1.邂逅
処女作です。
無性に書きたくなって書きましたが、設定などふわふわしてます。
おかしな言い回し、誤字、脱字ありきで生温かい目でゆるく見て下さい。
「……だれ、か……あいつら………たす、け……」
仲間を助けたくて、呻く。
視界の端には、魔獣が多く住む魔の森が映る。
ここは、そんな危険地帯に程近い、少し開けた場所。
周囲には、むせるような、俺と仲間達の血の臭いが漂う。
わかってるんだ……皆……もう……。
それでも願わずには、いられない。
血溜まりの中で横たわる俺。
手足が千切れているはずなのに……もう、痛みも感じない…………寒い。
目の前が、暗く塗り潰されていく感覚に、意識が沈みそうになる。
「大丈夫?」
不意に、幼く高い声がした。
意識が少しだけ浮上して、閉じかけた瞼を何とか開ける。
視界がぼやけていて、影のような何かしか映らない。
それでも目をこらしていると、少しずつはっきりしてくる。
…………少年?
月明かりに照らされ、ほんのり浮かび上がる顔は、黒目の可愛らしい、小柄な少年だ。
長い黒髪を耳にかけながら、かがんで俺を見下ろしていた。
顔色は、青白い。
幽霊がいたら、こんな感じだろうか?
お迎えというやつかと思いながらも、恐ろしさは全くない。
「ねぇ、おじさん。
名前は?
右手と左足が向こうにぶっ飛んでるけど、痛くない?」
耳に心地よい、穏やかそうな声音。
いつまでも、聞き入っていたくなる。
俺の手足がぶっ飛んでいるような、仲間の体も、かなり損傷している、凄惨な光景のはずだった。
なのに少年の反応は、そんな光景にそぐわない。
恐れも、驚きもなく、淡々としている。
違和感を覚えて戸惑っているからなのか、それとも失血が酷くて、頭がぼうっとしているからなのか。
少年の質問を理解するのに、時間がかかる。
少年は、聞こえていないと思ったのだろうか?
今度は隣にしゃがみこんで、体を揺すってきた。
なんならどさくさ紛れに、俺の頭上にある、丸みのある耳にも、軽く触れてきた。
「ねえ、おじさん。
名前は?」
「····グ····ラン····」
ようやっと、掠れる声で名を告げた。
けれど、それだけで残りの体力を持っていかれたのか、寒気と眠気が一気に襲ってくる。
「グランさん。
次に目覚めたら、僕のお手伝いしてくれる?
そしたら他の人達は、亡くなってて無理だけど、グランさんは助けてあげる。
でも遺品くらいなら、持ち帰るよ?」
遠くの方で聞こえる少年の声にも、もう答えられない。
再び瞼が下がり、意識が薄れていく。
あいつらの遺品。
せめてあれを家族の元に……。
藁にもすがる思いで、何とか首を縦に振った。
「約束、ね」
閉じた瞼の向こうで、金色の光が見えた気がした。
すると温かい何かに体が包まれたのを感じ、少しだけ温かくなる。
そこで意識が完全に、闇にのまれた。
この時の俺は、まだ知らなかった。
俺が少年だと思っていた可愛らしいこの子が、顔に似合わず、しれっとえげつない性格を発揮する事を。
俺達を、どんどん振り回してくれる事を。
そして、とんでもない秘密を抱えた、哀しい俺の…………番だった事を。
これはチートで、むちゃくちゃ可愛らしい俺の番を、俺が血反吐を吐きながら、何とか伴侶にするまでの、俺の奔走物語だ。