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何か貰えた?

 夜、天狼ジャックスローの隊舎。

 そこに到着した私達はドンドンバンバン扉を叩く。

 怒って出てくる兵隊の皆さん、その中に犯人かもしれない金髪の女が二人。

 血の臭いを感じるが皆はそうじゃないと云っている。

 やっぱりパンツは違うらしい。

 そして出て来た天狼隊の隊長、ジャック、スローに事情を話し、もう一人金髪の女が居ることを聞いた。

 食堂辺りに居るのではないかということで、私は一人で向かってみることに。

 その中には返り血を洗う金髪の女カーミラの姿が。

 問答無用でキックを食らわすものの、女は立ち上がり、魔物という本性を現したのだった。

 でもそんなのは関係ない。

 私は一気に切り裂き勝利を収めたのだった。

 あの魔物退治の翌日。

 私とプラムは玉座の間という、でっかく広い場所に呼ばれていた。

 一応御主人も一緒だ。

 目の前にはシャーンのお母さんが金で作られた椅子に座り、隣にはシャーンとアリア、それにルシフェリアが立っている。

 更にその場所に続く真っ赤な絨毯の左右には、剣を掲げた兵隊さんと、着飾った貴族の皆さんが私とプラムを見つめている。


「この国を救った英雄よ、さあ来るのです」


 そして何かシャーンのお母さんから声がかかった。

 でもエイユーって何だろう?


「御主人、エイユーって何?」


(たぶんモモのことだよ)


「あー、そうなんだー」


 私はトコトコと前に進んでシャーンのお母さんの膝の上に頭を乗せた。

 なんか周りがザワっとしているけれど、頭を撫でてくれているから怒られそうな雰囲気じゃない。


(ちょっとモモ、もうちょっと後ろに下がって座るんだよ!)


「えー、そうなの? わかったー!」


 御主人の云う通りもう少し後ろに下がって床に正座した。

 シャーンのお母さんは咳払いをし、


「静粛に、私は問題ないです。それとプラム、貴女も英雄の一人なのですよ。さあこちらに」


 今度は後で止まっていたプラムに声がかかる。


「え? は、ハッ!」


 プラムは何か戸惑いながらも私の隣まで進み、その場で膝を突いた。

 ちょっと緊張しているようだ。


「プラム、貴女が塔の最上階でドレッド・デーモンを見つけ、深手を負わせたこと、その報せを受けてモモさんが事件を解決したこと。英雄としてふさわしい行動です。二人に感謝と褒美の贈呈を致しましょう」


 アリアとルシフェリアが全力でしーっと口元に指を当てている。


「え? えっとそれはあの……は、はい」


 それに気が付いたのかプラムは口を閉じた。

 そして別の入り口からやってきたグリフにより大量の金貨が手渡された。

 たぶんトーナメントで貰っていた物よりも随分多い感じがする。

 すごく恐縮しながら受け取るも、


「だ、ダメですやっぱり受け取れません! 私はあの時ただ寝ていただけなのです。襲われて怪我を負って、解決できたのは全て師匠の……モモ様のお陰なのです!」


 正義感でそれをつき返してしまった。


「あら、この国の王であるテルナ・グリフィス・ウィンディアからの褒美が受け取れないと? 受け取って貰わないと貴方の故郷が大変な事になりますよ? それでいいんですか? いいんですか!?」


 シャーンのお母さんは怒った顔をしていない。

 でもちょっと圧があって怖い。


「うっ……是非受け取らせていただきます」


 プラムは脅しに屈してトーナメントで受け取った以上のお金を手渡された。

 でも結構嬉しそうだ。


「さてモモさん、貴女には色々とお世話になりました。ルシフェリアを救ってくださったこと、ドレッド・デーモンの討伐も。よって貴女に宝剣と騎士の称号を与えます!」


 うーん、剣とか称号とか全然要らないんだけど。


「そんなのより美味しいご飯が食べたいです」


 私はそんなやっぱりご飯を要求した。


「あらまあ、欲の無い人ですね。なら受け取ってくだされば食事もつけましょう。それでどうですか?」


「わーい、じゃあ貰う―!」


 シャーンのお母さんの提案で、ご飯も付けてもらえたから受け取ることに。

 またグリフが宝石のついた綺麗な鞘に入った剣を私の前に持ってくる。


「モモ殿、さあ受け取ってください」


「うん!」


 無造作に受け取り鞘から宝剣を引き抜くと赤い光が放たれた。

 形状が変化し、少しだけ短くなって私の爪と同じような形になる。

 初めて持ったのにすごく手に馴染む感じだ。


「わー、キラキラ―!」


 でもこれ爪より使いやすいのだろうか?

