ハァンさんは、やっと私を愛してくれる。
「はぁん。あなた、どこに目をつけて歩いてるの?」
ハァンさんは私に言った。私がソファで座っていたときに言われた。私はなにかをしたのだ。私は答える。
「ハァンさん、あなたの目があたしの目ですよ」
「はぁん?」
ほら見てくださいよと、私はおろしていた前髪をあげた。
「ほらぁ、ぽっかり空いてるでしょ、目玉の部分。この前貸したあたしの目玉、そろそろ返して下さいよ」
「はぁん、ごめんごめん。あ。でも待って」
「なんですか?」
「はぁん? はん、はん。はぁあん。あなた、目がない方が可愛いわね」
「え、そうですか?」
「はぁん」
「え、なんですか?」
「はぁん?」
「え、どっちですか」
「はぁん」
どっちですか。
「はぁん、可愛いわ」
そうですか。
「はぁん、顔赤いわよ?」
「そうですか? 可愛いなんて言われると恥ずかしいからですかね」
「はぁん、たぶん違うわね」
え?
「はぁん、あなた、ずっと目玉が無いから、血が止まってないのよ。顔も服も真っ赤なのよ」
そうですか?
「はぁん、そうよ。そうなのよ。ほらぁ、あなたの目、中身くり貫いて電球にしてみたのよ。見てちょうだい」
ハァンさん、見れません。
「はぁん?」
ハァンさん、見れません。
「はぁん」
ハァンさん、だって私には目玉がありません。
「はぁん、はん、はん?」
ハァンさん、私はあなたを信じています。
そうなの。
「あ、はぁん。そうなの」
私が生きてるあいだ、あなたはとても私に対して冷たくて、だけど、私が冷たくなって、いや、あなたが私を冷たくして、から、あなたは熱く、熱く、私を愛しはじめた。そんな私を信じてます。はぁん。