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隣人はいつも偏屈だ



そんなこんなで、みっちりスケジュールの詰まった日々を、このユリウス・グレイシャーのお隣として数か月過ごして分かったことがある。

たとえば。


「お前の実家はどこの田舎だ」


「田舎と決めつけないで欲しいですね。私は生まれも育ちもこの中央都市ですよ。それより貴方の田舎はどこの田舎です?」


「田舎と決めつけるな。俺こそ生粋の中央生まれ中央育ちだ」


ユリウスは機嫌がいいと冗談も通じるが、下手なことを言うと、すぐ機嫌を損ねる。


「じゃあドワーフの祭りも知ってます?夏の一週間だけこの中央都市と彼らの地下王国を行き来できるようになるあれです。もうすぐその時期が来ますから、どうです、一緒に行ってみません?日頃の白パンのお礼です、何かおごりますよ」


「はぁ?!そんなもの、お、お前なんかと行くわけないだろ!それに、お前におごられる筋合いはない」


ほら、このように。

ミモザがお礼をしようとしただけなのに「行くわけない!」なんてものすごい勢いで拒否されて、嫌がられる。

酷いやつだ。そんなに嫌がらなくてもいいのに。



「くそ、やっぱりお前がどうしてもと言うなら、ついて行ってやらんこともない……」


「どうしてもと言う訳ではないので、別にいいです」


「……そ、そうか……」


それからなぜか、しょんぼりする。

物凄い勢いで拒否したことを少しは悪いと思ってくれているのだろうか。


心なしか悔しそうなユリウスを見て、もう一つ気が付いたことがあった。

彼は眼鏡の似合う美形で、その綺麗な顔でしょんぼりされると可愛く見えるということだ。

そして目の下の泣きボクロが、その可愛さに拍車をかけている。

天才の癖に背も高くて顔もいいなんて、なんとも恵まれたやつである。





「お前、趣味とかあるのか。昼寝か?休日は何をしている」


「そうですね。昼寝というか、いつもより長く寝てみたり、ご飯を作ってみたり、勉強してみたりですかね」


「料理か。何を作るんだ、料理は」


「サンドイッチですね。最近はマヨネーズを手作りしたんです」


ミモザはサンドイッチをよく作る……というかサンドイッチしか作れないと言っても過言ではないのだが、そこは手作りマヨネーズの話題で上手く誤魔化すことに成功した。

マヨネーズを手作りしていると言えば、誰しもミモザが料理上手だと信じて疑わないだろう。


「手作りのマヨネーズ、はどんな感じなんだ……?」

首を傾げたユリウスも手作りマヨネーズが気になったらしい。


「どんな感じと説明するより、食べた方が早いですね。食べてみます?今度サンドイッチをおすそ分けしましょうか。白パンのお礼にもなりますね」


「はぁ?!い、いらん!別に!」


「この前、究極のレシピの開発に成功したんですけど、ほんとに食べませんか?特別に作ってきますよ」


「と、特別っ……?!くそ、適当なことを言うな!お前の作ったものなんていらん!」


「そうですか」


そんなに赤くなって逆上しなくてもいいのに。

しかも人を名指しして、作ったものは食べたくないなんて。

そんなことを大きな声で言うなんて、酷いやつである。




……と、まあ。

例に挙げたように、このユリウス・グレイシャーという隣人は一筋縄では上手くコミュニケーションできない相手だ。

しかしミモザは特に付き合いづらいとは思わなかった。

元々寛容な性格ではあったが、更に気が長くなったのだろうか。





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