 それに弱かったらどうしよう。


「気に入ってもらえましたか、それは我が王家に伝わるキャットスレイヴ。所有者の扱いやすい様に千変万化に形を変える武器です。望めば槍にも鎌にも鎖にだってなるのですよ……何をしようとしているのですかモモさん?」


「うん、どのぐらいかたいのかなーって思って。ちょっと切ってみようかなって」


 私は爪をジャキっと飛びださせ、キャットスレイヴにギャリっと当てようとしてみた。


「そ、それはやめてくださああああい!」


(モモ、ダメだよおおおお!)


『ああああああああ!?』


 とても慌ててシャーンのお母さんや御主人、他の皆が止めてくるので私は手を止めてしまう。

 試したいんだけどなぁ。


「いいですかモモさん、それは大事な物ですから、今後も傷はつけないでください! その剣の性能は保証致しますので!」


「ダメ?」


「ダメです!」


 どうもやったらダメっぽい。

 諦めて床にポンと置いたのだった。


「ふぅ、一時はどうなることかと。とにかく、貴女は騎士として任命されました。今後はそれに準ずるように規律正しくしてくださるととても嬉しいのですが、まあそのあたりは期待していませんので出来ればでいいですよ」


「はーい!」


「さあ騎士の称号を授与しましょう。鞘を持って柄をこちらの方に向けて自らの足でこちらに。私の前に来たら跪きなさい」


「ほえ?」


(モモ、云われた通りにやるんだよ)


 御主人に指示を貰い、ギクシャクした感じで進む。

 それからシャーンのお母さんの前で正座した。


「膝を……まあいいでしょう。どうせ形式的なものですから。では剣を取ります。モモさん、たぶん知らないでしょうけれど、危険なことはないので安心してください」


「うん!」


 私の持っていた剣を取り、剣の刃を私の肩にポンと置く。

 ちょっと怖いけど大丈夫。


「それでは誓ってください。この国の為にがんばると。これからもシャーンやルシフェリア、アリアと仲良くしてくださいね?」


「うん、シャーンもアリアもルシフェリアも、みーんなお友達だもん! ぜーったい仲良くするよー!」


「良かった、それではこれからもよろしくお願い致します」


 剣が元の鞘に戻され、変な布切れがついた金のバッチ? みたいな物を手渡された。

 これが勲章って物なのかな?


「これも大事なものですから、必ずお部屋にしまっておいてくださいね」


「はーい!」


 それで私は騎士というものになったらしい。

 うーん、別に体には変わったところはないんだけれど。

 まあいいか。

 私達は退室を命じられて自分達の部屋に戻って行った。


 騎士という称号を貰ったからか、それともこの剣を貰ったからか、周りの視線が変わった気がする。

 一目置かれたようなものや、嫉妬のような感情もたまに感じるけれど、お友達や知り合いは何時も通りだ。

 だから別に気にしない。

 そしてカーミラに奪われた賞金はシャーンのお母さんが探させているし、プラムは貰ったお金を持って故郷に帰っちゃったし、私はお勉強をしてからのんびり過ごそうかと思ったんだけど、


「モモ殿、少しお話があるのですが、時間はよろしいですかな?」


 部屋にやって来たグリフに声をかけられた。


「なにー?」


「実はですな、友人から頼まれてしまいまして。どうも一目ぼれしたみたいなのです。どうでしょうかモモ殿、お見合いなのですが、お受けくださいませんか?」


 お見合いというのは二人で会って番になったりするやつか。

 何か面倒くさそう。

 今は興味がないし別にいいかな。


「あら、良いのではないですか。モモさん、いい男をかもしれませんわよ!」


「モモ、がんばって!」


 と、勉強を教えに来てくれていたアリアと遊びに来ていたルシフェリアの応援が。


「ああ失礼、正確にはそちらの御主人殿へのお話なのです。そちらの毛並みに一目ぼれしたと」


(え、僕!?)


