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7日間だけゾンビな世界  作者: 流石
7/10

6日目③

6日目はこれで終わりです。

「え、何これ」

 ガチャを回したミミが声を発した。目の前の空中を見て驚いているようだが、視線の先には何もない。タケルには、見えない。

「ミミ、何が見えてるんだ?」

「教えない。タケルもガチャしたら、教える」

「くっ」

 しょうがないのでタケルもスマホに触れてガチャを回した。画面の中のガチャマシーンが動いてカプセルを排出する画像が流れる。そして、目の前にウィンドウが現れた。ゲームや異世界転生の定番、ステータスウィンドウかと思ったが、違った。ぼやっとした枠の中に、画像と一文が浮かんでいるだけ。

『レア ビーム 目からビームを出せます。』

 画像の方も、人間の目から黄色いビームが出ているイラストだ。よく見る無料イラストサイトのタッチで描かれている。

「なんだったのタケル。教えなさい」

「ミミが言ったら言うよ」

「そんなのいいから、早く言いなさい」

 ミミが拳銃をタケルへ向ける。長村加奈が持っていたものだ。思わずホールドアップしてしまったが、弾がないことを思い出して両手を下げた。

「撃てるもんなら撃ってみな」

 ガンッ

 股間を蹴られた。脳天まで響く痛みに悶絶する。

「くあ、それダメなやつっ。ぐぶふぁ」

 中腰で内股になり、苦しみがさるのを待つ。ヨダレが床に垂れるが、拭う余裕などない。

「早く言わないとケツにこれねじ込むわよ」

 ミミが拳銃の先でタケルの横腹をグリグリと押す。徐々に下がっていく。前に発情していた時と同じように、瞳が潤んでキラキラしている。

「言う、言うからやめろ」

「あ?」

「や、やめてください……。ビームでした。レアのビームでした」

「ビーム?何それ?ちょっと出してみ」

「いや、あの、どうやったら出るのか書いてなくて」

 ドグッ 左太ももの横に膝蹴りをされた。声にならない声が出て崩れ落ちる。ミミの足元で床に這いつくばる格好になった。

「わからなきゃ自分で考えろよ。いい歳して甘えてんじゃねぇぞコラ。それともケツ穴に突っ込んで欲しくてワザとやってるのか変態野郎が」

 背中や後頭部を踏みつけた後、銃口を臀部に当てて力をこめてくる。

「すいませんでした!ビーム、発射ーー!」

 純潔を守るため、恥も外聞もなくタケルが叫んだ。

 ビューーン

 イラストの通り、タケルの目からビーム光線が出た。黄色い光は目の前の机の足を切断し、奥の壁を溶かして消えた。目を閉じると消えるようだ。

「危ないじゃない!私に当たったらどーすんのよ!」

 ポカーンと口を開けていたミミが我に返って拳銃を振り上げる。そっちの方をしっかりと見て、

「いいのか?ビー……」

「すいませんでした!調子に乗りました!」

 もちろん本当にビームを撃つ気はなかったが、貞操は守らなければならない。まだ床に這いつくばったままなので目の前にはスカートから伸びるミミの生足があるが、気にしない。もう少し視線を上げれば更にひみつの花園が覗けそうだが、それはやめておく。

「ミミは何だったんだ?」

「私はね、これよ」

 キャラ作りはやめたのか普通に戻って、ミミが説明を始める。

「手を鉄砲の形にして、バン!」

 耳の指先から光の弾が飛び出して窓枠に貼り付けた段ボールに穴を開けた。

「もういっちょ、バン!」

 離れた壁に向けて撃つ。また人差し指の先から光弾が飛び出し、壁に穴を穿った。結構深そうだ。

「すごいな。指鉄砲か」

「光の鉄砲っていうらしいわ。レアよ」

「ミミもレアか。ノーマルとかもあるのかな?」

「あるんじゃない。スーパーレアとかウルトラレアとかもあるかも」

「このレアでも、十分な凶器だと思うんだがな」

「検証が必要ね。リキャストタイムとかMPとか」

 タケルはその辺の分野には詳しくないので、ミミに任せることにした。


 それから一時間ほどビームと光の鉄砲について試してみた。と言ってもタケルはミミの言うがままにビームを出したり時間を測ってメモを取ったりしていだだけだが。

「まとめると、タケルのビームに弾数制限はないけど撃つたびにお腹が減ると。空腹になるほど威力も落ちてたから、体内のエネルギーを使ってるわけね」

「ミミの光の鉄砲は時間でチャージされるんだな。満タンで10発。撃ってから1時間経つと復活するから、腕時計は必須だな」

「別にどの指からでも撃てたけど、両手の指分撃ったら弾切れってイメージね」

「どっちも威力あるよな。ゾンビの頭狙えば1発で仕留められそうだ」

「タケルのビームは威力過剰ね。破壊力の制御ができないってのは難点だけど」

「いやいや、気合いの乗せ方で調節できるよ?気合い入れずにビームって言っても出ないし。ほら、この会話でも出てない」

「気合いなんて不安定なのやめてよ。まぁ単語に反応してるわけじゃないってのはわかったけどさ」

「小っちゃいビーーーム」

 タケルが机の表面に向けて小声で言うと、目から弱々しい光線が揺れながら出てゆっくりと机の表面に焦げを作って。直径も深さも1センチ程の穴が開いている。

 「ぷっ、アハハハハ。小っちゃい!小っちゃいビーム!焦げた!ちっちゃ!」

 ミミがウケている。正直彼女の笑いのツボはいまだにわからない。

「はい、バーン」

 笑いながらタケルが開けた穴に指をむけて光の鉄砲を撃った。机が弾け飛んで転がる。二回転して床に横向きに倒れた机の表面には、バナナが一本入るくらいの穴が開いていた。

 タケルがミミの方を見ると、無表情に机を眺めていた。自分がやったくせに、ひどく退屈な芸を見せられたかのように。

「寝るか」

「そうね。なんだか今日は疲れたわ」

「わかるー」

 そうして2人はまた別々のソファで眠りについた。

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