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たとえ偽物でも愛に勝てるものはない



「まず両目を潰せ!術の解除が先だ!」

「いや、心臓を一突きだ。猶予はやらん、速攻即殺だ」


銀の剣を手に飛び掛かって行った攻撃魔法使いのメンバーを援護するために、先輩は銀の魔法壁を展開した。

その盾は吸血鬼の自由を奪い、メロメロになっている魔法使い達を庇った。


吸血鬼特攻がある銀の魔法壁は、超高度防御魔法で取得がとても難しい。

それを容易く展開してしまうなんて、先輩は流石だ。

天才眼鏡のユリウスに強いと言わせただけはある。


ちなみにそのユリウスはといえば、ミモザの傍を離れるつもりはなさそうだった。

ミモザの横で、先輩たちを援護するつもりのようだ。


あっという間に、攻撃魔法使いがユリウスの魔法壁を足場にして吸血鬼の懐に跳び込んだ。


銀の剣を振りかぶり、突き立てる。

忌まわしい不死の心臓がある位置に突き立てる。


「銀以外に……私に痛みを与えてくれるものはあるのだろうか……私は知りたい」


銀の剣で胸を貫かれた吸血鬼は、折れた首の上にある顔で笑った。

銀の刃を胸に受けても、死に崩れることはない。


瞳孔が、開く。


剣を突き立てていた攻撃魔法使いは、体をビクリと震わせた。

彼は吸血鬼の術に抗っていたようだったが、やがて頬をほんのり染めて銀の剣を吸血鬼から抜き取った。

魅了の魔法に掛けられてしまったのだ。



先手必勝。銀で刺し殺し、術を掛けられる前に全て片付けてしまおうというのがこちら側の算段だった。

しかし、火力役が敵に取られてしまった。

止めを刺すのが難しくなってしまった上に、敵は銀が効かない心臓を持った最上位吸血鬼のようだった。


その上困ったことに、魅了の術にかかってしまった攻撃魔法使いは、吸血鬼の目の前で持っていた銀の剣をピタリと自らの首筋に当てていた。


「ウランメーテル様、愛する貴方の御身を傷つけてしまったなんて、もう僕は自らが生きていることを許せない。どうか僕の血を飲んでその傷を癒してください。……ああ、貴方を愛しています」


先ほどまで殺気立っていた彼は恋する男性に豹変し、吸血鬼の体に空いた穴を悲しそうに見つめてから首をかき切るところだった。

迷いのない剣と、甘く蕩け切った眼。


そんな魔法使いを見て、吸血鬼は笑っていた。


「ま、待て!」

流石の先輩も、ひゅっと息をのむ。

援護していたメンバーがサッと青ざめる。


いくら学園きってのエリートとはいえ、友人が死ぬところなど冷静に見ていられる訳が無い。

仲間の首から鮮血が噴き出すのを、正気で見ていられる訳が無い。




「大丈夫です。幻術は私に任せてください」


成す術なしかと思われた、絶望した空気を破ったのはミモザだった。




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