国王さま?
城の中に飛ばされて私達。
窓から脱出しようとしても閉まっていて壊れたりもしないんだ。
魔法かなんかで強化されているのかも?
出口が分からないまま彷徨い続け、用具室に隠れた私達。
そこでメイドさんと出会って、何やかんやで情報を教えてくれたんだ。
それによると王様はトレーシアを溺愛しているらしくっておかしな事なんてしないって云っているよ。
だから私達はそれを確かめるために王様の部屋を訪ねたの。
「モモ様、あそこに行ってみましょう。いつまた誰かが来るとも限りませんから」
「うん、そうだねー!」
行くべき場所は一つしかない。
人の気配は……微かにあるね。
薄い布をするりと抜けてベッドの中を覗き込むと、髭の男の人が眠っていたの。
服は立派ではあるけど、かなり痩せこけていているんだ。
この人が王様かなぁ?
うーん、リザリアに特徴を聞いとけばよかったね。
私は男の人をゆさゆさしてみたよ。
「……起きないね?」
結構強めにやったんだけど、目を覚ましてはくれないよ。
「薬物か、もしくは呪術的な何かで眠らされているのかもしれませんね」
(モモならどうにか出来るんじゃない?)
「うーん、やってみるよー」
回復するかはやってみなくちゃ分からないよね。
私は白猫ちゃんを呼び出して、この人に治療を行ったんだ。
もしも呪いのようなものだったら治らないんだけど、今回は……。
「うぅ……」
ほんのりとうめき声。
これは期待できるかも!
白猫ちゃんを応援しながら見届けていると、王様がパッチリと目を覚ましてくれたの。
「お、お前達は……曲者か!?」
グッと立ち上がろうとしても中々上手くいかないみたい。
まだ弱り切っているからかな。
「余の命でも狙いに来たのか! ……うっ、ゴホッ、ゴホッ!」
王様は咳き込んで苦しそうだよ。
私達は敵意がないことを示すように落ち着いてくれるのを待ったんだ。
「失礼ですが、我々はウルファルド国王陛下のお顔を存じないのです。ご本人で間違いありませんか?」
「如何にも、余はウルファルド十一世である。貴様達は賊ではないというのか? ならば名乗れ、何者なのだ」
「私はモモだよー! こっちは御主人なの!」
(こんにちは、僕はヒロだよ!)
名乗れって言われたから私は元気に名前を告げたよ。
「いや、モモ様、流石に他国の国王かもしれないお方にその態度はどうかと思われます。僕……いえ私はエリオ・ジ・エイグストンと申します。我々はウィーディアより遥々ブレイズバトルに参加しに参りました。大会途中、様々なトラブルに見舞われまして、不測の事態故にこうして失礼を承知で面会しに参ったのです。本来ならば正式な手続きを踏むところですが、どうかお許しいただきたいです」
エリオは兵士らしくちゃんと御辞儀をしたりしているの。
エリートだとか聞いたけど、やっぱりちゃんとしているんだね。
「ブレイズバトル、我が国の大会のことか。ウィーディアの方がどのような要件か。まさか不正をして勝たせろなどと言うまいな?」
「いえ、それはすでに終幕したようでございます。我々がお聞きしたいのは、貴方様がトレーシア様を人体実験するように御命令されたかどうかです。我が国の技術、キメラ化の力を使って隣国に戦争を起こそうとしているのかと」
「トレーシアを実験体、戦争とは何の話だ!? トレーシアに何があった!?」
王様が驚いている。
「どうやら事情を御存じないようで。それでは色々と説明をせねばなりませんね」
「うん、でもその前に、もうちょっと頑張らなきゃ!」
私は外に集まるのは多くの気配を感じたの。
ここは王様の部屋だというのにノックすらなく剣を抜いた兵士が押し寄せてくるんだ。
ちゃんと閉じておけばよかったね。
「貴様達、入室を許可した覚えはないぞ! 下がるのだ!」
王様が云っても止まってはくれないの。
「目覚められたのですか、ならば仕方がない。侵入者め、王を殺害するとは許されざる愚行。この場で成敗してくれる!」
しかもこの言い分。
悪人丸出しだよ。
「な……お前達、何を云っている!? 余の命令に従わぬか!」
王様も命令に従わないなんて思ってもいなかったみたい。
でも私、こんな人達に負けないから!
