コロッセオのキマイラ
グレゴリーが部屋に尋ねて来たの。
なんか祈りを捧げたいって云うからお断りしたんだよ。
私みたいに呪いがかかっちゃうと嫌だもんね。
大人しく引き下がったグレゴリー。
私はその後を付けて行ったんだ。
道中では私とラヴィーナを殺す相談をしていたの。
従者に何か用いさせるみたいだからそっちに行ってみたんだけれど、コロッセオの地下にキマイラっていう恐竜みたいに大きなモンスターが。
拘束具が外され、二人は死んじゃったけど、私はなんとか脱出に成功したんだ。
閉まった扉の中からガンガンドンドンと音がする。
きっとキマイラが扉を破ろうと暴れているんだろう。
もし出てきたらって思ったけれど、何度やっても壊れる気配はないんだよ。
暫くすると音が収まって気配が遠ざかっていくの。
流石に諦めたのかも?
(危なかったね、もしかして明日の相手ってあれなのかな?)
「それはちょっと大変だなー。頑張らないとね」
(とにかく部屋に戻ろうか。皆に報せないと)
「そうだね!」
私は急いで控室に帰り、皆に事情を説明したんだよ。
「なんと、そんなことが。もしついて行っていたら足手纏いになるところでした」
エリオはちょっと胸を撫で下ろしている。
あんなのが相手だったら死んじゃっていたのかもしれないしね。
行かなくて良かったよ。
「姫、奴等の狙いはハッキリしました。あのグレゴリーという奴を捕らえて参りましょうか?」
「そんなことをして試合が中止されたらどうするんですか! せっかくこんな遠い所まで来たのにとんぼ返りなんて嫌ですよ!」
「しかし、危険です。明日の試合は棄権なされた方がよろしいのでは?」
と、こっちではゼノンがラヴィーナを説得しているけど、
「私はそんなことに負けたりはしません! そんな障害なんて乗り越えてみせますよ!」
「姫、どうぞ考え直してくださいませ!」
「嫌です、絶対に嫌です!」
全然いうことを聞かないの。
明日の試合大変なことになりそうかも。
あ、それと私にかけられた呪いも解呪できたんだよ。
この国には万全の態勢でやってきたからね、皆で荷物の中から薬を探してくれたんだ。
今度は完璧な状態でやれそうだね。
「とにかく明日の試合の為に休みましょう。その化物と戦えるのが楽しみですよ!」
「待ってください姫、もしものことがあればテルナ様に何とご説明すればいいのですか!?」
「その時はその時なのですよ! さあ寝ましょう、モモ師匠!」
「はーい!」
「いや、まだお話しが――」
ゼノンはまだ納得できなくて詰め寄っているけど、
「休めなくて体調を崩したらどうするんですか! そしたら負けてしまいますよ!」
「うぐ……」
結局ラヴィーナに言いくるめられて黙っちゃったよ。
私は自分のベッドにもぐり込み、グッスリと眠ったんだ。
★
ブレイズバトル二日目。
今日もお客さんが続々と入場してきて席がドンドン埋まっていっているよ。
でも騒がしい声は聞こえないの。
何故ならコロッセオの闘技場には恐ろしいモンスター、キマイラが暴れているから。
炎を吐いたり突進したり、爪でガシガシしているけど客席に被害はないんだ。
バリアのようなものが張られているみたい。
流石に今日は解説や審判なんかも外に出ているよ。
うーん、でも、どうやってあそこから出て来たのか不思議だね。
(もうすぐ試合だね。僕はここで応援しているよ)
「うん、そこで見ていて!」
今私達選手は入場口に集まって説明されているんだ。
流石に倒せとは云われなかったけど、二人一組になって攻撃を掻い潜って傷をつけて帰ってくるだけでいいんだって。
生き残れば次のステージに進出、死んだら負け、すごく分かりやすいけど、それだけでも相当大変そう。
実際何人かは棄権を申し出ているの。
「ではクジを。同じ数字が出た人がパートナーとなり、その数字の順番で戦っていただきます。さああなたからどうぞ」
運営の人から私の前に穴の開いた箱がつきつけられた。
「うん、引いてみるね」
引いた紙は一番。
つまり最初に戦うんだ。
続き、一人二人とパートナーが決まっていく。
でも結局は私とラヴィーナが組むことになったの。
きっとこれは運命なんかじゃない。
ズルしてそうなるようにしていると思うんだ。
「やりましょう、モモ師匠、私達の力を見せつける時です!」
「うん、がんばろー!」
入場口から会場に出ると客席の一番見晴らしのいい場所にグレゴリーが座っていたの。
何かを期待するような顔。
私達が死ぬのを見守りたいんだろう。
そして背を向けたキマイラは私達の存在に気が付いたんだ。
頭が四つもあるから何処に居ても見えちゃうよね。
振り向きざまにキマイラがガアアっと吠えて向かってくる。
始まりの合図なんて出してもくれない。
「ラヴィーナ、来るよー! すっごい早いからね」
「分かっています!」
キマイラがぐんと足を踏み出すと、ライオンの顔が近づくの。
二人同時でもパックリ行けちゃうぐらいな大きな口。
ギザギザの歯で食べられたら絶対死んじゃうよ。
しかも隣には熊と猿の顔がある。
背後には大蛇まで。
下手に避けたら食べられちゃうか焼かれちゃう。
分かった上でラヴィーナは前に出て体を下に。
これは蹴りの体勢。
一撃を入れて試合を終わらせるつもりなのかも。
それじゃあ私もそれに手を貸さないとね!
