吹き荒れる風のハイグスト
レヴィアンはアリアが住居を用意していたみたい。
ハイグストに行くって伝えると、明日の朝出発することになったんだ。
ちゃんと準備もして時間通りに集まって、ブリザードドラゴンのティアマトンを呼び出してレヴィアンと一緒に出発したんだよ。
馬車では何か月もかかっちゃうけど、殆んど時間もかからず到着したんだ。
「それで結局何をすればいいの?」
ご飯を食べて満足した私はレヴィアンに聞いてみた。
「そうだな、まずはこの近くの村から解放するとするか。だが覚悟しろよ。相手は腐っているとはいえ国の軍だ。行動を起こした瞬間、俺達は犯罪者にされる。王を説得、もしくは懐柔しないかぎりは解除されることはない。だからといって逃げ出そうなどと考えるなよ? 約束通り殺してやるからな!」
「逃げないよーだ!」
(ねー)
「ふん、ここまで来て逃げるとは思っていない。ただ覚悟を聞いただけだ。では行くぞ」
「はーい」
レヴィアンは着くまで事情を教えてくれたの。
近くにあるのはウィシスの村なんだって。
王が操られてからは、のんびりした風景が広がる村も例外なく酷いことになっているみたい。
税率を数十倍にまで引き上げて支払えない場合は財産を全て没収されるそうだよ。
それだけじゃなくて、男は監獄、若い女は何処かに連れていかれるらしいんだ。
だからこの村では働き手が居なくなって滅びる直前みたいなの。
私、酷いことは許せないよ。
この村を解放させなくっちゃ!
私達は急いで進んで村の入り口へ。
人の気配はほとんどなくて建物の中にぽつりぽつり。
農場には動物もいなくて畑は放置で荒れ放題。
時間が経てば経つほど復活させるのは難しいのかも。
「この村を救うには村を治めるオイド・デ・ヨード伯爵を倒すしかない。奴が居るのはこの先の屋敷だ。行くぞ、飼い猫!」
「モモだよー!」
言っても聞いてくれないんだよね。
向かったのはこの辺りを収めるオイドの館だよ。
滅びかけの村とは違い、贅沢の宝庫みたいな建物なの。
だけど警備はザルのようなものなんだ。
護る兵士も鎧を脱ぎ捨て自分達が支配者だといわんばかりに座って酒盛りなんてしているの。
「奴等、ハイグストの誇りも何もかも無くしやがって。正面からだ、行くぞ飼い猫! ダークネス・レクイエム!」
怒りで杖を向けるレヴィアン。
いきなり全力。
真っ黒な炎が酒盛りしていた兵士達の上を抜けて屋敷の中央部に激突したの。
破壊と轟音、そして黒い熱が屋敷を浸食していくんだ。
当然大騒ぎになって大きな警報が鳴ったよ。
「て、敵襲ううううう!」
「敵襲だあああああ!」
流石に酒盛りをしていた目の前の奴等も立ち上がった。
置いてある剣を手に取ろうとしているけれど、そんなの待ってあげないよ!
ゴーンと叩いて全員気絶させてあげたよ。
(じゃあ行こう、ここからは敵の拠点だからね。周りには気を付けなよ?)
「うん、大丈夫!」
と、進もうとしたけれど、レヴィアンの気配が遠ざかっていたのに気がついちゃった。
まさかあれだけ云って自分は逃げちゃったの?
「こいつだ、捕まえろおおお!」
「うおおおおおお!」
大量の兵士が向かってくる。
今更やらないわけにはいかないよ!
だけど訓練もしていない人達に負けたりしないんだ。
目の前の敵をシュバっとバシンと叩きのめし、私は屋敷の中に入って行くよ。
あれ、レヴィアンの気配もあるみたい。
何時の間にか侵入したのかな?
「敵は一人だ、囲め囲めえええ!」
「うおおおおおお!」
数十人でやって来る敵。
だけどそのぐらいなら簡単だよ。
一気にバシッとやっつけたら、もうやっては来ない感じ?
今、目につくのは建物の角で体を震わせて怯えている女の子達だけだよ。
もしかして村から連れて来られた子?
