夜の中の攻防
戻って来た地下室。
探してみたけど手掛かりはなく捕まっていた人達に話しを聞いてみたんだ。
どうやら、プリスターは全ての国を掌握して全てを混沌に落とす気みたい。
そんなことをさせたりしないよ。
私達は作戦会議をして今後の展開を考えたの。
周辺国と連携してプリスターを叩き潰す感じだよ。
そして私は馬車に帰ってまたご飯を食べたんだ。
でもちょっと食べ過ぎちゃって動けなくなっちゃった。
エリオが夜の見張りをしてくれている間に、ぐっすり寝ようと思ったけれど、お腹が痛くて中々寝付けなかったんだよ。
うんうん唸っている時に近づいて来る気配が一つあったの。
これは知っている人じゃない感じ。
町の入り口に近づいて、私達が居るこの場所を避けながら外に出ようとしているの。
かなり怪しいよね。
私はエリオに声をかけて運動がてら御主人と行ってみることにしたんだ。
見つけ出した人は顔がモンスターになった人達三人。
「こんばんはー! なにしているのー?」
(こんばんは)
後ろから声をかけてみると、ビクってして別々の方向に走り始めたんだ。
何の理由かは知らないけれど、町からは出すなって云われているもんね。
でもお腹がいっぱいで走るのはちょっと無理。
私はキャットスレイヴをビュンと振って三人をガシッと捕まえちゃったの。
「どうして逃げるのー?」
(不思議だよね、悪いことをしていないのなら逃げる必要もないんだし)
覗き込むように見つめてみるけど言い訳もせずに顔を逸らすばかりなの。
とりあえず焚き火のところまで連行したんだよ。
「なるほど、話しもしてくれないと。ならばこの者達は町の者達ではない可能性がありますね。昼の騒動に紛れたプリスターの者達やもしれません。顔さえ変えてしまえば誰なのか分かりませんからね」
「そうなのー?」
「ま、調べれば直ぐに分かることですね。下手に言い訳をして拷問されるよりは今直ぐに口を割ってしまった方が楽ですよ。本当に……」
エリオはシュッと剣を抜いたんだ。
剣先を耳元に当てて、何だか酷いことをしそうな感じ。
うーん、でもこの人達が悪い人なら仕方ないのかなぁ?
「先ずは耳がなくなってしまいそうですよ。さあ、話すか話さないか、今直ぐに決めてください」
「わ、わかった、話すよ、話すからやめてくれえええ!」
ついに観念したみたいだよ。
やっぱりこの人達はプリスターの司祭だったみたい。
しかも逃げた先でグリザリィと合流するつもりだったんだって。
まだ死んでいなかったなんて騙されちゃった。
でも今度はこっちの番。
集合場所に行ってグリザリィを捕まえちゃえばいいんだよ。
この人達はエリオに任せ、私と御主人は禁断の森って場所に行ってみることにしたの。
嘘ついたら針千本、そうならないようにしといてね。
★
私と御主人が向かったのは町の西にあった深い森だよ。
雪はないけれど、ひんやりとした空気が漂いギャアギャアと鳥や獣の鳴き声が聞こえてくるんだ。
あの人達が云っていたのは森の奥にある小屋にグリザリィが来るらしいの。
まずはそこを見つけなきゃ。
私と御主人は森に到着するとピョンピョンと移動していくよ。
猛獣の横をサッとすり抜け、虫や鳥に気を引かれながらも奥に奥に。
大きな岩の後ろ、大木の向こう側、ちょっと視界が悪いから探すのは大変だね。
中々見つからなかったから木の天辺に登って何度か景色を見まわしたんだ。
「うーん……あ、あそこ、ちょっとだけ木がないところがあるよ!」
(建物があるならそういう場所なのかもね。行ってみようか)
「はーい!」
木々を飛び移って移動すると森に隠れるような小さな建物が見えてきたよ。
グリザリィの気配は……まだないみたい。
町から出れていないのか、森で迷っているのか、それとも猛獣に食べられちゃった?
うーん、分かんないから、とりあえず中に入ってみよう。
建物の中は暖炉以外何にもないよ。
隠し通路もなさそうだよね?