「てええええい!」
「にゃああああああん!」
タイミングは大丈夫。
この蹴りは防げない!
キマイラの顎元にドゴーンって二つの蹴りが炸裂したよ。
衝撃で巨大な頭が天を仰いだ。
でも、これで倒せたわけじゃない。
他の顔の目が私達を睨みつけているの。
それであってもここが明確な隙だよね。
尻尾の蛇も両側の顔も攻撃できる範囲外。
両足は踏ん張るために伸びきっているし。
私はキャットスレイヴで自分とラヴィーナの体を持ち上げ、
『たあああああああ!』
ライオンの顎元にもう一撃!
衝撃で反り返って大きな体が浮かんだの。
観客の誰にでもわかるヒット。
驚きと驚愕の歓声が上がったよ。
あとはここから脱出すればいいだけだけど……。
(モモ、入り口が閉じたままだよ!)
御主人の声は騒音の中でも聞こえているんだ。
グレゴリーはこの場所から逃がさない気なの。
「ラヴィーナ、出口が塞がれちゃった!」
「なんですって、それじゃあ向う側の出口に向かうしかないんでしょうか!?」
「たぶん無理なんじゃないかなぁ?」
そんな優しいことをするようには見えないよね。
グレゴリーは今も悔しそうにしているみたいだし。
「まあ、それはそうですよね」
やっぱりキマイラを倒さなきゃ出られない感じ。
それに、けっこう力を込めた攻撃も、あんまり効いたように思えない。
ドーンと足をつき、怒った顔を見せつけて吠えているの。
また突進、それとも炎、何が来たって負けないよ!
「ラヴィーナ、火を吐くから気を付けて!」
「はい!」
そして、キマイラが突撃を決行したの。
さっきと同じ様にタイミングを合わせて。
「たああああ!」
「ここだあああ!」
ラヴィーナと一緒に攻撃を仕掛けたんだ。
でもね、キマイラの顔が一瞬笑っているように見えて、ギュンと横に跳ねちゃった。
攻撃の隙をつくつもり!?
急には止められないけれど、覆す手は持ってるよ!
キマイラの口がバクンと閉じた時、二人で背後に回っていたの。
さっきの一瞬でキャットスレイヴを使ったんだ。
だけどこっちも蛇の正面。
その口には炎が灯っている。
人が簡単に灰になっちゃうぐらいの威力。
食らったら絶対ダメだよ。
炎が到着する寸前、私達は横に跳躍したんだ。
蛇は首を移動させて追ってくるけど、三つの首がこちらを向くと攻撃を諦めたの。
やっぱり尻尾より頭の方が優先なのかな?
何方かというと炎の方が厄介だし、これはこれで丁度いいかも。
私は拳から剣に切り替えてラヴィーナと一緒に構えを取った。
『かかって来ーい!』
どんな攻撃が来たとしても弾き返してあげちゃうから。
キマイラはゆっくり足を動かして距離を詰めてくる。
途中で軽く横に跳ぶ。
グッと体を地面に伏せて思いっきりのよい跳躍をしたの。
ヴォンと羽ばたく一対の翼。
空を自在に飛びながら私達を狙っているよ。
炎の牽制、避けたところに滑空して爪が飛んで来る。
剣や拳は届かない、そう思っているのかもしれないけれど、地面の時より全然遅いよ。
それはとっても好都合。
「たあああああ!」
私にとっては丁度いい的なんだ!
グンと伸ばしたキャットスレイヴで一番厄介な蛇の首を切り落としたの。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
エリオ・ジ・エイグストン(モモの従者)
ゼノン・ハイム・ディラーム(ラヴィーナの従者)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




