トーレシア・アグルバイト・リ・オール
手を握って入場口を通り抜けた私とラヴィーナ。
私は曲がりそうで壊れそうなボロボロの剣。
ラヴィーナの使う武器はトゲトゲの付いたガントレットなの。
合図がかかり、戦いが始まると、二人で正面からぶつかりあったんだ。
武器は不利だけど、私には手も足もあるんだから。
結構優位に進んで倒せそうな時、解説からルールの変更が告げられちゃったの。
武器でしか攻撃も防御もしたらダメで落としたりしても負けになるんだって。
あからさま過ぎるよ。
でも私は頑張って勝ったんだ。
そして最後の一人、顔を隠した選手が入場していくの。
その人はこの国の王女様だったんだよ。
「トレーシア様、幼少のみぎりより友として過ごした日々を忘れたことはありません。しかし、あなたは本当に姫なのでしょうか? こんな場所に来られるとは信じられないのですが。是非そのお顔を拝見したく存じます。どうぞそのマスクをお取りください」
鎧の男ブラッディは、合図がかかっても声をかけ続けているの。
でもトレーシアは全く反応しない。
「……答えてもくれませんか。ならば腕ずくでいかせてもらいます。本人ならばよし、もし偽物であるならこの手で葬って――」
戦いのやり取りが行われることはなかったの。
「ぐっはぁ!?」
トレーシアによる無数の斬撃により一瞬で終わりを告げたんだ。
ブラッディは剣圧に押されて吹き飛び地面に倒れこんじゃった。
傷も深そうで、ドクドク血が流れていて危ないかも!
「決着ううううう、早くも勝負が決しましたああああ!」
そこで解説の声。
戦いが終わりってことでいいんだよね?
それでもトレーシアはブラッディに向かって行くの。
手を貸してあげるのなら微笑ましいけど、これはそういう感じじゃないんだ。
ヒュンヒュンと剣を振って止めを刺そうとしているよ。
「御主人、ラヴィーナ、私ちょっと行ってくるね!」
(うん、気を付けてね)
「分かりました、しかしあの者には何か危険なものを感じます。ご注意を」
「大丈夫、私だって強いだもん!」
白猫ちゃんはもう呼び出したよ。
それ以上のことをさせないようにトレーシアの前に走るんだ。
到着したのは一瞬後。
バッと手を広げて止めようとしても容赦なく疾風のような白刃が飛んでくる。
でも、これは試合じゃないの。
キャットスレイヴだって使えちゃう。
刃でギィンと受け止めたけど、ズザッと足が後方に滑っちゃった。
この人、ハッキリいって人間の力じゃない。
しかもさっき見ていた通りの速さで連撃が。
キャットスレイヴを持っていなければかなり厄介な相手かも。
「そのまま切り刻んでやれええええ!」
観客席から怒号のようなグレゴリーの声。
やっぱり止める気がないみたい。
「白猫ちゃん、あの人をお願いね!」
私は攻防の最中に白猫ちゃんを下ろしたんだ。
ニャーと鳴いてブラッディを癒しに行ったよ。
秒もかからずトレーシアとの攻防が再開され、剣での打ち合いが加速していくの。
もう狙いは私に変わったみたい。
「たああああ!」
けど、こっちも押されてばかりじゃないんだよ。
力強く弾き飛ばして観客席との隔たりの壁を走り、追跡するの。
キャットスレイヴを分岐させバッチ―ンってやっちゃおうと思ったけれど、
「そこまでだああああ、それ以上は失格にさせるぞおおおお!」
良いところでグレゴリーに止められちゃった。
もうやりたい放題。
ここは試合場だから仕方ないけど、やっぱりベーって感じだよ。
それでも目的は達成できたかな。
ブラッディの傷は綺麗サッパリ消えているみたい。
私は白猫ちゃんにお礼を言ってブラッディを抱えて入場口に。
トレーシアは私を追って来ずに逆側の入場口に歩いて行くよ。
(お帰りモモ、あの人も相当強いみたいだね。今度当たった時は注意しなきゃだね)
「うん、その時は頑張るよ!」
「モモ師匠、その人は大丈夫なんですか?」
「大丈夫、ちゃんと生きているよ。休んでいたら起きるんじゃないかなぁ?」
「それじゃあ邪魔にならないようにその辺りに寝かせておきましょうか」
「うん、そうしとくよー」
人が居ない場所にそっと寝かせておいたんだ。
その内起きてくるよね?
