目覚めた場所は
目の奥が眩しい。
それを知覚したのを皮切りに、徐々に意識が覚醒していき、どうやら光に照らされているらしいことがわかる。
おそるおそる目蓋を上げていくと、眩い光が視界を支配する。
慌てて目逸らすと、今度は視界が暗転した。
とりあえず目をパチパチさせていると次第に目が慣れてきて、頭も少しずつ回り始めた。
そして周囲の環境にも理解が及び始める。
そして考える
どうしてこんなところにいるのだろう...
俺がいるのは、深い森の中だった。
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辺りは一面の木々で覆われており、それ以上の情報は得られない。また俺のいる付近のみ木々は生えておらず、俺を上空から降り注ぐ太陽光線から守るものはない。
太陽が真上ということは昼頃という認識でいいのだろうか。まさかこのご時世に太陽の位置で時間を確認する日が来ようとは...
ここは、何処だろう
学校の帰りにドーナツ買って裕香と帰る途中に、少女を助けに行って滑って転んでトラックで事故ったところまでは覚えている。
我ながら物凄くかっこ悪い事故り方だった。
そういえば女の子は無事だっただろうか。中洲の方に放り出されたとこまでは見えたので大丈夫だとは思うが...
さて、状況を整理するにここは病院ではないことは間違いない。
療養施設という感じでもなさそうだ。
日本の医療制度を鑑みるに、患者を死亡する前に何処かに放置することは考えにくい。そんなことをすれば大炎上で裁判沙汰である。
では俺は死んでしまったのだろうか?
いやでも死んだ時って、こんなに鮮明に感覚が残るものなのだろうか?
まあ死んだことがないので分からないが...
とりあえず立ち上がってみる。
うん、普通に立ち上がれる。身体は痛くも痒くもなく、むしろいつもより軽いぐらいだ。
すると、足元にシワクチャの紙が落ちているのに気づく。どうやら俺の尻の下敷きになっていたらしい。
紙を拾い上げる。こんな自然豊かな場所にもゴミをポイ捨てする輩が居るとは嘆かわしい。
見つけたら文句の一つでも言ってやろうと思いながら紙を広げると、逆さではあるが明らかに日本語が書かれている。
ここは日本なのか?と思考を巡らせつつ、ひっくり返して読んでみると
『能力は正常に付与されました。』
と書かれていた。
ギフト?なんだそりゃ。大切な人に送る、季節の節目を祝う贅沢な贈り物ですか?...
ここで俺はピーンと来た。
このような展開は見たことがある。
あれはそう、中学の時にハマって読んでいた軽くて萌えーな地味に高いあの本。
中島君元気にしてるかな...
というのは置いておいて
そう、あの頃の、
インドアでサブカルで、ちょっとアンダーグラウンドな俺らが愛した作品群。
これ、
異世界転生だ。
18時にもう一話更新します。