国で起こった大謀反
御主人のお見合いを引き受けた私。
グリフと案内されてアリアを一緒にグリマンという人が住む家に向かうことに。
結構ゴリラ、グリマンに出迎えられて客室に案内されるとすごく美味しいお菓子とお茶を出してくれた。
でも二人はいきなり寝てしまい、私も二人と一緒に眠りたくなった。
気が付いたら牢屋の中。
グリフを起こし、脱出方法を考えているとグリマンがこの場所に。
なんか今の王が気に入らないから自分が王になりたいとか。
それだけ説明だけして何処かへ行ってしまった。
見張りもいないしキャットスレイヴの形状変化により色々な形の鍵を作りついに脱出を果たした。
何も無い通路を抜け出て飾りのある屋敷の内部。
使用人や執事が何ごとも無さそうに掃除を続けている。
「事情を知らぬのか? ならば居場所を尋ねるとしよう。おい、そこの者!」
グリフが声をかけると、掃除をしていた全員が一斉に振り向いた。
その顔は何も考えていないような無表情な感じ。
「グリマンの居場所を尋ねたい、奴は何処へ向かった!」
『……お客様、ラグルトン様はお出かけです。御帰還になりましたらお伝えいたしますので、それまではこちらで、オモテナシイタシマス……』
一人二人と立ち上がり、その肉体がバリバリと割れていく。
現れたのは前に戦ったドレッド・デーモンと同じ姿だ。
人の中に入っていたとは思えないぐらい大きい。
「おのれ、この屋敷は化け物だらけか!」
(グリフはアリアを背負っているもし、モモがあれを倒さなきゃ不味いよ!)
「うん、がんばる!」
一度戦っているし、あんな相手は楽勝だ!
私は爪を……でも折角だからこの剣を使ってみようかな。
さっきもこれのお陰で脱出できたし。
私は小さなペンダントから形状を大きな爪のような剣に変えた。
使い心地は……。
「うわー、すっぱりー!」
案外軽く、自分の切りたい部位に移動したりして切れ味も爪とほぼ同じかも。
これはすごく便利!
壁を蹴り、天井を蹴り、たまに普通に蹴り飛ばし、キャットスレイヴを振るう。
バラバラになったドレッド・デーモンが灰のように散らばりこの世から消えていった。
「おお、流石はモモ殿ですな。しかしこんな奴等が町に出たらどうなることか。無垢な人々では相手にもなりますまい。城も気になりますが、ここは一匹残らず倒してしまいましょう!」
「うん!」
この屋敷の広いエントランスホール? という場所に出ると、私達を待ち受けるようにドレッド・デーモンの大群が。
三十近くはいるけれど、でもそのぐらいなら大丈夫!
さっきと同じように軽く倒し、この屋敷の敵を殲滅した。
(お城に急がなきゃね。シャーンやルシフェリアも心配だし)
「そっか、二人も危ないんだ。じゃあ私、先に行くね! グリフ、御主人とアリアをお願いねー!」
「む、それは勿論、御主人殿とアリア殿はこの命に代えても御守りいたします! こんな場所に連れて来てしまった責任がありますからな!」
グリフは真剣な顔で頷いている。
(モモ、気を付けてね)
「うん!」
そして私は屋敷を走り出た。
庭に居た魔獣の類を切り倒し、進んだ町中はちょっと混乱状態だ。
人に被害はないけど、空を飛ぶドレッド・デーモンの群れがお城へと向かっている。
一気に落とすつもりなのかも。
私は足を加速させ屋根伝いにお城の前に。
もう正門は開け放たれ、護っていた門番はドレッド・デーモンと戦いを続けていた。
「この程度、我等の敵ではない。皆よ、訓練の通りに動くのだ!」
『応!』
っと、練度の高い兵士の皆は怯むことも無い。
一匹も倒せていないけれど、結構善戦している。
「えーい!」
私は少しだけ手助けしてお城の中へ。
でもそこも同じようなものだった。
城内を徘徊するドレッド・デーモンや大角を持つ魔獣を相手に、武器を持って走り回る兵士達。
怪我をしている人も多いけれど、ちゃんと戦えている人も多い。
五人、十人で囲んで攻撃をしかけている。
でもドレッド・デーモンの防御力を超えるのは難しそうだ。
切り抜けるように五匹を倒し、
「ねぇ、シャーンとかルシフェリア知らない?」
私は倒れた一人に声をかける。
「モモ様、たぶん、玉座の間に……」
「そっか、ありがとう!」
私は猫の魔法で白い猫ちゃんを呼び出した。
怪我をした人を癒すのを見届けず、玉座の間に走っていく。
到着したその場所にはシャーンやルシフェリア、そのお母さんを囲むようにして兵士や魔導士が陣を組み守りを固めている。
相手にしているのはドレッド・デーモンの大群と、その中央に立っているグリマンだ。
「王を名乗る小娘よ、そろそろ諦めてくださると嬉しいのですが。俺も暇ではないのでね。さあ大人しくその座を明け渡せ!」
「メギド様に頼まれた王の座、貴方になどに譲る気はありませんね。それに、この程度の相手に負けるものですか!」
突然部屋の中に突風が吹いた。
バキバキと壁や天井を壊すぐらいの危ないものだ。
これはもしやお母さんがやったもの?