大会の方はこのまま続けられるみたい。
五回戦は変な制限がないバトルなんだって。
武器の使用も、体術でも全部オッケーなの。
肝心の相手はというとこれから発表されるところだよ。
ほら、解説が喋り出した。
「あー、ちょっとしたトラブルもありましたが、ついに選手も七人となりました。さて皆様、これから行われる五回戦の対戦表が届きました! 発表します。第一回戦、毛皮を着た大男、ブリンガル・ガラット選手と、美麗の騎士、ランファレーゼ・ユリア・フォーゼルド選手との対戦です! 巨大な剣を操る剛と美しき華麗な柔剣、どちらが優れているのか見物です!」
一つ目の対戦カードが発表されると、隣で当人同士が火花を散らしているよ。
どちらも一回戦から注目していた選手だね。
強いことには間違いないけど、今はあんまり関係ないかな。
「続く第二戦目は、壊魔僧、ガグラルド選手! その相手は迅雷の槍、ハールマグン選手! ガグラ選手は格闘技を得意とし、自信を強化する様々な魔法を扱えるとか! そしてハールマグン選手は閃光のような槍の早突きが得意のようです! 果たして肉体が武器に勝てるのか!?」
今までの感じだと、たぶんガグルドの方が強いかなぁ?
ちょっと実力差が開き過ぎている感じ。
「そして三戦目は、魔導と肉体を併せ持つ賢闘士、ジジ・アルカード選手、そして先ほどとんでもない戦いを繰り広げていたウィーディアの勇者、モモ選手との戦いだ! 今回もあのチート武器は使えないぞ、どうするモモ選手!?」
やっぱりキャットスレイヴを使わせてくれないみたい。
対戦相手は白髭のお爺さん。
ただ、その体はムッキムキだし強力な魔法も使うんだ。
素手でも魔法でもどっちでも強そうな感じ。
その対戦相手のジジが私の前にやってきたよ。
すごくにこやかな笑顔でフォッフォッフォって笑っているんだ。
うーん、良い人なのかなぁ?
「お嬢さん、次の試合は宜しくお願いしますぞ。生い先短い年寄りに花を持たせてくだされ」
「うん、よろしくねー」
と、手を出して来たから私も右手で握り返したんだ。
「フォッフォッフォッ。やはり若い、自らの利き腕を使うとは。隙ありじゃああああ!」
お爺さんは握った手にすっごい力を入れてくるの。
「試合で使えぬように、ここで手を握り潰してくれるわああああ!」
これはちょっと痛いかも。
だからね、私も同じようにギューってしたんだ。
「いっどぉあああああああああ!? 放せ、放せええええ!? 年寄りを大事にしろよおおお!?」
ジジの手がぐにゅっと曲がって涙を流して痛がっているの。
「えー?」
自分からやってきたのにね。
「モモ師匠、気にしないで握り潰してやりましょう。これで次の試合も有利になりますから!」
「や、やめろ、試合で正々堂々戦おおおおおう!?」
ジジは痛みでビクンビクンして座り込むようになっているよ。
(まあ、放してあげてもいいんじゃない? ちゃんと試合で勝ってこその優勝だと思うし)
「そうだね。じゃあ放してあげるよー」
「次の戦い、覚悟しておくのだな。目にものを見せてくれるわあああ!」
私が手を放すと、ジジが捨て台詞を云って離れていくよ。
思ったより弱そう?
「残る一人、トレーシア様については連戦を考慮し、シード選手となりました。皆様ご了承のほどをよろしくお願いします!」
最後、トレーシアは戦わなくてもいいんだって。
当たるのは次か次の試合になりそう。
そして、血で血を洗いそうな五回戦。
順番に試合が始まったんだ。
一試合目、大剣を使うブリンガルと、女騎士ランファレーゼがぶつかりあったの。
ともに剣同士の戦いは、中々見応えがあったんだ。
ランファレーゼが最初押して、速くて華麗な剣で圧倒していたの。
でもブリンガルに対して致命傷を負わすことが出来なくて、逆に致命的な一撃だけ入れたブリンガルが勝利したんだ。
続く二戦目。
こっちはハールマグンの見せ場もなく、あっさりガルラルドが勝利しちゃった。
そして次が私の番。
「――現れよ、ウィーディアの勇者、モモ!」
「はーい!」
私は元気にお返事して御主人とラヴィーナに見送られながら入場口を走って行ったよ。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




