お姉さん太陽の紋章をください
私達は色々な場所を巡って太陽の紋章を探したけれど手掛かりは見つからなかったんだ。
だからアリアに相談してみると商人を訪ねたらと言われたの。
それで雑貨屋とかを巡ってね、太陽の紋章を持っていた人を発見したんだ。
でも今は持っていないみたいだから、譲った人を見つけることにしたんだよ。
今度はリーズとカリンに話をしてね、人捜しの魔法を使ってもらったの。
それで見つけたのが本屋さん。
その中で捜していたお姉さんを見つけたんだ。
「きええええええ!」
「うわー!」
(危なーい!)
シュラッと刀を抜いたお姉さん。
狭い店内で怒りのままに振り回してガンと本棚の端に引っかかったの。
「抜けないいいいい!」
「モモ師匠、こうなったらこの隙に探してしまいましょう! きっとどこかにあるはずです!」
ラヴィーナは店の奥を指さしたの。
(いやいやダメダメ、王女様だって泥棒はダメ!)
「そうだよねー。ダメだよラヴィーナ」
「でもどうするのですか。こうしている間にも――」
「抜けたああああ!」
「ほらあああ!?」
お姉さんの刀が棚の端から引き抜かれて今度は縦方向に振り上げられたの。
「全員まとめて成敗してやるううう!」
もう理性なんてない感じでビュンって落ちて来た。
当たったらスッパリ真っ二つになっちゃいそう。
ヒョイっと避けると、ガッチーンって床に落ちたんだよ。
「えー、私と御主人は関係ないよー」
「知るかあああああ!」
もう話しも聞いてもらえそうもないの。
「モモ師匠、相手は気のふれている様子。こうなったらもうやってしまいましょう!」
(モモ、ラヴィーナの云うことを聞いちゃダメだからね)
「聞かないよ、でもどうしよう? ずっと暴れているよー」
お姉さんは自分の売っている本のことさえも考えてないみたい。
すでに何冊かはスッパリ真っ二つになっちゃったの。
(落ち着けるためには……やっぱり頭痛を治してあげるしかないんじゃないの?)
「そっか、じゃあ回復しちゃおう!」
(それがいいかもね)
「ラヴィーナ、ちょっとだけ時間をかせいどいて!」
「任せてください、直ぐに倒してみせますから!」
うーん、倒さなくてもいいんだけれど、まあいいか。
「きえええええええ!」
「そんなもの当たらなければどうとでもないですよ!」
そんな感じでラヴィーナは刀を持ったお姉さんの気を引いているよ。
今の内に私はちょっと集中して白猫ちゃんを呼び出したんだ。
このまま回復出来れば良かったんだけど、白猫ちゃんは近づくのを躊躇っているの。
やっぱりあのギラギラの刀があると怖いよね。
仕方ないからキャットスレイヴを使ってお姉さんをガシッと捕まえたんだよ。
「流石モモ師匠、これで自由に調査できますね!」
「うおおお、暴漢共め、例え体は奪われようと心までは、心までは奪われんぞおおお!」
お姉さんは何だか勘違いしているみたいだ。
でもチャンスだから今の内に白猫ちゃんを近づかせて回復させてあげたんだよ。
「ねぇねぇ、もう二日酔いは治ったんじゃないのー?」
それでも未だに『うおおおお』って叫び続けているから教えてあげたんだよ。
「うおおおお……おっ? 確かに頭が痛くない!? いやしかし、こんな事をして一体何をしようという気なんだ! やはり此方(こなた・一人称)の体が目当てなのか!?」
「えー、違うよー、私達ね、太陽の紋章が欲しいんだ。お姉さんが持っているって聞いたからここに来たんだよー」
「そうです、私達はそれが欲しいんです! どうぞ譲ってくださいませんか!」
「……この状況で譲れと云われても脅されているようにしか聞こえないんだが……信用して欲しいのならそれなりの対応をしてもらおうか!」
(まあ、そりゃそうだよね。モモ、外してあげたら?)
