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甘くて苦い夢を

ブランカの広げた扇からキラキラとした光が男達を包む。男達はゆっくりと体を起こしブランカの前で膝を突いた。

「あなた方が痛め付けて殺した娘はあなた方が今現在、未来に得た愛する妻との間に生まれた娘なの。冒険者として働く父親を尊敬し、愛し、あなた方と同じ冒険者の道を選んだ娘。同じチームとして働くことが娘もあなたも自慢だった……けれど、攻略途中のダンジョンの中で、あなた方は、とある冒険者チームに奇襲を掛けられ、捕らわれ、拷問のような暴力を受けるの…娘は尊敬する父親の名前を叫び、助けを求めている。あなたは繰り返し娘が泣き叫んでいる姿を見て、救おうとする。けれど、男達に阻まれて、目の前で娘は犯され、殺されてしまうの。大きく腫れた顔、あぁ、頬を打たれたのね、血が出ているわ、身体中に傷を付けられて、人形のように犯されている。ほら、娘の声が聞こえていて?助けを求めているわ、早く行かなきゃ、愛しい娘を救わなきゃ!あぁ…、可哀想に汚辱にまみれて倒れた娘に男達は、刃を突き立て……。」

レッドドラゴンの男達は泣きながら、各々の名前を叫ぶ、リーダーの叫んだ名前は実際のものなのだろう。

鬼姫ブランカの見事なまでの幻術だった。

「姫様、」

男達は這いながら自身が殺した娘のもとへ向かっていた。

「ぶっ飛ばした男の頭の中にこんな虫がいたよ?」

うねうねと動くミミズのような虫。

「なぁに、この子?」

エミリーが自身の術で得た情報を伝える。鑑定の魔術の上位版と言ったところか。

「これに宿られると、暴力性、弑虐性が増すんだって、ダンジョンで2週間以上暮らしていると寄生される率が高くなるみたい。ついでに、実力以上の力も出せるようになるんだって。こいつら、潜って2週間以上だって言ってたから。ボス戦に臨む前に出来るだけ多くの魔石を集めようとしてたみたい。」

ブランカは、考える。恐らくエミリーと言う絶対的力を持つ者を前に正常な思考へとシフトしたのだろうと。

「そう、その虫の存在は知られてること?」

「んー、知られてるみたいだよ、だから、大抵の人間は、2週間以上潜らない。精神干渉の防御の術とかしていたら、こいつには乗っ取られないけど、それって結構、この世界では高等魔術でギルドとかでも販売されてるけど、ランクの低い冒険者には高額みたい。で、このチームの魔術師はAランクだから割りと安く手に入るから会得は出来てたけど、自分に術をかけるタイミングを間違ったみたい。2週間を迎える前に術を掛けていれば良かったんだけど、虫共も何だかんだずる賢くて先ず魔術師を狙って寄生する。虫達の小さな野望は強い冒険者を操って、ダンジョンのボスに挑むことだったみたい。可愛い野望だよね!でも、チームの何割かは別にボス戦を目標にはしてなくて、自分のレベルに応じた階層で魔石集めをしながら、戦闘レベルをあげることに終始してるもんだから、こいつらの夢は中々叶わない。ダンジョンからの脱出もチーム全員が帰りたいって望むだけだし。」

良く出来ましたとエミリーを褒めるブランカ。

「この男達は、ダンジョンの中でちんたらしてたから、カモだったんだよ、それなりに強そうだし。」

エミリーが嬉しそうに語る。

虫の生息地はこの階層あたりからとのことだった。

「そう言えば、前回潜った後に聞いたのですが、他国から来た冒険者は、この国での冒険者ランクテストを受けた方がよいと言われているようです。私も勧められました。彼等の祖国でSの称号を貰っていたとしても此方では精々Aに行くかどうかではないかと言われているようです。そうギルドの者が言っていました。何処かのダンジョンで注意を無視して戻らない連中がいるといっていましたが、恐らく彼等でしょう。」

レッドドラゴンのチームは他国の冒険者であり、この国でのダンジョンへの挑戦は初めてであった。彼等の出身国のダンジョンは、大穴から離れていることもあり、規模も小さく2週間もあれば簡単にクリア出来るものだった。

オーヴェル国のダンジョンは、どの国よりも良質の魔石が取れるが、階層も深く敵も多岐に渡ることで有名だった。己の実力を甘く見ていたレッドドラゴンは自業自得である。

アルフォンスの言葉に彼等を見下ろしながら、納得するブランカであった。

「自業自得ね、さて、今から、あなた方にはボスと戦ってもらうわね、ボスと戦っても誰か一人くらいは生き残れるよう術を掛けてあげるわ。でもね、地上に出てもあなた方は、鋼チームを魔獣に襲わせ、賽の目チームに奇襲をかけて殺害し、1人の娘を集団で犯し、殺したと自白しなければならないことは忘れないでね、て言うか、忘れさせないけれど。もちろん、ダンジョンから出る時には、何処か欠損している体であることは覚悟してなさい。あなた方が望むように裁判を受けさせてあげる。さぁ、行きなさい……。」

虚ろな目をした男達が立ち上がり剣を持ち歩き出す。

「姫様は慈悲の方だ………。」

アルフォンスが感嘆の声を上げる。エミリーも感涙している。

「大袈裟ね、でも、エミリーも凄いわ。」

レッドドラゴンの死んだ3人の男達が己の首を抱えてリーダーの後を追って行った。

「この石板は、心臓の拍動を感知して表示されるみたいだから、わざと心臓だけは動かしておいたんだ。ダンジョン内での冒険者殺しは御法度って書いてあったからさ、奴等を殺すのはボスってことにしようって思ったんだ!褒めて!」

「誓約書を読んでいたとは思いませんでした。進歩ですよ、これは!」

「あんだと!」

大袈裟にアルフォンスが言いじゃれ合いが始まった。

「人が死人に変わったのね、彼等の戦力になるのかしら?………まぁいいですわ、さ、ゆっくり、参りましょう。」



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