「たああああああ!」
「ぐはあああああ!?」
キャットスレイヴの一振りで弾き飛ばして部屋の中をお掃除したんだ。
ちょっと多かったけど大丈夫!
もう扉はガッチリ閉じたから簡単には入ってこれないよ!
「なんということだ、余が眠っている間に一体何が……」
「首謀者の一人ならば申し上げることができます。奴の名はグレゴリー。トレーシア様を人体改造した張本人です」
「グレゴリー、この混乱を奴が起こしたというのか! 今考えればその兆候があった気がする。やはり信じるべきではなかったか。だとするならば、奴を支持していた者が怪しいな。考えたくはないが、その筆頭は、我が息子、時期王位継承者であるユリウスに違いない。奴に心酔する兵士も支持する貴族も多いからな」
「と、するならば、ウルファルド陛下はどういたします? 息子だからと見て見ぬふりをなされますか? それとも、この混乱を起こした悪人として裁かれますか?」
「……無論、この国の王として止めざるを得ないだろう。戦時となればどれほどの民草を泣かせることになるか考えたくもないわ。しかし、今の余は何の力も持っていないに等しい。虫のいい話ではあるが、貴方方に協力を仰ぎたい」
「どういたしますかモモ様」
(モモの好きにしてもいいんだよ)
エリオと御主人、王様も私を見てくるんだ。
うん、答えは決まったよ。
「もっちろん、私、戦うよー! 悪い人なんかには負けないもん!」
「では決まりだな。王の名において、この城内における全ての行動を免除しよう」
「うん、分かった。でもここはどうするの? 王様はやられちゃうよー?」
「心配は要らぬ。余を閉じ込めたこの場所には余を護る結界がある。目覚めた今ならそれを起動させることも容易なのだ。さあ行くがよい他国の英雄よ、この国の未来を照らしてくだされ」
「うん、じゃあ御主人とエリオはここで待っていて! 私、頑張って来るから!」
「分かりました、陛下の護衛も承ります。モモ様、どうぞ、ご無事で」
(僕モモが帰ってくるのを待ってるよ! 絶対帰って来てね!)
「うん!」
私達はキャットスレイヴの封印を解いて飛びだしたの。
当然、待ち構えたように剣を振り上げる兵士達。
それが何百人だろうと、負けないから!
「大逆人どもめ、大人しく裁かれろおおおお!」
もう逃げる必要はないの。
私達は悪人じゃないし、王様の頼みも聞いたんだから!
「にゃあああああん!」
剣を、鎧を切り裂いて全員無力化させてあげたんだ。
素手で襲って来ても無駄だからね。
私はほぼ全員をポンポン投げ飛ばして戦意を喪失させたんだ。
増援は何故か来ないの。
ここが王様の寝室だから?
ほとんどの人は武器を求めて逃げ出すけれど、ここに居るリーダーっぽい人だけは捕まえたんだよ。
「ねぇねぇ、ユリウスって人のところに案内してくれるー?」
「は! 悪人が何を云っている!」
自分が悪人だと思ってないような言い方だけど、さっきの行動で丸分かり。
「えー、どっちが悪人なのかなぁ? 話してくれないのー?」
私が爪をチャキチャキしながら詰め寄ると、
「クッ、拷問でもする気か。こうなれば……ユリウス様、万歳!」
この人は隠し持っていた小さな小瓶をグッと飲み干したんだ。
男の人は苦しがって泡をふきはじめたの。
だけど、数秒あれば間に合うよ!
「死なせないよー。猫猫召喚……癒しの猫ちゃん!」
私は白猫ちゃんを呼び出して一瞬で回復させてあげたんだ。
「ぐぁ……。し、死ぬことさえ出来んのか。なんということだ……」
「案内してくれるー?」
「……いいだろう、どの道、王子に勝つことなどできはしない。あの方には超絶なる魔人どもがついているのだから」
魔人って、トレーシアと同じように改造された人達かな。
戦うしかないなら、そうするしかないよね。
私は捕まえた男に案内されながら道を進んで行ったの。
当然襲ってくる人達は返り討ちにしてあげたんだ!
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




