暴虐された姫
トレーシアとの戦いで剣がポッキリ折れちゃった。
でもまだ戦う手段は残ってる。
自身の爪と、受け止める為の剣の鍔。
盾としては小さいけれど、私ならできるはず!
ギィンと防いでシュバっと切って戦いは続くんだ。
奇をてらった攻撃で傷を負わせ、ちょっと優位になったんだよ。
押して押して押しきって、私はついに勝ったんだ。
喜びも束の間、グレゴリーが動き出したの。
大量の兵隊を使って私達を囲んだんだ。
でもね、試合じゃないなら負けたりしないよ。
キャットスレイヴで大量撃破。
逃げようと思ったら、今度はトレーシアが暴走状態になっちゃった。
「グレゴリイイイイイ!」
暴れ回るトレーシアは自分の顔にあるフードを引きはがし、獣のような声をあげてグレゴリーに向かっているよ。
今まで見えなかった感情が爆発しているの。
「まさか、意識が戻ったのか!? バカな、ありえん!」
「わらわをこのような姿に、ああああああああ!」
悲しみ、怒り、色々なものがごちゃ混ぜになってそれを全てぶつけようとしているんだ。
勝手にあんな姿にされちゃったらそれは絶対怒るよね。
痛めた足を引きづりながらもグレゴリーの居る場所に向かっているんだ。
私には止められないし、止める理由もないの。
「奴を止めろおおお!」
と叫んでももう殆どの兵士は倒してあるの。
グレゴリーを護るような人は居ないんだ。
私もあの人を助ける気はないよ。
今は皆と逃げることが先決だから。
「トレーシア様あああああ!」
入場口に避難していくと私達の代わりに出て行く人物が。
あれは安静にしていたブラッディなの。
握られた剣が狙うのは、当然。
「ぎゃああああああ!?」
憎い敵のグレゴリー。
背後からバッサリ、トレーシアが斬る前に、一回で終わらせたんだ。
もう逃げる必要はないのかも。
私はちょっとだけ成り行きを見守ったよ。
「トレーシア様、このような者の為にお手を汚されまするな。必要ならばこの手を使ってくださいませ」
例えどのような姿であってもブラッディは狼狽えたりしていないの。
「ブラッディ!? み、見ないで……。わらわは、もう」
「関係ありません。例えどのような姿になられようと私にとって姫は姫。何も変わりはいたしませんとも」
今では化物のようなトレーシアを見つめる真っ直ぐな瞳。
全然ブレたりしないんだ。
「しかしながら、トレーシア様が望まれないというのならば、このマントをお使いください。そのお姿が元に戻るその日まで」
「……ありがたく、使わせていただきます」
トレーシアが手渡されたマントを受けとったよ。
歓声は聞こえない。
誰も彼も顔を見合わせたりして静かに見守っているだけなんだ。
それはそう、決勝戦はもう終わり、姫様と思っていた相手が化け物で、その化物が本物の姫様で、主催者グレゴリーは大暴れだし、何が何だか分からないよね。
私だって全部知っている訳じゃないもん。
説明も出来ないから、もうこの状況を変えるしかない。
「私ちょっと行ってくるー!」
ピョ―ンと飛びだし向かったのはトレーシアの前。
ちょっとだけ警戒されているけど、流石に武器を向けたりはしてこないよ。
「恩義のある方ですが、あまり姫に近づかないでいただきたい。姫が怯えていらっしゃいます」
さっきまでの威勢は何処へ行ったのって感じでトレーシアは怯えている。
戦った私の事は覚えているのかな?