「助けに来たよー!」
声をかけると表情が明るくなるけれど、直ぐにまた暗くなっちゃうの。
「逃げられるんだよー?」
何かあったのかなって聞いてみたら。
「で、でも相手は国の軍隊なんですよね。逆らったりしたら私達の村が無くなってしまいます」
「勝てる訳がありませんもの……」
村のことを心配している感じだね。
今は何を言っても動いてはくれないよ。
負けることを心配しているのなら勝てるって証明してこればいいんだよ。
私は屋敷の中を駆け巡り領主オイド・デ・ヨードを捜したの。
人の気配がかたまっている所はまだまだありそう。
ここかな、ここかなって扉を開けて、屋敷の奥でようやく見つけた領主っぽい人。
子供みたいに背が低いけれど、立派な衣服と鼻下の髭、顔もちょっとおじさんっぽい。
「き、貴様が侵入者!? 者共、私を護れ、絶対に通すな!」
五人の部下に命令を下しているから間違いないかな。
じゃあこれだけ倒して終わりだね。
『おおおおおおお!』
勢いよく襲って来る者達を、一瞬で返り討ちにしてあげたの。
「バカな、これ程の人数差があっても勝てないだと!?」
「もう諦めて退治されてね」
「ひいいいい、許してくれ。私は国の命令で仕方なくこの村を支配しているだけなんだ。望みの物ならなんでも差し上げるし、この村に居る限りは思う限りの地位と栄誉を与えてもいい! ずっとずっと遊んで暮らせるようになりますよ!? ですから、どうか、どうかどうか命だけはお助けください!」
もう勝ち目がないと分かって祈るようにしているよ。
(うーん、どうしようか?)
「もう悪いことをしないなら許してもいいけど?」
「誓う! もちろん誓うとも!」
「そっか、じゃあいいかなぁ?」
なんて思っていたら、レヴィアンの気配が近くにあるのが分かったよ。
「バカが、誰が許すか! 反乱の狼煙としてテメェはここで終わるんだよ! ダークネス・ブラストおおお!」
何処かで話しを聞いていたのかな。
いきなり黒い炎が領主に向けて放たれたんだ。
あんなの食らったら焦げ焦げになって死んじゃうよ。
私は前に立ち塞がってガッチリシッカリ防いじゃった。
「お前、まさか裏切るんじゃねぇだろうな!?」
レヴィアンは私の行動に怒りの表情を見せている。
「違うよー、悪いことをしたらちゃんと罪を償わなきゃダメなんだよ。殺したらダメってアリアが云ってたもん!」
「なんて甘い奴。やはり気に入らないぜ。……だがいいだろう。飼い猫がこの村を解放したのだからな。言う通り償わせてやるさ。全力でな。お前の処遇は村の全員一人一人に決めてもらうぜ。八つ裂きか、それとも串刺しか。愉しみにしていろよ」
「ひいいいいいい!?」
あまりにも邪悪な笑顔を見てオイドは怯んでいるよ。
ボスを捕まえたから全員降参しちゃったけれど、レヴィアンが云うには、まだ始まったばっかりなんだって。
ここから色々な村や町を解放して最終的には首都に向かうんだそうだよ。
ちょっと長くなりそうな感じ?
「そういえばレヴィアンは何をしていたの?」
「お前を囮にして俺がオイドを捕まえるつもりだったんだよ。テメェが思ったより強くて間に合わなかっただけだ! 言わせんな!」
(なるほど、美味しいところだけを持って行こうとしたんだね)
「ふーん」
「何だその目は、俺が活躍出来なくってそんなに嬉しいのか? 舐めるなよ、今回はたまたまタイミングが合わなかっただけだ、次は驚くような活躍をしてやるから邪魔するんじゃねぇぞ!」
と、背中を向けちゃった。
私は何にも言ってないのにね。
それで捕まっていた女の子達は全員助け出して村に戻ったけれど、再開を喜んだのはほんのちょっとだけなの。
村が滅びるだのなんだの、皆、同じことばかり。
若い男が誰一人いないのが問題なんだって。
「だったらそいつらも助け出せばいいだけだ。行くぞ、飼い猫」
「どこにー?」
「向かうのはアルダミンド鉱掘所だ。労働させるのならきっとそこだろうぜ」
誰かに報告される前に私達はその場所に行ってみることにしたんだよ。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
カミル・ストラデジィ(学校のお友達)
プラナ・イスリード(学校の先生)
レヴィアン・イング(真炎ハイグスト国、軍師ガルダの息子)
アギ(レヴィアンの付き人)
ヤー(レヴィアンの付き人)
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




