー!」
(今食べたばっかりなのにねぇ)
「まだ入るから大丈夫!」
そして焚き火を囲ってキャンプファイヤーみたいな感じの宴会が始まる。
野菜が多いみたいだけど、濃い味付けで、ここのご飯も中々なものだ。
皆料理を愉しみ、お酒を飲んでいる人も多い。
「おお、この酒の芳醇な味わいよ!」
「お料理も美味しいわ」
「これもモモさんのお陰ですね」
三人も満足そうな顔だ。
私も絶え間なくご飯口に運んでいると、
「気に入ってもらえて何よりです。その代わりといってはなんですが、じつは折り入ってお頼み申し上げたい事があるのです。少しお話しを聞いていただけないでしょうか」
村長さんから何か相談があるみたい。
でもご飯が美味しいから今は皆に任せておこう。
私は次の料理に手を付けた。
「わしらは急がねばならんのだが、それ程に急を要するものなのか?」
「はい、実は皆様がこれから向かわれる街道に盗賊が出るようになりまして、村の者が困っておるのです。皆様が来ると聞いてお知らせしておかねばならぬと思い立ったしだいであります」
「ほう、盗賊とは物騒だな。街道を封鎖されれば行商人の行き来もままならんだろう」
「はい、その通りでございます。このように野菜作りぐらしか無い村ですからな。行商人がいなくなってしまうとお金の行き来が止まってしまうのですよ。今は耐えられても長期間となると村が疲弊してしまいますので、何卒手を貸してほしい次第であります」
「ふーん、まあ行きがけの駄賃ってやつ? どうせ行かなきゃならないなら倒しといてもいいんじゃない?」
「ええ、襲い掛かられても厄介ですしね」
「うむ、そういうことであれば任せるがいい。それを知って素通りは出来ぬからな。それに向うからの襲撃そなえねばならぬか」
「まあこっちには英雄が居るんだから大丈夫よ、ね、モモ!」
何かしらの話しが終わったのか、リーズが私の肩にポンと手を置いた。
「ふぇー?」
よく分からないけど私はご飯を飲み込んだ。
やっぱりお肉も美味しい。
(通り道に盗賊が出るんだって。それを倒さなきゃって話だよ)
「そっかー、じゃあ倒しちゃおー!」
「うむ、モモ殿が乗りきであるのは何よりだ。それで相手の規模は?」
「はい、聞いた話によりますと三人ほどだとか」
「何だ、それだけか。では、わしの出番はなさそうだな」
「まあそれは良いけどさ、そんな小規模の盗賊なんてこんな大人数を見たら出て来ないでしょ」
「ええ、それもそうですね。倒すにしてもこのままでは無理そうです」
「ふぅむ、ならば先行隊を出して退治してしまうか。誰か手を挙げるものは居るか?」
グリフは周りの兵士達に声をかけている。
俺が俺がと手を挙げるけど、
「冒険者の私達が居るんだからさ、そういうのは任せときなさいよ。ほら、女の子の方が襲いやすいでしょ?」
リーズは行く気満々だ。
「お姉ちゃんがやると云うなら、カリンもついて行きますよ」
やっぱり二人とも行くみたい。
「いやしかし、流石に少女二人を盗賊の下に送り出すのは、わし等の名が廃るというか何というか……やはりこのわしもお供いたしますぞ!」
グリフも同行しようとしていたけれど、
「いかつい剣なんて腰にぶらさげてたら警戒するでしょ。幸い私の槍はたたむことも出来るし、ここはモモに来てもらうってことで」
普通にお断りされている。
それで私に声がかかったみたい。
「そうですね、キャットスレイヴも隠すことができますしね」
「それはそうかもしれませんが、モモ殿は大丈夫なのですか? もし行きたくないのであれば別の者に……」
「うん、大丈夫だよー!」
二人の頼みであるなら私は聞き入れる。
私は元気に手を挙げたのだった。
「そうですか、ならばお任せいたしましょう」
グリフはちょっと残念そうだ。
「うん!」
(でっかい化物にも負けないんだから大丈夫だとは思うけど、それでも気を付けて行きなよ)
「御主人は来ないのー?」
(今回は邪魔になりそうだし、僕はここで待ってるよ。ここの方が安全だしね)
「そっかー、私がんばってくるねー!」
(うん、いってらっしゃい)
私は御主人にお別れを言い、三人で移動の準備を始めた。
旅人に見えるようにボロボロのマントを身に纏う。
キャットスレイヴはペンダントにしてある。
もし使えなくなっても爪でひっかけばいいし!
「できたよー!」
私の準備が終わると、リーズとカリンも準備ができたみたいだ。
「モモ、さっきまでずっと寝てたんだし眠くはないわよね?」
「うん、大丈夫だよ、もうお目目パッチリー!」
顔もちゃんと洗っている。
「そう、じゃあ村を出てみましょうか。カリン、行くわよ」
「あ、はい」
他の人はこの村で待機するみたい。
村を出た私達三人は、草木の茂る街道を進む。
私は暗さを感じないし、空は星がキラキラしていていい感じ。
「盗賊さんは何処から出てくんでしょう?」
「さあね、もしかしたら草むらにでも隠れてるんじゃない?」
「近くに人間の気配はないよー」
「あら、モモには分かるの? それは便利ね」
「流石モモさんですね。頼りになります」
「えっへん!」
誉められて鼻高々だ。
「でもこのままだと何時までかかるのか分かりませんね」
「まあ盗賊って奴が何処に居るのかも分からないしね」
「じゃあ私が連れて行くよー!」
私は二人の体を両脇にガシッと掴む。
このぐらいは何時もやっているから全然平気だ。
「あら、これは楽でいいわね」
「モモさん、ありがとうございます」
二人にお礼を云われてもっと元気に走り出した。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




