運命の出会い
ただおねショタラブコメが書きたかった。
後悔はしない。
何もかもが嫌になった。
些細なことがきっかけだ、でも嫌になった。ただ歩いて、歩いて、歩き疲れて、とぼとぼと元いた現実から逃げるのだけは止めずに、ただひたすらに歩いた——。
すれ違う人もいなくなり、とうとう歩き疲れた僕は、ふと頭を上げた先にある建物が視界に入る。
古びた洋館だ。
門には無数の蔓が我が物顔で巻きついていた。
【-の----を-ず】
微かに看板のようなものも見えたが蔦でほぼ見えなくなっていた。
きっと手入れする者もいなくなったのだろう。
普段の自分なら絶対に近寄らないだろうが、この時は自暴自棄になっていたのだろう、あるいは非現実的な場所に多少の高揚感があったのだろう、いづれにせよ行く宛もない僕は周辺を少し探り始めた。
5分ほど探索していると、丁度ひと1人通り抜けれそうな壁の穴が見つかった。
きっと肝試しスポットにでもなっているのだろう。こんな都合よく崩れる訳もなく、人為的なものに違いない。いや最悪犯罪者の根城では??中には死体とか、、、そんな物騒なことをあーだこーだ考えながら、穴の先に入ってしまった。
穴の先は洋館の裏口近くだったようで、割とすぐに扉があったが、残念ながら扉には鍵がかかっておりそこから入ることはできなかった。
まあ他人様の家の裏口を使うのは酒屋のお兄さんぐらいだろう。そんな国民的アニメを思い浮かべながら、正面入り口を探すためにまた歩き始めた。
何度も蜘蛛の巣やら生い茂る草木やらと格闘を繰り返しようやく正面の入り口に辿りついた。
眼前には【the洋館!】てな具合の大きな扉があり、ご丁寧に少しだけ開いていた。
これは先客がいらっしゃったのかな?などと考えながら扉の真鍮部分をぎゅっと握り締めながら
押し開けた。
「お邪魔しまーす」
蚊の鳴くようなか細い声で、一応の礼儀の挨拶をいるかもしれない先客もしくは館主に向けて言いながら中へと入っていく。
「こりゃー、すげーなぁ、、、」
おもわず声を出さずにはいられなかった。
まさに自分が思い描いていた洋館そのものだったからだ。
真っ直ぐにどこまでも続く赤い絨毯に豪華なシャンデリア、先には2階に繋がる左右に別れた階段。そして一際目立っているのが、巨大な額だ。
んん?
何故額だけ?こういうのは普通この館主の肖像とかその家族とかのが飾ってあるのでは?
それだけじゃないそもそも廃墟だと思っていたが、中は何故か朽ちておらず間違いなく手入れされている雰囲気だ。
何故外はあんなに鬱蒼としていたにも関わらず中はこんなにも綺麗なのだ?
違和感に恐怖心がついてこようとした次の瞬間、
「いらっしゃい。」
鋭いがどこか優しい声音をしている女性の声が自分の耳を撫でた。
そこには真っ赤なドレスを身に纏った、
ーーーー僕のお姉様がいた。ーーーー
「へ?」
この時お姉様は正真正銘、長い人生で初めて困惑していた。