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願わくは

長かった...。

約30分列に並んだ末、ようやく目的のドーナツを手に入れた。

元々は店内で食べる気だったのだが、生憎の満席であり、加えて裕香が母親に会いたいと言い出したので家で食うことになった。

果たしてコレは買い食いの範疇なのだろうか。委員長様にいいように丸め込まれた気もする。


ともかく、ドーナツを手に入れた俺たちは家に向かって歩き出す。

今日はバイト代が入ったこともあり、全て俺の奢りだ。それが嬉しいのだろう、裕香もかなりご満悦の様子だ。俺も早く帰ってフレンチクルーラーを食したい。


しかし早く帰りたい時に限って信号によく捕まるものだ。もう3回は目の前で赤に変わっている。少し先に見える大きなスクランブル交差点も、既に青が点滅している。コレはまた捕まったかな。


そんなことを考えていると、最後の方を走って横断していた少女が転んでしまった。あーあー大丈夫かな。

膝をすりむいたのかその場で泣き出してしまった。



え、本当に大丈夫か?

信号が赤に変わる。

いや流石に車も来ないだろうと思ったら、右に信号で止まっていたトラックが走り出す。

この車線は左折専用だ。


そこまで思考が追いついた時には、ドーナツの箱を裕香に押し付けて走り出していた。



(やらずに後悔するなら、やって後悔しろ)



赤信号の横断歩道に走り込む。

視界の端に映るトラックは既に左折を開始していた。ちらりと見えた運転手の兄ちゃんは、未だにこちらに気づいていない。

恐怖を振り払いつつ脚に力を込める


遅い脚をなんとか回して少女の元に辿り着くと、

女の子座りで座り込んだ彼女をすくい上げるように抱き抱える。


そして一歩踏み出そうとしたところで。



俺は何もないところで躓いた。



抱き抱えた少女は弧を描いて車線間の中洲の方に投げ出される。

対する俺はその場で自由を失い、不自由な空中をもがくように倒れる


次の瞬間、

とてつもない衝撃が俺を襲った。


-----------------



がっ!............

てよッ!............

..........!」


けたたましいサイレン

ザワザワとした喧騒


その中で


幼馴染みの悲痛な声が聞こえる

少し大人になったはずの彼女が

子供のように泣きじゃくる、そんな声が


生暖かいものが俺の頬をつたる


振り絞って開けた、その目蓋の向こうで

勝手知ったる彼女の、知らない顔がぼんやり映る


そんなに


そんなに泣かないでくれ


俺は、お前のそんな顔が見たかったわけじゃないんだ...



どうしてこうなった


原因はわかっている。





もし、


俺が


俺の運動神経が


人並みで、普通で、一般的で...


そんな運動神経が、俺にあったのなら...





キミを泣かせずに済んだのだろうか?





辛うじてあった俺の意識は、そこで完全に刈り取られた

モチベ維持頑張ります。

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