コロッセスの北門
トーレシアは自分を化物に変えたグレゴリーに迫る。
もう護る部下も居なくてどうしようもない。
でもね、トレーシアが斬る前に、背後から来たブラッディが斬り捨てちゃった。
彼は主人が化け物になってもその忠義を失わず、ちゃんと目を見ながら説得したんだ。
私の力が役立つかもって白猫ちゃんを呼び出して治療を行うと、ボロボロの化け物からは竜のお姫様みたいになったよ。
まあそれでもマシだからっていう感じでお礼を云われて、二人からは亡命をしたいっていわれたの。
それでゼノンは関わり合わない方が良いから帰り支度を進めてくれって云うけど、エリオがまだ戻ってきていないんだ。
私は北の門に向かってみることにしたんだよ。
ピョンピョン進むと町を囲むように伸びる大きな壁が見えてくる。
そこにはめ込まれるようにしてあるのが北から出られる門。
エリオが向かった北門だよ。
でも、ここは平和な雰囲気はないんだ。
門の詰め所からドンドン出てくる武装した兵士達。
これはやっぱり戦争の為に出てきたの?
それとももしかして私達を捕まえるためだったりして?
うーん、どっちにしろエリオを助ける為にはあそこに突入しなきゃいけなさそう。
御主人は待っていてもらった方が良かったかなぁ?
ちょっと顔を見つめると、
(僕は大丈夫だよ。モモと一緒だもん)
やっぱり御主人はすごいなぁ。
考えていることまで読まれちゃった。
「うん、一緒に行こうね!」
私は頷いて二人で北の門に近づいたんだ。
門の見張り台の人達にはまだ気が付かれていないから、こっそりこっそり壁に張り付いて二人の見張りの背後に回ったよ。
聞き耳を立てると丁度声が聞こえてくるの。
「そろそろブレイズバトルが終わった頃か? こんな見張りなんて放って置いて見に行きたかったぜ」
「馬鹿言うなよ、命令違反なんてしてみろ、相棒の俺まで首を飛ばされちまうわ!」
「冗談だよ冗談。そんなに怒るなって」
他愛無い会話が続いている。
何か情報があったらって思ったけれど、これはちょっと無理っぽい?
もうちょっと聞いていると。
「そういえばお前知っているか? 何でこんな所に大量の兵士達が集まってるのかってさ」
「ああ、それなら知っているよ。何でもコロシアムを使って実験体の性能チェックをするらしい。実際の戦いでデータを計測するんだってさ。それで上手くいっていれば戦争の準備を始めるそうだぜ」
「戦争か……俺個人としては殺し合いなんてしたくないんだけどな」
「仕方ないだろ、上の命令は絶対なんだから。ま、俺達の様な門番にお呼びがかかることなんてないだろうけどな」
この人達も普通に出会えたなら良い人達なのかもね。
戦わないように祈っておくよ。
見張りの二人が去ろうとしているその時に、この場所に駆け上がってくる人物が。
この二人と同じ鎧だから見張りの仲間なのかも?
「伝令だ、ブレイズバトル会場でグレゴリー様が殺害されたらしい! しかもそいつらはトレーシア様まで手にかけたとか! やったのはウィーディアの連中だ。上からの命が出るまでこの町からは誰も出すなよ!」
『なんだって!』
思わず叫びそうになっちゃった。
トレーシアは全然無事だし、グレゴリーを倒したのはブラッディだし、私達は関わっていないんだけど。
きっと説得したって無駄だよね。
「そういえばウィーディアから来たって奴が封書を持って来やがった。あいつはどうするんです? 城から確認が出来るまではと屯所の奥に軟禁してありましたよね?」
「奴等の仲間というのならば始末するのみ。お前達も決して油断せぬような!」
「ハッ!」
エリオはこの場所に閉じ込められているらしい。
今まで気配が分からないのは魔法か何かかけられていたのかな?
とにかく場所が分かったのは幸いだね。
結局突入しなきゃいけないみたい。
私達は隠れ潜みながら入る隙を伺ったの。
でも出たり入ったりで人が居なくなったりしないんだ。
これは強行突破しかなさそうかなぁ?
案外それは得意だけれど、帰りはかなり大変そう。
それでも行かなきゃ終われないね。
「それじゃあ行くよ、御主人、しっかり摑まっていてね」
(うん、いつも通りだね!)