でも争いに来たわけじゃないんだ。
「できないかもしれないけれど、もしかしたら治せるかもって思ったの。ねぇ、私に任せてみて」
「治す? ……まさか姫を治せるというのですか!? 本当に、本当に治るのですか!?」
「だからやってみないと分からないよー。やってみたことないんだもん」
白猫ちゃんは呪いとか治せなかったもんね。
「姫、どういたしましょう?」
「もし、治るというのならば試したい。是非、お願い致します!」
「じゃあ決まりだね。さあ、出番だよ、猫猫召喚……癒しの猫ちゃん!」
空中に現れた渦から飛びだした白猫ちゃん。
ニャーと鳴いてトレーシアを見上げたよ。
ピョーンとその肩の上に飛び乗ると、その頬をペロッと一舐め。
変化は……。
「あああああああああああああ!?」
数秒後に起こったよ。
トレーシアは痛みに身もだえるようにうずくまっているの。
「姫様!? 一体何をなさったのですか!?」
「白猫ちゃんに治療してもらっているんだよ。これは治るのかも?」
前にもこんなことがあったもんね。
きっと大丈夫だよ。
期待して待っていると、トレーシアの顔の皮膚がボロボロと落ち始めたの。
現れるのは人の皮膚。
けれど完全にそうとは言い切れない。
色は薄いグリーン、ところどころ鱗のような物も残っているし、額には小さな角が現れたんだ。
でも、ブツブツグチャグチャな皮膚じゃないの。
最初の顔は分からないけれど、今でも充分に綺麗で竜のお姫様みたいだよ。
「姫のお姿がまた別のものに! これは、どういうことなのですか!?」
ブラッディが仕えているトレーシアの急な変化に驚いている。
でもあんまり嫌そうな雰囲気じゃないかも?
どうしてこうなったのかは私にもわからないけど、白猫ちゃんが言うにはグチャグチャだったものが混じり合ってちゃんと一つの生物になったんだって。
「うーん、ごめんなさい?」
でもこれ治ってないんだよね?
やっぱり謝るしかないかなぁ。
「それで済む話ではないでしょうに!? どうしましょう姫、何か他に方法は!?」
「お黙りなさい。それでも、それでもです。先ほどよりは随分マシになりました。あれはもうただのモンスターでしたから。ブラッディ、モモ様にお礼を申し上げなさい」
「はっ、その通りです! ありがとうございます、モモ様!」
トレーシアに云われて素直に従っているよ。
絶対服従なんだね。
そしてトレーシアは自分の顔をマントで覆ったんだ。
「とにかくこの場所では人目がありすぎますので、入場口の方へ移動しましょうか。トレーシア様も、そこで詳しい話をお話しください」
「そうだね」
「ええ、そういたしましょう」
私達は誰にも邪魔されない控室に戻ったよ。
今、皆がトレーシアに挨拶とかして話を始めているんだ。
「――そう、ブレイズバトルが始まる三日ほど前、グレゴリーから相談があると面談して、お茶を飲んだところで急な眠気が襲って来て、気が付いたら牢獄の中。あの日、わらわはとてつもなく恐ろしい目に遭いました。具体的には申せませんが、化け物のようにされたのはそれが原因なのです。しかし、まさか父様が命ぜられているとは思ってもいませんでしたが……」
「このブラッディもまさか、と思いました。グレゴリーからの呼び出しで来たこの場所にトレーシア様が居られたのですから。行方不明になっていたのに何故。それはそうですね、自分で仕向けていたのですから。王とあの方が何をなさっているのかは明白です。ウィーディアの秘術、その完成具合を試しておられたに違いありません。それを使って何をなさるのか、答えは一つしか存在しないでしょう。他国への侵攻、それしかありますまい。ですので、私達を亡命させていただきたいのです」
「ちょ、ちょっと待ってください。こちらの姫と相談させていただきますので」
ふむふむと聞いていたゼノンが二人の言葉を制するように手を前に。
「御主人、亡命ってなに?」
(ウィーディアで暮らしたいってことかなぁ? ここに居ても危ないもんね)
「ふーん?」
私としては全然構わないんだけど、
「ラヴィーナ姫様、急いでこの国を脱出されることをお勧めします。これ以上関わり合いになるのはひかえるべきかと」
ゼノンはあんまりそうじゃないみたい?
「なんでですか、可哀想じゃないですか?」
「この国の王が隣国に戦争を仕掛けようとしているんですよ。そこにウィーディアが関わって良い訳ないでしょう! モモ様も帰り支度を進めましょう!」
「帰るのはいいけど、エリオはどうするのー? 北の門に行ったっきりだよねー?」
あれから戻って来ないんだよね。
やっぱり捕まっちゃっているのかな?
「……そういえばそうでしたね。しかし、あの者の身柄はかなりの高確率で拘束されているはず。下手に助けに行くよりはこのままおいて行くのも手と言えば手なのですが……」
「私ちょっと見てくるよー。御主人いこー!」
(そうだね、折角知り合ったのに置いて帰るなんて嫌だもんね)
「モモ様、ちょっとお待ちを、まだ話が……!」
止められるのを聞かずに私は控室を飛びだしたの。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