「はーい!」
私はお姉さんの拘束を解いてあげたよ。
ちゃんと刀を収めてくれたからもう警戒しなくてもいいよね。
「ようやく真面に動けるようになったな。それでお前達は太陽の紋章が欲しいからこんなことをしたと?」
「そうですよ、それがとても必要なんです!」
「うん、譲ってくれると嬉しいな!」
「こんなにめちゃめちゃにして、よくそんなことが云えるものだ」
確かに店の中はめちゃめちゃで本がバラバラになって散らばっているよ。
「えー、やったのはお姉さんだよー?」
「ですね」
(確かにそうだよね)
「うるさい、交渉したいのならば片付けるのを手伝ってからにしてもらおうか」
それで掃除を手伝ってお店の中を綺麗にしたの。
暴れたぶぶん以外にも天井とか散らかっていない場所もやらされちゃった。
狭い店だっていっても結構時間がかかったんだよね。
「これだけ手伝ったんですから太陽の紋章をくださいますよね!?」
「まさかタダで貰おうなどとは思ってはいないだろうな? あれは此方が高額で買い取った祖国を思い出せる唯一の品。簡単に渡すことなどできん!」
「えー、いっぱいお手伝いしたのにー」
「そうですよね、かなりこき使われましたし」
(うんうん、床の水拭きとか乾拭きまでさせられたもんね)
「その程度では全然足りないと言っているのだ! もっとこう、誠意という物を見せてほしい!」
お姉さんは結構必死そうだ。
「えー、分かんないよー?」
「もっと手伝えということですか? ちょっと面倒ですね」
「違う、そういうことじゃなくてこれよ、これ! さっきも本を壊しちゃったし、そもそも店が繁盛していないから色々必要なのよ!」
私達の言葉を否定して指でお金のマークを作っているの。
(ああ、お金がほしいんだね)
「そっか、お金かー」
「それは困りましたね、先ほどのエルフの二人にお小遣いを全部差し上げると言ったばかりなのに。支払えるようなお金は持っていないのですが」
うーん、私も使えるお金を持ってないなぁ。
「だったらこの話しは無しよ。此方も簡単には手放したくはないもの」
「そんな、私には太陽の紋章が必要なんです! どうにか譲ってくださいませんか!」
「そう云われてもねぇ、だったら大金何かして貰わないと割に合わないわ。あなた達は何をしてくれるというの?」
「お掃除ならするよー?」
(うん、手伝える所は僕も手伝うし)
「そんなので此方の腹は満たされない! 生活は苦しくなるいっぽうよ!」
「ならどうしろと!?」
「そうね、今週中にこの店を繁盛させてちょうだいな! 得るはずだった大金を超えるぐらいにね!」
「いいでしょう、やってやりますよ! やってやりますとも!」
ラヴィーナの背中に真っ赤な炎が見えた気がしたよ。
すっごいやる気みたいだね。
だから私達もお手伝いすることになったんだ。
でも、どうすれば人気が出るんだろう?
「んじゃ此方はここで店番をしているから、どうぞご勝手に。ああ、それと期限が来たとしても此方が満足しなければ当然太陽の紋章も渡さないから覚悟しなさい!」
うーん、何にも貰えないのなら七日間ただ働きになっちゃうよ。
それはちょっと嫌だから頑張らないと。
「確実に手放したくなるような成果を見せてやりますとも。じゃあやりますよ、モモ師匠!」
「うん!」
私達は店先に出て呼び込みを始めたの。
「いらっしゃいませー! この本屋はとってもいい品揃えだよー! 何だかよく分からない文字で書かれた物とか、何だかよく分からない物語も沢山あるよー! 皆寄っていってねー!」
「ええそうです、この本屋は目立たなくてちょっとかび臭いけどとてもいい店なんです! そこの人、是非立ち寄ってください!」
いっぱいいっぱい叫んで皆に声をかけたんだけど、そもそも人通りもあんまりないから立ち止まってくれる人もあんまり居ないの。
これじゃあ人気の店になるなんて難しそう。
(そもそも呼び込み方がダメな気がするよ。もうちょっと良い感じにやらないとじゃないかな?)
「えー、そうなのー? じゃーどうしよー?」
(うーん、やっぱり知り合いに声をかけてみるとかいいんじゃないかなぁ? 気になる物があったら買ってくれるかもしれないし)
「よーし、じゃあ皆に声をかけてみるよー! ラヴィーナ、ここは任せたよー!」
「はい、ここは任せてください。モモ師匠が戻ってくるまでに人気店にしてやりますよ!」
私と御主人はこの場を離れてお友達に声をかけにいったんだ。
家猫のモモ
異世界に転生して人間となる。
御主人(ヒロ)
人間だったけど異世界に転生して白い猫になる。
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女ラヴィーナ(格闘が得意)
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
ウィーディアの女王。
爺
シャーンやテルナの付き人。
フルール・フレーレ
ラヴィーナの師匠で格闘家。
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
モモの教育係。
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
冒険者、エルフの姉妹。
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