私は開いている入り口に一気に駆けだすの。
「何かが……侵入者だあああ!」
その声は風に乗って遠くから聞こえてくるよ。
誰の目にも映さない、気づいた時には通り過ぎた後なんだ。
でも中も兵士でいっぱいなの。
さっきの声に従って剣を手に持っている。
着地した一瞬後、気づいた皆は襲ってくるよ。
全員倒すのは簡単だけど、外の人達が雪崩れ込んできたらグチャグチャの戦場になりそうだね。
今はそれよりエリオを助けにいかなくちゃ。
私はバンと開け放った扉の先に進んで行くんだ。
道の先、二つの扉。
見張りさえもいないみたいならどっちも両方開けちゃうよ!
スパーンと切り裂くと中の状況が見えてくる。
一つは鉄格子がある牢獄、一つは色々な像が設置されている祭壇?
私が進むべきなのはきっと牢獄の方だよね?
悩まずにヒョイっと飛び込んでエリオの姿を捜したの。
連なり合う空の牢屋、その奥の奥。
「モモ様!」
「あー、見つけたよー!」
さび付いた牢屋に閉じ込められているエリオの姿。
意外と元気そうでなによりだね。
(モモ、急がないと人が集まって来ちゃうよ!)
「うん、すぐやるよー!」
硬そうな鉄の檻も私にかかればスッパリなの。
大きな音を立てて落ちる鉄格子。
エリオが通り抜けられる穴が開いたよ。
「こっちだあああ、こっちにいたぞおおお!」
すでに牢獄の入り口には大勢の兵士が集まり入ってこようとしているよ。
あと数秒もしない内に埋まりつくしちゃいそうだけど、私はエリオを掴み上げ、ダッと壁を蹴り進んだの。
「たあああああ!」
そのまま力強く、力いっぱい、力の限り、その波を押し返すんだ!
先頭の人は突然のことに反応できず、バランスを崩して後ろに倒れたの。
狭い通路の中、それだけで人の足は止まったよ。
進んで来る人達とぶつかりギュウギュウ詰めだ。
攻撃しようにも自分達が邪魔をして動くことすらままならないの。
今の内ってその上を進んでも出口の扉は狭すぎる。
倒しちゃえば何とかなりそうではあるけれど、命令されているだけなのに流石にちょっと可哀想かなぁ。
(モモ、ブラッディが云っていた転移装置ってあっちのやつじゃない!?)
「行ってみるー!」
御主人が云っているのは分かれ道にあった祭壇だよね?
行く道がないのならそっちに行っても良いかもしれない。
あそこはちょっと広いから戦うのにもむいているし。
そして移動してみたけど、あるのは色々な像と、床に描かれた魔法陣だよ。
たぶんこれ……なんだけど、どうやって使えばいいんだろう?
とりあえずピョ―ンと飛び乗ってみると、魔法陣が輝き出したの。
「逃がすなああああ!」
って皆がまた雪崩れ込んで来ようとしている。
「逃げちゃうよー!」
ベーって舌を出すと剣が投げつけられちゃった。
そのぐらいなら私は平気。
パシッと受け止め……る前に景色が代わっちゃったんだ。
ここも同じ像がある部屋みただけれど、さっきの部屋よりはすっごく広いよ。
「あなた方は一体……」
それと、机で書きものをしている書記官みたいな人が驚いているの。
うーん、どう答えたらいいんだろう?
「こんにちはー、モモだよー!」
とりあえず、私は元気に返事をしてみたよ。
「あ、僕はあの、エリオ・ジ・エイグストンといいまして……先ほど文を届けたものですが……」
(モモ、怪しまれる前に逃げた方がいいんじゃない?)
「はーい!」
私はエリオを掴んだままこの場所から脱出したよ。
背後からは仲間を呼ぶ声がするの。
でもそんなのは待っていられないから。
扉を潜ると、ここはお城なのかなぁ?
立派な柱、立派な絨毯、立派な置物、なんとなくだけどウィーディアのものと似た雰囲気を感じるよ。
透明な窓ごしにはこの国の町並みが見渡せるんだ。
ここから帰れるのかは分からないけど、あっちに戻るよりかはマシかもしれない。
うーん、とにかくここから脱出しないとだね。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




