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【完結済】チートな番を伴侶にする奔走物語〜雄だらけの世界で見つけた、俺の番は……。  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
3章

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42.夢

「····ン、レン」


 何だ····ファルの声か?


 真っ暗な中ファルが腕に乗せて縦抱きにして眠るレンを起こす姿だけがぼんやりと見える。


 何だろう、この状況は····夢?

俺はその場にはいないはずなのに、その光景を見ているようだ。


「····ファル?」

「····俺に言う事は?」

「····ごめん?」

「なぜ疑問系だ」

「元を正せばファルもお婆ちゃんも悪いから」


 レンが頬を膨らませてプイッとそっぽを向く。

長い黒髪がファルの顔面を攻撃したが当のレンは気付かないし、ファルも気にしていない。


「····すまない」

「····別に、もういいよ」


 ファルも謝る時があるのか。

普段の俺のようにぎゅうぎゅうと抱き締めるファルをよしよしとなでるレンは、何故かどや顔だがそんな顔も可愛らしい。


「レンはどうするつもりだ?

森から出るのか?」


 何だと?!

どうしてそうなる?!


「ファルは僕をどうしたいの?」

「俺だけの空間に閉じ込めてドロドロに甘やかしたい」

「うん、それ監禁」


 クスクスと柔らかく笑っているレンは、どこか儚くて、消えそうに危うく感じてしまう。


「伴侶になれ。

そうすればどこにいても守れる」

「ふふふ、嫌」

「森から出る条件だ」

「嫌だよ。

伴侶を作ってもしまた同じ事を繰り返したらどうするの?

昔守る為に伴侶にしたのに裏切られて、先に逝かれて狂ってたのは誰。

しかも僕は番なんでしょ。

番を伴侶にして狂ったのはお婆ちゃんで見た。

ただの伴侶を亡くしたファルの時よりずっと酷かったんだよ。

それに僕はもう、僕のせいで狂う誰かは見たくない」


 今度はレンが抱きつく。


「なら、森から出さない」

「それは不可能だよ。

僕が得意なのは治癒魔法じゃない。

むしろあれ苦手だし。

そんなの君が1番知ってるでしょ。

僕が行動すれば誰も止められない」


 あれで苦手って、じゃあレンは何が得意なんだ?


「人外は愛せないか?」


 レンは一瞬キョトンとした顔になって、声に出して笑う。


「あはは、面白い事言うね。

ファルは僕よりずっと人らしい。

僕が欠陥品なんだよ。

もう誰も愛したくないし、そもそもあれも愛だったのか今はもう本当にわかってないんだ。

他人の痛みがわからない、興味もない化け物だってよく言われてた。

その通りなんだよ。

ファルを傷つけてまで組み紐の事を聞いたのに、僕はもうそれに興味がないんだ。

仮に森を出たとしても例の伴侶を助けるのかも決めてない。

その人が何の病なのか、どう治せば良いのかも知ってる。

なのに、あんなに必死に頼む人に向かって最もらしく言って治さないなんて非情な事を言うんだよ?

人として酷いと判断はするけど、ただそれだけで僕の感情は動かない。

良いも悪いも思ってないんだ」


 顔を見せないようにファルに抱きついていても、俺からは見えた。


 レン、何でそんなに泣きそうな顔をするんだ?

誰を愛して、誰を狂わせた?

化け物なんて、誰が言った?


 本当に興味がないなら、森から出るなよ。

俺に、ファルに守られていてくれよ。


「愛している」


 ファルがレンの存在を慈しむように優しく抱きしめ返す。


「番だから、そう思うだけ」

「違う、レンだからだ」


 いつかの俺とレンの会話のようだ。

レンも意外そうな顔をしているが、やはり顔をファルに見せるつもりはないらしい。


「····ファルもそう言うんだ?」

「なんだ、グランもか。

あの時狂った俺はお前を腐蝕の刃で切りつけた。

放っておけば良かった。

なのにお前が俺を助けたんだ。

責任を取れ」

「僕は無責任万歳主義だ。

それに僕は元来痛みに鈍い。

腐蝕の刃のことなんて忘れちゃった」


 途端にファルは憮然とする。


「強情だな」

「それくらいにはファルが大事。

番や伴侶の感覚はわからないけど、僕にとってファルが家族なのは間違いない」

「それなら待っているから、家族である俺の元に帰って来い。

もしもの時は真名を呼べ。

お前が名付けたお前に呼ばれる為だけの名だ」

「気が向いたらね、ファルドギア。

おやすみなさい」


 レンが消えていく。

ファルだけがそこに佇む。


「聞こえていたな、グラン。

もしもの時はお前が動け」


 もしかして、ファルがここへ呼んだのか?


 意識が浮上するのを感じてゆっくりと目を開けた。

体を起こそうとしたが腹に温かく柔らかい重みを感じて力を抜く。


 まだ周りは真っ暗で、貧血のせいか体調が悪いのが少し早くなった寝息と温かみを取り戻した小さな体の重みに何故か安堵する。


 起こさないように獣体のままゆっくりと体を丸め愛しい番を抱き込み、その特有の甘い香りに癒される。


 最後の休みをどうするかは、もう決まった。

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