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いつだって、恋とバトルは唐突に




「はい、皆さん。今日は皆さんが待ちに待った強襲魔導学部の奴らと合同訓練の日ですね」


パンパンと手を打って防衛魔導学部の生徒たちの注目を集めたのは、対魔法防衛魔導のコルネリア教官だった。

教官はスタイルの良さを際立たせるぴちっとしたスーツをローブの中に着こみ、ハイヒールでカツカツと歩いている。

こう見えて、彼女は対魔法防衛魔導の権威だ。


「今日の趣旨は強襲魔導の奴らの攻撃を、私達防衛魔導側が受け、臨場感を持って互いに切磋琢磨していくことです」


広い訓練場の反対側では強襲魔導学部遠距離科の生徒たちが、ミモザたちと同じように担当の教官から説明を受けているようだった。


そう。

今日は、防御魔法に特化して学ぶミモザたち防衛魔導学部と、攻撃魔法に特化して学ぶ強襲魔導学部の生徒たちの合同訓練の日なのだ。

防衛魔導学部が強襲魔導学部の攻撃を受けて耐えるだけの、魔法使い流交流会のようなものだ。


「……だが、分かってるな?それは表向きだけだ。アタシはお前らに今日の酒代を賭けてるんだ。防御魔法だから勝てない?否!盾が矛を貫くことを教えてやれ!防御は最大の攻撃だと、あいつらの心身に刻んでやれ!」


叫んだコルネリア教官は、強襲魔導学部の担当教官であるミラーネ教官と勝手に酒代の賭けをしていたようで、戦る気満々のようだ。


「盾を以て進め、盾を以て蹴散らせ、盾を以て敵を押し潰せ!」


ウオオオオオ!

防衛魔導学部の生徒たちがコルネリア教官の鼓舞に触発されて雄たけびを上げだした。


……ああ、これは交流会なんて可愛いものじゃない。


こぶしを突き上げたコルネリア教官と、生徒たちの叫び声を前に、これから大乱闘になりそうな予感がした。



「皆さん、分かっていますわよね?わたくしは貴方たちに今日のお酒代を賭けていますの。攻撃魔法使いは脳筋ばかり?ええ。それの何が悪いのかしら。力こそパワー!勝利の女神は常に攻めた者に微笑むのよ。行きなさい、我が生徒たち!この半年、貴方たちが学んだ全てを以て防衛魔導のザコ共をコテンパンにしておやりなさい!」


一見、占いや予知を軸に政策指揮なんかを学ぶ推命魔導学部の教官かと思ってしまうような、儚い外見のミラーネ教官はコルネリア教官と同じく圧倒的脳筋だった。


ばっと手を天高く上げたミラーネ教官の鼓舞に、強襲魔導学部の生徒たちも同じくウオオオオと雄たけびを上げていた。

強襲魔導学部の生徒たちは見るからに強敵揃いだ。

攻撃魔法の適正者は毎年多いため、強襲魔導学部は倍率が異常に高い。入学が難関中の難関な学部だ。

そんな競争を勝ち抜いて強襲魔導学部に入学を許された生徒たちは、猛者ばかりある。

ほとんどの生徒が選ばれしエリートで、国の軍部である国防本部に片足突っ込んでいるような魔法使いばかりなのだ。



両陣営は訓練場の両端にそれぞれ陣取り、開戦の合図を今か今かと待っている状態だ。

そんな緊張感が漂う中、ミモザは隣にいるユリウスにそっと声を掛けた。


「でも防御魔法使いの勝利って、何なのでしょう。攻撃側は相手を全滅させれば勝ちですが、こちらの勝ちはあまり明確ではないような。耐え抜けばよいのでしょうか?」


「相手側がこちらを全滅させて勝ちなら、こちら側も相手を全滅させて勝ちだろう」


防御魔法を得意としているから戦いでは守りに徹するのだろうかと思いきや、ユリウスの本質は割と好戦的だったようだ。

彼はこの模擬戦のヒリつく空気を案外楽しんでいるようだった。


「来るぞ」


低く言った彼から放たれる、吹雪のような冷気のような圧力が肌をびりびり凍らせるようだ。


ユリウスの表情こそはいつものように飄々としているが、その目が爛々と光っている。

勝ちに行くときの目である。

彼は何事にも無頓着な顔をしているが、どうやら負けることは嫌いらしい。



「では、訓練始め!」


合同訓練開始の号令がかかった。

広い訓練場の両脇に待機していた生徒たちが一斉に相手方へと向かって行く。


そして、防衛魔導の主席であるユリウスに一直線に向かってきたのは、強襲魔導の主席を張るアルベルだった。


これは誰もが予想したカードだろう。

天才の相手は天才に任せるべきだ。

ユリウスに勝てる可能性があるとしたらきっとアルベルだけだろうし、アルベルを破れるのはきっとユリウスだけだ。


巻き添えを食う訳にも行かないし、ユリウスの足手まといになるわけにもいかないということで、ミモザはすっと方向転換した。


……さて天才は天才に任せて、最近勉強を頑張っているとはいえまだまだ平凡なミモザは、雑魚でも狩って満足しますか。


勝ち負けに頓着はない方だが、喜んで負ける趣味もない。

自分なりに身の程を弁えて、出来る範囲で頑張るとしよう。




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