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グリザリィの心中は

 私達はパーズが居る場所に行ってみたの。

 緩やかな小川の畔でパーズとこの国の王女ミリアが見つめ合っていたよ。

 全く動きそうにないから声をかけようとすると、近くに居た護衛の人がガードして来たんだ。

 エリオが書状を渡すと納得して道を開けてくれたよ。

 話をすると逃げ出そうとする二人。

 でも簡単に捕まえちゃったんだ。

 それでパーズは赤くなっちゃって、ミリアとお別れしちゃったんだよ。

 一応納得はして貰ったけれど、今度はプリスター教をなんとかしなきゃ。

 教会の場所を調べてグレゴリーの弟であるグリザリィって人に会いに行ったんだ。

「き、気のせいではないでしょうか……」


 リシェーリアは手で顔を隠して私の後ろに隠れちゃった。


「ほうほう、そうですかそうですか。五年ほど前に教会の会合で会っていたと思ったのですが、気のせいですか。そうなのですか」


 グリザリィはそれでも気にせずに近づいて来る。


「いえ、あの、たぶん他人の空似……気のせいだと思います」


「おや、リシェーリアさんではないと?」


「……違うと思います」


「なんだそうなのですか。もし教会を裏切ろうなどとしているならば容赦はしませんでしたのに。それはちょっと安心しましたよ。本当にねぇ」


 その顔はさっきまでの優しいものだけど、雰囲気は全然違っているよ。

 まるで得物を狙う猛獣みたい。

 これはもうバレている感じかも。

 私はリシェーリアの手をグイっと引っ張るの。


「ちょっと来てみただけだから、じゃあ私達帰るね!」


「そうですか、またのお越しをお待ちしております」


 軽く手を振ってくるグリザリィ、私達はそのまま教会を出て行ったんだ。

 流石に追い駆けてきたりはしないみたい。

 視線が切れるまで移動して、ようやく話しを始めたの。


「モモ様、少し危なかったですね。どうやらリシェーリアの顔を知られていたようです。僕達のことも本当は知っているのかも知れませんね。今後は注意いたしましょう」


「分かったよ。でも私達の事を知られているならグリザリィが大人しくなっちゃうかも?」


「まあ、確かに。僕達が居る今は下手なことはしないのかもしれませんね。相手は随分時間をかけて計画を練り上げているようですし。リシェーリアは馬車で待機ということにいたしましょうか」


「はい、それで構いません。何かしら見張られる気がいたしますし」


(それじゃあ何か作戦を立てなきゃだよね。モモ、どうしようか?)


「うーん、やっぱりコッソリするしかないよね! 陰から見張っちゃえばいいんだよ!」


「それはそうですが……」


 エリオは少し考えて、


「ならばいっそ町を出るというのはどうでしょう。僕達が居なくなったと知ればグリザリィも油断するでしょうし、その隙に僕達は変装して戻ればいいのです。流石に全員でという訳にはいかないでしょうけどね。顔バレもしていますから」


 良さそうな作戦を思いついたみたい。


「そっか、じゃあ馬車の二人と交代だね!」


「心配なのはあの二人が動いてくれるのかということだけですね」


「きっと大丈夫だよー!」


 で、馬車に戻って話をしてみたんだけれど……。


「あ、そんなのお断りだよ、アタシはただの料理人なんだからね。自分達で何とかするんだね」


「あー、私も馬の世話が忙しいんだよ。他を当たってくれー」


 レマは料理の下準備、ナヴィアなんて馬の上で寝っ転がって世話をされているの。


「もし手を貸してくださるのならそれなりの報酬を用意してもいいのですよ」


 エリオがご褒美をくれるって伝えても、


「アタシは料理人だ。料理以外で金を貰うつもりはないよ」


「あー、私も興味ないわー」


 こんな感じで無理っぽい。

 説得も無駄みたいだよ。


「……これは仕方がないですね。ディアス様に応援を要請してみましょう。いい返事が貰えたなら幸いなのですが」


 それで次はパーズの護衛であるディアスに話をしに行ったんだ。

 早速事情を伝えてみると、


「いいだろう、どの道お前達の仕事が終わらなければパーズ様は御帰還されない。女王陛下のお心を考えればなるべく早くお帰り願えるのが第一だろう」


「うん、ありがとー!」


 快く引き受けてくれるみたいだよ。

 そして色々な話し合いが行われて、今日作戦が決行されるんだ。

 私達は直ぐに王様にお別れの挨拶をしに行ったの。

 ここには一応レマとナヴィアも来てくれたんだよ。


「まさかこんなに早くお帰りになるとは、こうして御馳走もご用意させていただきましたのに。仕方ありませんな、これは町の皆で頂くと致しましょう」


 目の前の王様はちょっと残念そうな雰囲気を出している。

 後ろに並べられている料理はキラキラ光って宝石箱みたい。


「私思ったの、御馳走は食べてから出発しよう!」


 そんなの食べない訳にはいかないよね!

