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2週間後。皇城の一室に、1人の男が椅子に座っていた。はぁ、と息を吐く。肘置きに肘をつき、足を組む。人がいれば注意されるが、今は男しかいない。どうして自分がここにいることになったのか、この2週間を振り返る。
2週間前まで自分は今は亡き国の王だった。けれど、大国とその周辺諸国が手を組み国を落とされた。国はもうない。国がなければ王は必要ない。見せしめに殺されるかと思ったが、なぜだか自分はまだ生きておりなぜだか上等な服を着ている。それもあの少年が原因だ。
大国── オプスキュリテ皇国の第三皇子が作戦の指揮をとった。あの少年が指揮をとらなければ国は落とされなかった、断言できる。なぜなら皇国は今まで周辺諸国を話し合いの席に座らせることができなかった。なのに、あの少年は座らせた。たった17の少年が、皇国にさえ歯向かう国々を話し合いの席に座らせた。そして、戦争が起き、戦争に負けた。
戦争に負けたことを認め、敗国の王をどうするかについて少年はまっすぐに目を見て言った。
『貴方には、私の婚約者になってもらいます』
これを聞いた時は、さすがに動揺した。目の前の少年は何を言っているのか。少年の後ろに控えていた護衛の騎士たちも少年に怪訝な目を向けていた。悪い冗談かと思ったが、それからあれよと言う間に皇国の公爵家に養子入させられ、今に至る。そう、今日は少年と婚約の儀を結びにきた。そして、先程婚約の儀は終わり正式に少年と婚約者になった。婚約者は今、第一皇子と第二皇子に呼ばれてここにはいないが。
帰ってしまおうか。用事は終わっている。待っていてと言われたから待っているが律儀に待つ必要はあるのだろうか。いや、言いたいことがあるから待っているんだった。本当は婚約の儀の前に言いたかったが、言う機会がなく今に至ってしまった。もうずっと言わないでもいいんじゃないかと思い始めてきた。言わないなら帰るか。肘置きから腕を退け、立ちあがろうと足を直した時。
「お待たせしました。話が弾んでしまって」
そうか。もう少し弾んでいてくれれば帰れたのだが。