ジジの魔法
顔の分からなかった選手がトレーシアというこの国の王女様だったんだ。
その人とブラッディという人物が戦うことになった。
知り合いみたいだったけど、言葉を交わすことも無くブラッディはやられちゃった。
勝負がついても止めを刺そうとするトレーシア。
私はその前に飛びだしたの。
やっぱり襲ってくるから、戦っている間に白猫ちゃんに回復させてもらったんだ。
でもね、向うが負けそうになるとグレゴリーが止めて来たの。
ここでの決着はつけられない感じ。
そして五回戦が始まったよ。
私の相手はジジっていう名前のお爺さん。
筋肉モリモリで魔法も使う強敵なの。
一戦目、二戦目と終わり、三戦目は私の番。
呼ばれて入場口を進んで行ったよ。
何度も上がった闘技場の中央。
向かい合っているのは対戦相手のジジだよ。
開始の合図はまだかからない。
「先ほどはよくもやってくれたな小娘よ。色々と活躍しているようだが、それもここまでだ。この魔導王の我が相手なのだからな!」
ジジは上半身の衣服をバリッと破り捨て、胸の筋肉を左右にピクピク動かしているの。
「えー、私は負けないよー?」
「もしや先ほどのやりとりで我が実力を見切ったなどというまいな。だとしたら笑止! あの時貴様は我が功名なる罠にかかっていたのだ! あの一瞬にて、貴様の能力全てを減退させる呪印をかけた! もはや実力の半分さえ出せはせぬ!」
うーん、また何かかけられちゃったの?
確かに、何だかあんまり力が入らない気がするよ。
「グレゴリー様の為、貴様をここで始末してやろう!」
もしかして、グレゴリーの仲間なのかな?
だったら手加減は必要ないよね。
さあ、そろそろ始まりそう。
『――試合開始いいいい!』
ほら、来た!
「ゆくぞおおおお!」
弱くなっテルっぽい私に向かい、ジジがかたそうな杖を振り上げたんだ。
魔法を使うって聞いていたけど殴り合いをするのかな?
それじゃあ返り討ちにしてあげる!
シュッと躱して、ボコボコするお腹に一発ドーン!
「がはぁぁぁ!?」
大きな体が空中に浮かんだよ。
追撃しようと思ったけれど、それはさせてくれないみたい。
魔法のオーラみたいなものがジジの体を覆って空中をブーンと移動して地面に着地したの。
こっちは追いつけないぐらい速かったよ。
「ば、馬鹿な。弱体化の魔法は掛かっているはず。普通の人間ならば小石を持ち上げるのも難しいのだぞ……!?」
それでもダメージが大きかったのかな?
お腹を押さえてハァハァしているよ。
「小石ぐらい持てるよー?」
私は落ちていた小石をひょいっと拾い上げたの。
でもこんなので疲れたりしないよ。
「クッ、色々と規格外ということか。ならばもう近づかん。遠くから撃ち殺してくれるわ!」
ジジが再び空に上がっていく。
弱体化していない時でも跳びあがれない高さだよ。
「フォッフォッフォ、流石の貴様でもこの高さでは手が出まい。さあゆくぞ、我が渾身の大魔法をくらわせてくれる!」
空でそう云いながら杖で円を描き魔法陣を展開させていくの。
「燃え盛る炎よ、大地に埋もれる金色よ、天にある輝きよ、深き新緑よ、渦巻ける風よ、雄大に広がる深海よ、全てを束し紫よ、七つ力を今ここに! アルティメット・セブンス!」
七色の魔法陣が揃い、それぞれの色に対応した魔法が灯るんだ。
赤は炎、金は石、黄色は光のレーザー、緑は植物、青は風、藍色は水、紫は何かを呑み込むような穴が開いているの。
「さあ逃げ惑え、発射だあああ!」
紫を除く六つの魔法が飛んで来る。
炎は熱いし石は痛いし、レーザーもやっぱり熱い。
植物は蔦が触手のように伸びてくるし、竜巻が私の周りを回っているよ。
水は滝のように落ちて来て刺さる様に痛いし、紫は……なんだろう?
特に何にもない感じ?
うーん、やっぱりこれを止めちゃうには、空中に浮かぶジジを止めちゃえばいいんだよ!
でもどうやって倒そう?
あそこまでは跳べないし、キャットスレイヴも使えない。
攻撃する手段は……あ、いっぱいあるよ!
「今度はこっちからいくよー!」
私は闘技場に落ちているジジが飛ばして来た大きな石を拾い上げた。
ここから投げて当てちゃえばいいんだよ。
石が落ちてくる限り球数は無限なの。
あとは、届くかどうかだよね?