一通り探しても何にもなかったからグリザリィを待つことにしたんだ。
しばらく御主人とお話ししながら待っていると、
「……御主人、見つけたよ。グリザリィの気配」
森の中に気配を感じたの。
三人の連れも居るみたい。
やっぱりプリスターの仲間だよね。
(そっか、いちおう注意しよう。相手は何をして来るか分からないからね)
「うん、気を付けるよ!」
距離がどんどん縮まり、もう直ぐこの場所に到着しそう。
私はドアの陰に隠れて待つ。
「クソッ、待ち合わせをこんな所にするんじゃなかった。虫が多くてかなわんわ! おい、扉を開けろ!」
ガチャッと開いたと同時に、
「んにゃあああああ!」
(しゃああああ!)
私と御主人はグリザリィにとびかかったの。
「うおおおおお、貴様はあああああ!?」
隙をついたから、ガッチリ縛り上げたのはほんの一瞬のことなんだ。
当然他の三人も逃がさない。
例えどんなに抵抗しても、もう逃げられないよ。
「まさか待ち伏せされているとはな。つまり他の奴はもう捕まったということか!」
「そうだよ、もう観念してね!」
「くぅぅ、こんなことになるとは、くそおおおおお! ……とでも云うと思ったか? お前達こそ観念して我等プリスターに下るがいいわ!」
こんな状況なのにグリザリィは余裕な感じ。
(何かまだ奥の手でも隠しているのかも。気を付けてね、モモ)
「うん、目を離さないよ!」
御主人の注意を受けて警戒を強めたんだ。
目が飛び出すぐらいに見つめるけれど、四人とも動きはなかったの。
タダのハッタリだったりして?
変なことが起きる前に連れ帰れば問題ないかも。
キャットスレイヴで持ち上げようと思ったら、森の中に霧が漂ってきたの。
辺りは真っ白で視界はほぼなくなっちゃった。
たぶん木の天辺を越えるぐらいに。
帰るのはちょっと大変かも。
「注意しろよ、この辺りのモンスターは霧が濃くなるほどに狂暴化し人を見ると襲ってくるようになるのだ。まあ、霧を出したのも、そうするように仕向けたのも我々なのだがね。さあどうする、我々を見捨てて逃げ出すかね?」
グリザリィは勝利を確信しているよ。
「そんなの全部倒しちゃえばいいんだよ!」
(モモなら出来るよね。見せつけてやろう!)
「うん!」
私は縛られたままのグリザリィ達三人を小屋の中に放り込み、キャットスレイヴをチャキッと構えたの。
グニグニ伸び続けるからこのままでも全然戦えるんだよ。
真っ白白の空間に無数の敵意が現れた。
十匹ニ十匹、まだまだ湧き出てくる感じ。
もう何時何処から何が出てきてもおかしくない。
……来た!
正面、ほぼ全ての方向から飛んで来るのを感じるの。
見えないから下手に避けたら当たっちゃう。
なら全部防いじゃおう!
「にゃああああん!」
ドーンと現れる巨大な壁。
これを越えられる攻撃はないんだ。
でも今度は側面に回り込んで来る。
まだまだ壁を増やすことは出来るけれど、防いでいるだけじゃ倒せない。
小屋の後ろにも敵の気配が生まれるし、こうなったら一気にやっちゃうよ!
私は小屋の上に飛び乗ると、大きな盾をしまってキャットスレイヴをグルんと一薙ぎ。
伸び続ける刃でバッサリ倒れる極太の大木。
多くのモンスターが巻き込まれて埋もれるんだ。
この場所に倒れてくるのは全部スッパリ切っちゃった。
でも、これで全部……という訳にはいかないね。
被害を免れたモンスターが真っ直ぐ小屋を目指して来るみたい。
更に森の中から敵の応援が来そうな感じ。
攻めるには……。
「御主人、掴まっていてね!」
(うん!)
私はキャットスレイヴをグルんと回す。
今度は斬る為じゃないよ。
扇風機みたいに風を出すためなんだ。
ちょっとやり過ぎて竜巻みたいになっちゃったけど、中心部のここは安全なの。
霧はズンズンと飲み込まれ、竜巻は真っ白な龍になる。
空に登り切った時、周りの景色が変わったよ。
見える敵は多いけど、もう不意打ちは効かないから。
あとは全部私の時間。
直ぐに終わらせてあげるから!
「いくよー!」
スッパリサッパリ全部切り伏せ周りの敵を殲滅したよ。
あとはグリザリィを連れ帰れば終わりだね!
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)
ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)
リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
王子パーズ(恋焦がれる男の子)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




