来て来て、お客さん!
私は皆に声をかけに行ったの。
リーズとカリン、他の皆も暇な時に来てくれるって云ってくれたよ。
それで店に戻ったけれど、こっちはやっぱり人の気配がないんだ。
大きな声で呼び込みしてみたけれど、うるさいって迷惑がる声が聞こえてくるの。
ここで続けるのはもうダメみたい。
だから今度は大通りに出たんだけれど、本屋のある路地裏に連れて行くと皆逃げて行っちゃうんだ。
だったら本を持って来て大通りで売っちゃおう。
そう考えた私達は荷車を確保して店に戻ったの。
でもね、本屋のお姉さんシノブは値段が全部違うからって却下してきたんだ。
それじゃあこの作戦もできなさそうだよ。
三日目はチラシ広告を配って、四日目は本屋の外観を掃除してみたの。
五日目には御主人をマスコットにして可愛いさをアピールしてもダメだったんだ。
六日目はうんうんと唸りながら今までの事を繰り返して、グングン時間が過ぎて今日で七日目。
私達の現状はほとんど……うーん、全く変わってないかなぁ?
本屋は相変わらずガラガラだし通りには人の姿はないの。
「おやおや、もう時間がないな。もう諦めたらどうなんだ?」
その状況にシノブが勝ち誇っているよ。
自分の店が流行ってないのがそんなに嬉しいのかなぁ?
でも今日はまだ始まったばかりだもん。
「私達は絶対諦めないもん!」
「そうです、私達は最後の最後まで諦めません! 逆転はここからなんですから!」
(二人とも頑張って!)
私とラヴィーナは希望を信じてやる気をだしたんだ。
でもやってみた作戦はことごとく失敗しちゃったし、この状況を変えてくれるのはなんだろう?
そうだ、呼んでいた皆が来てくれたら一気に逆転できるかも!
私はそう願いながら待ち続けたんだ。
そしてついに、
「おおモモ殿、居られましたか。ここが礼の本屋で間違いないですかな?」
私が声をかけた人達がやって来たんだよ!
先ず店にグリフがやって来て、
「失礼する、ここに我が愚妹が働いているというのは本当か!?」
「へー、ここでモモお姉ちゃん働いているんだね。すごいなぁ」
「私を放っておいてこんな所で遊んでいるなんて、モモ、早くお城に戻って来て!」
それからイブ、シャーン、ルシフェリアが同時に店の中に入って来たの。
それも護衛の兵士達と一緒なんだよ。
立派な馬車にも乗っているし、来る日を合せてくれたのかも?
これだけでも数十人、一人一冊でも買ってくれれば大盛況だよ。
「いらっしゃいませー!」
(いらっしゃいませ!)
私と御主人はちゃんと挨拶しておいたんだ。
お友達でもお客さんだもんね。
「うお、お姉ちゃん、それに妹達まで。まさかモモ師匠が声をかけたというのは!?」
「うん、まだまだ居るよー! その内もっと来るかも!」
「まさか母さんにまで云ってないでしょうね!?」
「それは大丈夫……だよね?」
私は言ってないけど、どうだろう?