 私の膝の上に居た御主人が自分の話だと気が付いて飛び起きた。


「なんだ、モモさんではありませんでしたか。でも御主人さんのお見合いですか、良いのではありませんの?」


「御主人ちゃん、がんばって!」


 二人とも今度は御主人を応援しているけれど、


(ダメダメダメ、ダメだって! お見合いなんて無理だよ無理! 僕、すっごく緊張しちゃうし!)


 御主人は嫌がっているみたい。


「御主人、嫌なんだって」


 私は御主人の言葉をグリフに伝えてみたけれど、


「そこを何とか、このグリフの顔を立てると思って、御主人殿、お願い致します!」


 グリフは御主人に頭を下げてお願いした。

 そんな行動に御主人は悩み、


(うっ、分かったよ。会うだけだから、会うだけだからね!)


 お見合いを受ける決意をしたみたいだ。


「御主人いいってー!」


「おお、では早速話をまとめなければ。また日程を伝えに来ます故にそれまでに綺麗にしておいてくだれ」


 私の返事を聞くとグリフが部屋を出て行った。


「さてと、そうと決まれば勉強よりもやることがありますわ」


「御主人ちゃん、綺麗にしてあげないとね」


「うん、お風呂だー!」


 私とアリアとルシフェリアは御主人を持ち上げ、


(優しくしてね!?)


 洗ってあげるためにお風呂に運んだのだった。

 三人でワチャワチャしながら揉み揉みして仕上がったニュー御主人。

 毛並みの艶やかさと若干良い匂いが漂っている。

 もうお見合いの準備は完璧だ。

 それからちょっとお茶を飲んで落ち着いていると、


「日取りが決まりましたぞ!」


 グリフが大声で扉を開けた。

 うるさいから、もうちょっと落ち着いてほしい。


「あら、お早いですわね。それでグリフ様、何時なのですか?」


 私の代わりにアリアが質問してくれている。


「それがな、先方が出来る限り急ぎたいと申すので、今日、もしくは明日にしたいと。いやもちろんそちらの都合が良ければの話しだが」


「それは急すぎませんか? 何だか怪しいですわね。グリフ様、まさか欲情にかられてモモさんをおかしな場所に連れ込もうなどと思っておりませんわよね?」


「いやいや、わしがそんな事をするはずがないではないか。それにご心配なさらずとも、相手は代々王家に仕える名門のラグルトン家なのだ。あいつは良い奴ですぞ」


「あら、相手はラグルトン家なのです? 有名どころの貴族様ではないですか。もしかしてその親友というのは……」


「うむ、家長であるグリマン・アーツ・ラグルトンだ」


「グリマン……あの人怖い……あんまり好きじゃない」


 ルシフェリアは少しだけ拒否感を示している。

 ずっと閉じこもっていたから視線や悪意には敏感なのかも。


「そ、そんなことはありませんぞルシフェリア様、確かに顔は怖いですけど、ちゃんと話してくださればいい奴だとお分かりになりますぞ」


 グリフは何とか説得しようとしているけれどルシフェリアふるふると首を振っている。

 私としては全然分からないし、折角御主人を洗ったし今から行っても良いかもしれない。


「それでどういたしますかモモ殿」


「今日でもいいよ!」


「おお、では早速お連れ致しましょう。ルシフェリア様は勝手に出歩かせる訳にはいきませんが、アリア殿はどういたします?」


「モモさんだけだと心配なのでついて行きますわ。ルシフェリア様、また明日一緒に遊びましょう」


「またね、ルシフェリア!」


「うん」


「では失礼いたしますルシフェリア様、それではモモ殿、アリア殿、それと御主人殿、馬車でお送りいたしましょう」


 私とアリアは御主人を連れてお城から馬車で揺られながら三十分ぐらいかけてラグルトンの屋敷に。


「さあ着きました。ここがラグルトン邸ですぞ」


 巨大な鉄門には私達を待ちわびたように頭を下げる執事が一人。

 隙間から見える赤いバラの庭園は、多くの使用人により手入れがされている。

 あれはトゲがあるから大変そうだ。

 そして私達は『御主人がお待ちです』と執事に案内されて中に通された。

家猫のモモ

御主人ごしゅじん(ヒロ)

王子シャーン

シャーンのお母さんテルナ

グリフ・リスマイヤー

青鎧のブルース・グライブス

教育係アリア・ファイリーズ

赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)

桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)

ルーカ(孤児)

プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)

ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)


剣と魔法の世界 ミドレイス

翼の生えた子供 ウリエリア

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