 御馳走の下に歩き出そうとした瞬間。


「さあ行きましょうモモ様、皆で帰る時間ですよ」


「何を見ているんだい、あんなのよりアタシの料理じゃ不服だっていいたいのかい!」


(モモ、レマの料理で満足しとこうね)


「あーん、御馳走がー!?」


 私はエリオとレマに引きずられて馬車に連れ戻されちゃった。

 今回はパーズ達も一緒なんだよ。

 町の人に見送られて町の外に出て行ったの。

 時間をかけて遠くに離れた私達。

 もう誰にも見つからないぐらい。


「さてと、急いで変装してしまいましょう。今回は僕とモモ様だけでいいですね」


「はーい!」


 私とエリオはそこで服装や髪型も変えて冒険者風に変装したよ。

 これはこんな時の為に用意していた物なんだ。

 もうグリザリィが見ても分からないぐらいの別人になっちゃったの。

 何かね、名前も変えて私はニヤ、エリオはリッツそれでいくみたい。

 だからもう戻っても大丈夫。


「モモお姉ちゃん、僕を置いて行っちゃうの? 寂しいよ、一緒に居てよ」


 さっき事情を知ったパーズは私が居なることが悲しいみたい。


「ごめんね、これをしないと帰れないんだよ。パーズはここで待っていて」


「ううう、悲しいけれど、待っていることにするよ。早く帰って来てね」


 パーズはポロポロ涙をこぼしているよ。


「うん、絶対そうするよー!」


 私はキュっと抱きしめて覚悟を決めたんだ。

 でも御主人を置いて行かなきゃいけないのはちょっと残念。

 寂しいけど頑張るよ。


「それじゃあ行ってきまーす!」


「行って参ります」


 準備を終えた私とエリオは皆に手を振って二人で町に引き返すの。

 いきなり現れたら不自然だからってゆっくり歩いていったんだ。

 到着した頃にはすっかり暗くなっていて家々に灯りが灯っているよ。

 もう王様のパーティも終わったみたい。


 あのお料理が食べられなかったのはとっても悔しいけれど、それは全部グリザリィにぶつけてやるんだ。

 さあ、その尻尾を掴んであげる。

 ニヤリッツ(エリオ)はグリザリィの周りをコッソリ調査し始めたの。


 人々が居なくなり、他の司祭達も居なくなった夜の時間。

 私とリッツは教会の屋根の上で見張っていると、ようやく動きがあったみたい。


 中に居たグリザリィが教会の奥へ奥へと歩いて行くの。

 そこはもう壁があるはず、だけど全然歩みは止まらない。

 でも、外に出た訳じゃないんだよ。

 教会の外にはグリザリィの姿はないんだ。


「グリザリィが教会の外に出たっぽいけど、なんか出てないみたい?」


「なるほど、これは隠し通路があるのかもしれませんね。リスクはありますが調べてみるのも悪くないかもしれません。行ってみますか?」


「うん、行こう!」


 扉は鍵もかけていないの。

 簡単に侵入したけれど、やっぱりグリザリィの姿はない。

 一度見た通りに立派な建物。

 今は薄暗くて建てられた像がちょっと不気味に見えるんだ。

 グリザリィが移動したのはたぶんその辺りかなぁ。


「入り口はありませんね。どこかに仕掛けがあるのかもしれません、探してみましょうか」


「はーい、すぐに見つけるよ!」


 近くの像をガサガサゴソゴソ探してみるけど、中々見つからないよ。

 実はもっと遠くにあるとか?

 入り口の方をカサカサ、天井をカサカサ、床の隅々をカサカサカサ。

 やってもやっても隠し通路が開く気配は全然ないの。

 もういっそスッパリ切って見つけちゃおうかな?

 ペンダントにしてあったキャットスレイヴを剣にすると、


「ニヤ様、まだ証拠が出るとは限りませんし、出来れば穏便に!?」


「そっかー?」


 リッツにガッチリ止められちゃった。

 どうやらまだまだかかりそう。

 急いで急いで頑張って、そうしている内にグリザリィの気配が戻って来たの。

 このままじゃこっちが見つかっちゃいそう。


 今日はもう無理ってことで馬車に戻った私達。

 そこでレマの作り置きしてくれていた美味しい料理をいっぱい食べたの。

 お腹も心も満足して、明日に備えてお休みしたよ。

家猫のモモ

異世界に転生して人間となる。


御主人ごしゅじん(ヒロ)

人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。


エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)

レマ・トマトン(旅の同行者、料理人)

ナヴィア・ドライブズ(旅の同行者、馬車の運転手)

リシェーリア・パラノイア(プリスターの司祭今は味方?)


ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)


王子シャーン

王女ルシフェリア

王女ラヴィーナ(格闘が得意)

王女イブレーテ(長女)

王子パーズ(恋焦がれる男の子)


シャーンのお母さんテルナ

ウィーディアの女王。


グリフ・リスマイヤー

シャーンやテルナの付き人。


フルール・フレーレ

ラヴィーナの師匠で格闘家。


青鎧のブルース・グライブス

教育係アリア・ファイリーズ

モモの教育係。


赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)

桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)

冒険者、エルフの姉妹。


ベノム(ブレードバード隊、隊長)


ルーカ(孤児)

プラム・オデッセイ(里帰り中)

ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)


クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)

シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)


剣と魔法の世界 ミドレイス

翼の生えた子供 ウリエリア

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