表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

最初で最後の夏祭り

作者: 雛罌粟

 隣の彼の手が止まったのに気づいて、私は残りの焼きそばを急いで食べようとした。綺麗に割れなかった割り箸のせいで、なかなか進まない。


 一瞬目をやると、彼はそっぽを向いている。

 彼の見ている先の何かに嫉妬しながら、私は最後の麺を丁寧につまんで口へ運ぶ。


 ハンカチで口を拭いて、リップを塗りなおして、それからやっと彼の方を向いた。彼はまだ、どこかを見ていた。


「少し歩く?」


 私は問いかける。彼は私を見て、また少し目を逸らす。


「もう少し座ってよう。ここ、涼しいし」


「うん、そうだね」


 それきり、私たちは何も話さない。

 笛の音と太鼓の音、人びとの賑わいが私たちの気まずさをなんとかしている。そんな感じだった。


「足の日焼け、すごいね」


 彼は私の靴下の日焼け跡を見て言った。


「……ああ、これ? すごいでしょう」


 私は苦笑した。


 お気に入りのサンダルを履いてた。ピンクのペディキュアもしてた。お洒落なミサンガもしてた。

 そのどれも、彼には気づいてもらえない。


 彼はまたそっぽを向く。私も下を向く。


 暑いけど冷たい、夏の夜だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