そんな攻撃が大群に向けられ、ドレッド・デーモンを含めて一気に殲滅しようとしていたけれど、
「ふっ、途轍もない風の力、だが知ってしまえば対策はできる。そんなものは、無効だああああ!」
グリマンやドレッド・デーモンの目の前で見えない何かが弾け跳ぶ。
「……ですがこの程度ではありませんよ!」
再び放たれる暴風。
さっきよりも明らかに強いものだけど、
「無効無効無効無効無効! 無効だああああ!」
それも完全に防がれてしまっている。
やっぱり不利っぽい。
だったら私が加勢するだけだ!
「たー!」
俊足の移動とキャットスレイヴの力が合わさり、長く柔らかなムチのような攻撃を無尽蔵に飛び交わせる。
股の下、背中、頭の上、時には正面から、時には刃が分岐させた。
避けられるような動きではなく、絶対に防ぎようもなく、ドレッド・デーモンは灰となり消えていく。
残ったのはグリマンだけだ。
「モモお姉ちゃん!」
「モモ、助けに来てくれた!」
私の姿にシャーンとルシフェリアが喜んでいる。
怪我もなさそうだ。
「モモさん、助かりました、早くその男を捕らえるのです!」
「うん、すぐやるー!」
そしてお母さんの指示に従い、私はグリマンと向かい合った。
「貴様、あの牢からどうやって脱出を!?」
でも相手は人間。
殺すのはダメだし、抵抗できないように縛ってしまおう。
「ぬぅ!?」
一瞬でキャットスレイヴをロープ状に変化させ、グリマンの体にグルグルと巻きつけた。
キチキチでギュウギュウだからたぶん外せない。
「勝ったー!」
たぶんこれで勝利!
「ええモモさん、素晴らしい活躍でした。また新しいご褒美を用意しなければですね」
「モモお姉ちゃん、ありがとう!」
「モモ、来てくれて嬉しい」
「わーい!」
お母さんに褒められて凄く嬉しい。
それにシャーンとルシフェリアにも感謝されていい感じだ。
「……クッ……ククク、この程度で勝った気になるとは、愚かしい。お前達に真の絶望を与えてやる!」
でもグリマンの頭がビキビキと割れ、ズルっ何かが飛びだした。
ベチャっと天井に張り付いた液体が人の上半身となり、つり下がったようにして笑っている。
「貴方は確かに人間だったはず。欲のために人であることまで捨てましたか!」
「ははは、お前に云われたくはないわ。テルナ・グリフィス・ウィンディア。いやテルナ・エレストラムよ。お前こそ人の身を捨てた化物ではないか! あの大戦の時、魔物と融合してその力を得たのは知っているぞ!」
「あの時は仕方なく……言っても無駄ですね。ならばこの手で決着をつけてあげましょう」
お母さんの手から風の力が放たれた。
でも結果は……。
「ふん、決着とは? 風属性が効かぬこの身に何を粋がっておるか。自らの手で首でも差し出すつもりなのか? フハハハハ!」
全く効いてはいないみたい。
「……クッ、面倒な! 風が効かないというのなら別の属性を試すのみ! 親衛隊、魔導隊、相手は液体、凍らせてしまいなさい!」
『ハッ!』
お母さんの指示で氷の魔法が飛ぶ。
離れていても冷気を感じるぐらいだ。
私もちょっと嫌かもしれない。
「ククク、多少は効くと言ってやりたいが、この程度の威力ではな。やはり無駄だったようだ。フハハハハ!」
それでもグリマンを凍らせる威力はでなかった。
これを続けていても倒せそうな気配はない。
……だったら私が仕留めてやろう。
もうあれは人間じゃないし、御主人も許してくれるはず!