グリフの顔を見てみたら、
「あー、報せてはおりませんが、たぶん御存じなのでは? 何しろモモ殿が城中に声をかけてらっしゃいましたからな。噂はもう届いておるでしょう」
「だって!」
どうやらもう知っている感じだね。
「クッ、そうなればどんな嫌がらせや妨害が待っているか。こうなったら早く決着をつけるしかないですね!」
お母さんがそんなことをするとは思えないけどラヴィーナは慌てているよ。
「ないですね、じゃないわ! この愚妹が、城に帰って来たと思えば私に挨拶もなしにこんなところで何をしているのか!」
「イブお姉ちゃん、見て分かりませんか。今私は本屋で仕事をしているんです!」
「はぁ!?」
イブが怒り出しそうなところに、ダダダダダって店の奥から本屋のお姉さん、シノブが見たことがないぐらいのやる気たっぷりな感じで走って来るの。
「お客様、もしかしてこのダメな店員が何かしましたでしょうか!? 徹底的に謝らせますのでご勘弁を!」
と、ラヴィーナの頭をグイグイ押して頭を下げさせようとしているよ。
グリフはほんの少し怒りを込めて、周りの兵士達が剣の柄に手をかけている。
これ以上したら襲い掛かって来そうな感じ。
「店主殿、知らないこととは存じますが、そのお方は我が国の王女殿下であらせられるぞ? 流石にその手は止めた方がよろしいかと。他の者達の目がありますからな」
「王女殿下ああああ!?」
それを見てシノブはバッと手を放してその場にひれ伏したの。
「これは知らぬこととはいえ大変失礼を!」
そのまま床に着けた頭をぐりぐりぐりぐりしているよ。
「うむ、今後は気を付けるのだぞ」
「へへー!」
それでグリフ達は剣の柄から手を放したの。
「最初から云ってくだされば直ぐに太陽の紋章を持って参りましたのに。少々お待ちを、奥から取って参りますので」
シノブはそのままの姿勢で後に下がり店の奥に移動しようとしていたんだけど、
「店長、それはダメです! 私は私の約束で手に入れるって決めているんですから! この店を繁盛させてキッカリ手に入れてみせますよ!」
でもその決着はラヴィーナが気に入らないみたい。
せっかくここまで頑張ったんだもん、私もそういうのは嫌かも。
「そうだね、皆買い物していってね!」
「ふむ、それでは拝見させていただきましょう。必要な物があるならば購入も検討させていただきます。お前達も欲しい物があるならば遠慮するな、買ってさしあげろ」
「ハッ!」
グリフは近くに居た兵士達にも声をかけて近くの本を手に取ったんだ。
パラパラッと見て他の本にも手を伸ばしているよ。
「愚妹がどのような場所で働いていたのか見定めてやる」
「面白そうだね。俺も見てみるよ!」
「欲しい物はあるのかしら?」
イブやシャーン、ルシフェリアも護衛の人達と一緒にも本を見ているよ。
それで暫くすると一人が本を選び、シノブの下へ持って行ったんだ。
一つ売れると他の人達も好きな物を手に取って、どんどんどんどん本棚から本が消えて行ったんだよ。
それに、まだまだお客さんは途絶えないの。
「ここがモモさんの働いている本屋ですか? 確かに色々な本が置いてあるようですね」
「うわー、いっぱい置いてあるの! 本がたくさんなの!」
アリアとウィーニ、ウォームラビットの皆も、
「あら、大繁盛しているじゃないの。私達が来なくても良かったんじゃないの? ねぇカリン」
「そんなことはありませんよ。皆に買われてしまう前に本を確保してしまいましょう!」
リーズとカリンも冒険者達を連れて来てくれたんだ。
今はもう行列が出来るほどいっぱいお客さんが居るんだよ。
珍しい本がいっぱいあるから興味を持ったお客さんが買ってくれているみたいだし、シノブも忙しそうに本を売りさばいているし、これは充分繁盛しているんじゃないかな!
「わーい、これで大丈夫だね! お姉さんに聞いてみようよ!」
「ええ、確実にボーダーラインには達したことでしょう!」
私達は店の混雑が収まるのを待ってシノブに声をかけたんだ。
「確かに、これほど繁盛したことはかつてありません。何故こんなまどろっこしいことをしているのか謎ですけれど、流石この国の王女殿下ということでしょう。約束通り太陽の紋章はお渡しします。これは此方の故郷を思い出せる唯一の品ですので、どうぞお大事にしてください!」
そして手渡されたのが太陽の紋章。
真四角の銅板にシンプルな赤丸が二重になった模様が描かれているの。
形さえ知っていれば誰だって作れそうな感じ。
(日の丸に似ているね。刀もあるみたいだし、異世界でも日本のような国があるのかもしれないね)
「そっかー、ちょっと行ってみたいねー」
「モモ師匠、猫と話している場合じゃありませんよ! 早速母さんに見せつけに行きましょう!」
「そうだね、シノブ、ありがとう! ラヴィーナも挨拶しよー」
「モモ師匠が云うのなら。意地悪ばかりされていた気がしますが、まあ一応お世話になりました。感謝します」
(ありがとね!)
私達はシノブにお礼を言っといたんだ。
「いえいえ、こちらこそ助かりました。今後ともごひいきにお願い致したくおもいます。近くにお立ちよりの場合は是非に!」
「はーい!」
太陽の紋章をてにいれたから後はこれをお母さんに渡すだけだね。
私達は無くさないように大事に持ってお城に戻って行ったんだ。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