「てええええい!」
「馬鹿め、そんな所から届くはずが……ッ!?」
シュビュンと投げると、
「ぐはあああああ!?」
油断していたジジのお腹にバチンと当たったよ。
さっきと同じところで結構効いているみたいだけれど、倒せるほどじゃないみたい。
「おのれ、化け物め。ならばもう少し距離をとるのみよ!」
ジジがもっと高く上がっていく。
このままじゃ石も届かなくなっちゃうよ。
その前にバンバン投げてみたけれど、警戒されて当たらなくなっちゃった。
その代わり、遠すぎて私にも狙いが付けられなくなったみたい。
どの魔法も普通に当たらなくなったんだ。
ここでのんびりしていたら下りて来ないかな?
出来る限り濡れないところでちょこんと腰を下ろしていると、
「ああああくそッ、ちっとも当たらないではないか!」
ちょっとだけ下がって来たよ。
まだ石を投げて届く距離じゃないけど、たぶん大丈夫!
私は持てる限りの岩を抱えてダッと走り出したんだ。
「馬鹿め、自ら餌食になりおった! 全ての攻撃を食らうがいいわ!」
突入したのは巨大な竜巻なの。
ジジにより全ての魔法が集中するけど、レーザーも水もあんまり効かないよ。
植物はそもそも動けなくなっているし、水があるから火は消えちゃうんだ。
やっぱり危険なのは大きな岩の塊だけなの。
「うにゃあああ、目が回るうううう!?」
竜巻の中でグルんグルんしてベチャベチャになっちゃって痛かったけど、スポーンと飛びだしたのは私がジャンプするより高い上空。
丁度良く狙えそうな位置にジジが居るんだ。
抱えている岩はまだ充分に残っているよ。
「馬鹿な、まだ死んでいないだと!? ……しかし、その状態で当てられるのか!」
確かに、眼が回っている私に当てられるか分かんないけど、このチャンスを逃したくないの!
私は手に持った岩をシュババーって投げつけたんだ。
ほとんどはあさっての方向に飛んで行っちゃったけど、二つだけ直撃コースの物があったよ。
「フォッフォッフォッ、もう当たらん! そしてこうだあああ!」
今まで反応もしていなかった紫色の渦が移動し、ゾゾゾゾーって掃除機みたいな音がするんだ。
飛んで行った岩が吸い込まれて……。
「貴様も闇へと葬ってくれる!」
そのまま私も吸われそう。
中がどうなっているのか分かんないけど、美味しい物なんか絶対ないよね。
私、そんなところに行きたくないよ!
……でもちょっと覚悟を決めなきゃいけないみたい。
もう目も治ったから、今しかないんだ!
体がズズっと吸い込まれて行く中で、同じように吸い込まれて行く岩を掴んだの。
紫の穴に近づくにつれてドンドン速さが加速していく。
ここで最後の一投だよ!
「たああああああああああ!」
風に負けないように、ジジに届くように、力いっぱい投げたんだ。
岩が弾丸のように加速し、風に押され、風を切り裂いて進んで行くの。
ちょっと外れちゃったかなぁって思ったけれど、
「ふん、何処へ投げている、こんな物は避けるまでむぶぇえええええ!?」
ギュガガガって回転がかかり、余裕ぶっていたジジの横っ面に向かい突き刺さったよ。
でも私は紫の穴に吸い込まれて……。
あ、ジジが気を失ったからか穴が消えていくみたい。
霧が散るように消え去ると、一緒に吞み込まれていた大量の水や岩や植物がドサドサ落ちていくよ。
変な空間には呑み込まれなかったけど、すっごい高いところから着地しなきゃ。
うーん、ちょっと難しそう。
こうなったら最後の手段を使っちゃうから。
ラヴィーナ、失格になっちゃったらごめんね。
「いくよー、キャットスレイヴ!」
シュビュンと落ちていくジジを確保し、剣を細く伸ばして地面に刺したの。
あとは痛くならないように勢いを殺せば……。
「はーい、着地したよー!」
地面は水でビッショリだけど、そこにポイってジジを投げ捨てたんだ。
殺そうとしてきた人だもん、このぐらいでも丁度良いよね。
後は負けのコールを待つだけだよ。
解説の方を見てみると……。
「うおおお、色々な物が落ちて来て何が何やら訳が分からない内にモモ選手が勝利していたぞおおお! 第六回戦に進むのはモモ選手に決定だああああ!」
あれ、なんか勝っちゃった?
グレゴリーも騒いでいないし、見えていなかったのかも?
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




