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理不尽が新たな被害者を作る



攻撃がミモザとリリーナちゃんに集まってきた。

水しぶきが上がり竜巻が向かってきたと思ったら、稲妻が走る。

遠距離魔法ばかりではなく、接近戦を得意とする魔法使い達も次々にミモザたちに攻撃をしかけてくる。


「マズいですね。大丈夫ですか、リリーナさん」

「うん……心配ない……ミモザちゃんは……私が守ってあげる……から」


リリーナちゃんはそう言うものの、彼女の対物理防御魔法、対魔法防御魔法はミモザとトントンレベルだ。

彼女は自分に襲い掛かってくる魔法を蹴散らすので精いっぱいのようだ。


現在、2対6くらいでの戦いを余儀なくされている。

こんなの、いくら勉強を頑張っているからってミモザには防げない。


この攻撃が全部精神攻撃だったら全て涼しい顔して受け切れたのかもしれないが、ミモザの防御魔法自体は平凡レベルしかないのだ。

それでも必死に防御魔法を展開するが、こんな集中攻撃を受けたらもう一分ももたせられる気がしない。



ミモザが攻撃を必死で受けながら唇を噛んだ時、向こうの方から元気な声が聞こえてきた。


「ミモザちゃ~ん!助けに来たよ!」

「ミモザちゃん、僕も来たからもう大丈夫だよ!」


集中攻撃を受けていたミモザたちの元に駆けつけてくれたのはアイリーンとルドルフ君だった。

二人とも防御魔法が特別得意なわけではない。というか、割と劣等生の部類だ。

いや、ハッキリ言うと防衛魔導学部のドベ2だ。


「アイリーンさん、ルドルフさん!」


ミモザとリリーナちゃんの横でにやりと笑う、アイリーンとルドルフ君。

ちゃらんぽらんで派手な魔法使いと、明るいけどアホな魔法使い。


どちらかといえば足手まといになりそうな二人、だが。

たとえ足手まといだったとしても、味方が増えるというのは想像以上にとても心強いものだった。


「右の男はあたしに任せて!”アイリーン特製・いい感じに服が破れるように調整して攻撃を受ける防御魔法”試してみるから!」

「僕は応援くらいしかできないけど、いないよりはいいよね?」

「……私の足踏んだら、深爪する呪い、かけてあげよ……」



……うん。あまり戦況は変わらなさそうだけど、ちょっとやる気が出たし最後まで頑張ってみますか。


ミモザは改めて前を向き、迫ってくる攻撃に合わせて素早く防御魔法を展開していく。


「では、いきましょう!」


「オッケー!」

「わかった!」

「……こいつらは、やだけど、ミモザちゃんが言うなら……」





ミモザたちは各々が頑張った。

訓練場の中央では、ユリウスが火力全開のアルベルの相手をしていた。

そのド派手なパレードのような戦いには及ばないが、ミモザたちもなかなか善戦していた。


ルドルフ君は防御魔法はイマイチだが本能に従って逃げ回り避けまくり、いい感じの囮として活躍してくれた。

アイリーンの意味不明なお色気防御魔法は男性の魔法使い相手に成功し、リリーナちゃんは何人かの相手を深爪にしていた。

そしてミモザはこの半年あり得ないくらい勤勉に学んだおかげで未だ倒れることなく、向かってくる攻撃魔法をいなせている。


平凡なミモザだが異常な勉強をしてきたおかげで、どうにか平凡以上にはやれているようだ。



……いや、やれていたのだけれど。


「ミモザちゃん、ってアルベルは呼んでたね。あんたは強いのかな?」

「……っ!」


上手くできていたはずなのに、疲労によってできた一瞬の隙をつかれた。

ミモザは、近接攻撃を仕掛けてくる魔法使いの女の子の接近を許してしまったのだ。

近接攻撃を仕掛けてくる相手を懐に入れてしまうなんて、これが実戦なら即ち死だ。


「ま、私より強い訳ではなさそうだね」


蹴りが、突きが、四方八方から飛んでくる。

ポニーテールの彼女はアルベルと同じように、魔法を纏って戦うタイプの魔法使いだ。

彼女の両手は電気のように伝播する魔法を纏っているように見える。

髪の毛一本でも気を許したら感電してしまうのではないだろうか。

ならば、かすっただけでも負ける。


奥歯を噛み締めなおしたミモザは集中して、反射神経の限界スピードで防御魔法を展開していく。


「なんかさ、ツンツンして気を引いてるんだって?私、あんたみたいな計算高いやつって、あんまり好きじゃない」

「そうですかどうでもいいですけど!」

「よくない。アルベルの事弄ぶのは止めてよ。あいつのこと心配してるやつはたくさんいるんだ。それだけは言っとくから」


「……」


このポニーテールの彼女、アルベルの追っかけの一人だろうか。

良く分からないが、アルベルに弄ばれているのはどちらかといえばミモザの方だ。

もっと目を見開いて事実を見て欲しい。

被害者はこちらだ。

アルベル被害者の会だ。


……と言ってやりたいが。もう反論に割く体力が残っていない。




「もらった!」


距離を取りたいが、彼女はミモザが逃げることを許してくれない。

そろそろ防御魔法がうまく展開できなくなってきてる。魔力が足りない。

疲れもたまってきて、集中力も足りない。

彼女の攻撃から、防御のテンポが遅れつつある。


次の攻撃を防げない……!!


「っ!」

そう判断した瞬間、避け損なったミモザは耳の横を手刀で殴られた。


しまったと思ったのも束の間、彼女の魔力がビリビリと入り込んできてミモザの意識がぶっ飛んだ。






「おい!」


ミモザが倒れたのを視界の端に捉えて、声を上げたのは訓練場の中央で戦っていたユリウスだった。

だが、そのユリウスの相手はアルベルだ。


「隙だらけだよ!」

叫んだアルベルはユリウスの一瞬の隙を逃さず、拳を突き出してきた。

ジュッ!熱い熱がユリウスの頬をかすめ、ジリリと焼いていく。


「……っ」


「君は心配性だね。これは訓練だよ?実戦で心配するならともかく訓練中にも過保護にされたら、女の子的にはちょっと気持ち悪いんじゃない?」


「別に心配などしていない」


後ろに跳んでアルベルから大きく距離を取ったユリウスは、舌打ちしながら火傷した頬を庇った。


「ふーん。じゃあ俺はもういい加減君と決着付けて、ミモザちゃんを医務室にお姫様抱っこして運んであげよっと」


「抱っこって……それは、気持ち悪いと思われないのか」


「気持ち悪いと思う女の子なんている?女の子はみんなされたいでしょ、お姫様抱っこ」


「……」


「っていうか、お姫様抱っこしてあげて俺に惚れなかった女の子なんていないけど」


「……いや、それは流石に頭おかしいだろ」


本気で嫌そうな顔をしたユリウスへの返事の代わりに片唇を上げたアルベルは、再びユリウスに飛び掛かって行った。





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