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【完結済】チートな番を伴侶にする奔走物語〜雄だらけの世界で見つけた、俺の番は……。  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
1章

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11.報告

 レンと名残惜しい一夜を過ごした翌朝。


 レンお手製の朝食を食べて、ウォンの背に乗り、森を抜けた。


 レンの手料理は、絶品だった。

俺好みの食材を買い込んでいたお陰で、レンの腕前をいかんなく堪能できたのも良かった。


 黒竜とウォンはいなかったが、レンとキョロが見送ってくれた。


 騎士団に戻れば、自分だけ生き残った不甲斐なさを報告する事になる。

胸の奥で押し留めた痛みに、苛まれると確信している。


 だが番に持たされた弁当の香りが、少しだけ俺の心を軽くしてくれていた。


 森を出てからは、獣体で駆けた。

風魔法で追い風を吹かせていたお陰で、日が傾きかける前には、とある騎士団宿営地まで戻る事ができた。


「お、おい、まさか……」

「え、ウェストミンスター第五部隊長!?」

「グランさん!?」


 我が国の騎士団は、五つの隊で構成されている。

王都とは別に、国を四つに分割し、それぞれに騎士を駐屯させている。


 駐屯する騎士は、同じ所属部隊の時もあれば、違う部隊の時もある。


 今回の俺は、任務があって、別の隊と合同調査をしていた。


「ウェストミンスター!

生きてたのか!」

「第四部隊長、団長はいるか?」

「あぁ。

ひとまず中に」


 第四部隊は魔法騎士が多い。

駆け寄ってきた薄灰色の髪と赤目の兎獣人は、巧みな戦術と魔法の腕前で隊長となった。

ちなみに俺の第五部隊は、諜報と暗躍に長けた騎士が多い。


 促されるまま、中に入る。

すると焦げ茶色の髪と瞳をした熊獣人が、待ち構えていた。


「やはり生きていたか。

報告しろ」


 そう命じた男の名前は、ベルグル=ドランク騎士団長。

俺より背が高く、鍛え上げた筋肉を分厚く身に纏っている。

俺の上司だ。


「はい。

商人達を追いかけ、魔の森近くに……」


 命じられた通り、事の顛末を話してから、騎士二人の騎士証を差し出す。


「では連中は、竜笛で青竜を操っただけでなく、よりによって二頭も、魔の森に放ったのか。

青竜の性質も考えず、何と愚かな」

「俺達が連中を追い詰めた際、森から弾き出されるように出てきた青竜は、二頭共、手負いとなっていました。

出てくるまでの時間は、数十分程。

比較的、短時間だった事から、森の中には、力の強い魔獣がいるのは間違いないかと」


 黒竜やレンの事は、一部を伏せ、あるいは正体を偽って報告する。


「恐らく魔の森の主だ。

にしても青竜を二頭まとめて、短時間で退けるとはな。

お前達第五部隊、第部隊の中でも屈指の三名を編成した小隊だった。

その隊が全滅状態になった事を考えても、そら恐ろしい。

旅の魔法師が運良く、お前の致命傷を治癒してもらえたのは、運が良かった。

そうでなければ、お前も死んでいたはず。

小隊を全滅させた責任は、編成した団長である俺にある。

お前達があの時、青竜達を討伐していなければ、下手をすれば近くの町が壊滅したかもしれん。

手負いの竜は、本能のままに餌を求め、暴走する。

隊長として、部下の死に責任を感じるかもしれんが、よくやった。

お前の判断は間違っていない。

現場の惨状を見ても、死力を尽くした事は明白だ。

お前の血が大量にこびりついた折れた大剣に、仲間達の無惨な遺体が物語っている。

魔法師が特定できれば礼を言いたいが、本当にわからないのか?

かなりの実力を持つ魔法師だろう。

騎士の遺体は、一人ずつ魔物避けの布を被せられていた。

その上で、盗難防止にか魔石を使い、騎士以外入れない限定的な結界を、周囲に張ってくれていたんだ。

遺体もバラバラに散っていた筈だが、欠損はほぼなかった」

「そう、だったんですか……」


 一瞬、言葉につまる。

レンは、そんな事をしてくれてたんだな。


「すみません、団長。

俺も気付いた時には、魔の森に張ったテントの中でした。

魔物避けや気配隠しを使っていたようなので、魔獣にも気付かれに三日間、眠り続けたと聞いています。

魔法師から礼はいらない、自分の事はなるべく他言無用にと懇願されています。

俺は近くの町で、その魔法師が必要そうな、最低限の物だけ揃え、礼として無理矢理持たせました。

魔法師は常にフードを被っていたので、どんな風貌かはわかりません。

もしかすると、脛に傷を持つ身かもしれません。

俺にとっても、亡くなった騎士にとっても恩人になるので、詮索もしていません」

「そうか。

お前の報告も、持ち帰った証拠も、有益だった。

騎士団をあげて、元凶を叩き潰す。

決行する時まで、お前は宿舎に戻り、体を休ませろ」


 団長に退出の礼を取り、出ていく。


 団長の言った通りだ。

やはりレンからもたらされた情報と証拠は、有益だったか。


「しかしなぁ……まさか青竜の胃から、商人の遺体を抜き取ってあったとはなぁ……」


 部屋に戻り、独り言ちる。


 胃酸で表面が溶解した亡骸と異臭を思い出し、思わず口元に手をやったのは、仕方ないと思う。


 獣人の鼻は、かなり利く。

だが、あの臭いは人族のレンだって、相当なもののはずだ。


 しかも商人達の亡き骸。

アレは職業柄、色々見てきた俺であっても、なかなかのものだったぞ。


 なのにレン本人は、ケロッとしていた。


 俺の番は、もしかして、ちょっとだけえげつない(アレな)子なのかもしれない……。

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