私は一気に動き出すと、獲物めがけて一直線。
キャットスレイヴと爪の無限切り裂き攻撃はグリマンの体をバラバラにしてビシャっと床に落としてやった。
「今度こそ勝ったー!」
「いえ、まだです、モモさん油断しないでください!」
「その通りだよ」
落ちた液体から声が。
同時に長細い針のようなものが私に伸びてくる。
体を逸らして躱したけれど、私の攻撃も効かないみたい。
「素早くて面倒ではあるが、攻撃が効かないのならどうにもならないよな? これからは一方的な虐殺ショーだ!」
そしてグリマンの体から無数の棘が伸びる。
鎧や盾を簡単に貫くほどに鋭いものだ。
シャーンやルシフェリアを庇い何人かが負傷している。
何にも効かないこいつを倒すにはどうすればいいのか。
困った、困った……。
私は皆を助けたいのに!
そんな想いが光りを宿す。
私の心に新たな輝き。
「猫猫召喚、幸せの黒猫ちゃん!」
言葉を紡ぐと黒猫ちゃんが空中の渦から現れた。
ちょっとグリマンを見つめると、理解してニャーと鳴く。
この子は相手の弱点を見抜く分析官だ。
「うん、わかったー!」
黒猫ちゃんが教えてくれたのは、液体の中に隠れた小さな玉の存在。
きっとそれがあいつの弱点!
知ってしまえば私は見抜ける。
それが何処にあり、どのぐらいの大きさなのかも。
常に揺らぐ液体の中、全く動かない部分が一つ。
「ふん、そんな猫が何の役に立つというのか。もう良い、八つ裂きにしてやろう!」
八本の触手がうねるように向かってくる。
右、左、前、後ろ、上下からも休む暇もなく。
でも私はただ前に、あの場所に。
「にゃあああああん!」
シュッと切り抜けグリマンの背後に立つ。
握り込んだ小さな玉。
「お、お前、何故それを!? か、返せえええ!」
グリマンが怒りを向ける。
飛んで来る殺意、でもそんな時間は与えない。
握った玉をパキッと潰すと、
「ぎゃああああああ!?」
グリマンの体がただの液体になっていく。
「バカな、こんなバカなああああ……王になる夢が……王の座がそこにあるのに。こん……な……バカ者に……負けるとは……」
最後の言葉を残し、絨毯を濡らす染みになった。
ニャーと鳴いた黒猫ちゃんが私の勝ちだと伝えて消えていく。
でもまた出てきたらちょっと嫌だ。
警戒してピョンと後ろに飛んでキャットスレイヴでちょんちょん触ってみた。
「大丈夫そう?」
もう変な敵意も感じないし、普通にただの水っぽい。
「ええ、勝ちです、私達の勝利です。ですがまだ喜ぶことはできません。まだまだ戦っている者達も大勢いるのです。まずはこの国を襲った敵共を退治しなければなりません。私達の身はこの勇者様が護ってくれます。安心して向かいなさい、我が兵達よ!」
『おおおおおおお!』
お母さんとシャーン、ルシフェリア三人を残して全ての兵士が戦場に向かって行く。
きっともう手を貸すまでもないだろう。
「モモお姉ちゃん、助けてくれてありがとう」
「モモ、倒してくれると信じていたよ!」
そして三人が私の前に。
すごく嬉しそうな顔だ。
「うん、怪我がなくて良かったー!」
「また二人を救ってくださいましたね。改めてお礼を申します。母としても王としても、とても感謝しております。ありがとう、モモさん。また何かお礼をしなければですね」
「わーい、じゃあご飯が食べたーい!」
「いいですよ、国を挙げて食べきれないぐらいの御馳走を用意いたしましょう。愉しみに待っていてくださいね」
「やったー!」
私は御褒美を貰えると知り飛んで喜んだ。
それで、残ったドレッド・デーモンや魔獣の群れは、城の兵力により駆除されたの。
でも、これだけの騒ぎを起こしながらも死者は全くいなかったんだって。
グリマンが後々王になった時の為に残しておきたかったのかも?
でももう倒しちゃったし、知ろうとしても分からないことだ。
御主人とアリアもグリフが護ってくれて無事だったし、私には関係ないかな?
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




