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ダンジョンへ行ってこい。

「ねぇ、アルフォンス……、」

香り高いロイエンタール辺境伯領自慢の茶葉を手に入れて御機嫌な眷族に声を掛ける。

「なんですか、姫様。」

静かにブランカの前に置かれた紅茶。昨日、城下の骨董品で見つけた茶器は全体的に黒色だが、星空のような青い斑点がかなり個性的で美しいものだった。

「この茶器には、抹茶ではないの?」

持ち手のない器を見てブランカは尋ねた。

「いえいえ、今回は良い茶葉が手に入ったので、敢えての紅茶で召し上がりを。」

「分かったわ……って、違うのよ、言いたいのは、」

「ダンジョンなるものを探索して参ります。」

アルフォンスは、ニッコリと微笑みを浮かべた。

ブランカが望むのは、ジオンとお揃いの騎獣だ。千代丸にも相手を見つけたいと少々お節介を焼いてみたいのもあった。

祖父の言うダンジョンにも興味があった。

鬼姫はこちらに連れてきた眷族達の腕が鈍らないよう鍛練出来る場所が欲しいと考えていた。クロノスのコネで騎士団に入れる訳にもいかないし、今はまだ新しい生活に習慣に馴染むことに意識が向いている。しかし、幼児二人とエイミーは近い内に刺激を求めて騒ぎ出す。

彼らのイライラからくる八つ当たり的トラブルが片付けが面倒くさいことは、ブランカや他の眷族には周知のこと。

同じ穴の狢で、エイミーや幼児よりもトラブルメーカーなクロノスが騎士団に入っていることは僥倖であった。


「親方様の書によると、ダンジョンで生まれた魔物はダンジョン内でしか生きられず、体内に宿る魔石と言う形にならなければ外には運べない。稀に魔石から魔物が生まれることはありますが、ダンジョン魔物は違うらしい。とのことです。」

数日後のお茶の席でアルフォンスは告げた。

「らしい、っていうのは?」

コポコポと紅茶が白磁の茶器に注がれていく。

「ダンジョンの最下層まで行き、生還したものがいないからだそうです。」

今日は、アルフォンスが焼いたマドレーヌと言う菓子が出されていた。美味しいと言うとアルフォンスは当然ですと返した。

「下に潜るほど魔物は大穴から流れてくる魔素の気配を濃く受けているようで強いのだとか。」

大穴と各地のダンジョンは繋がっていると言われている。魔素の質が酷似しているからだ。

「強い魔物なら、ダンジョンから出られるかもしれないのね?」

「魔石に姿を変えさせれば可能です。以前、中で生け捕ったケルピーをダンジョンから出そうとしたようですが、境界を越えると消えてしまったようですから。」

一口運んだマドレーヌを咀嚼する。

「我らの力は使えるのかしら?」

「昨夜、ヨアンナと近くのダンジョンに入り試しました。普段の0.2倍ほどの魔力を消費しましたが、使えました。他の冒険者はプロテクトなる魔術を展開することで魔力消費を抑制していたようですから、何とでもなるでしょう。」

小首を傾げるブランカが尋ねた。

「ダンジョンへ入るのには、申請書がいるでしょう?」

「ほほほほんの少しだけダンジョン周辺警護をしししてギルドの方々の時をおおおお遅くいたいた致しましたので。入りいいい入り口付近だけですので、かかか確約はできませんが。」

興奮するとどもってしまうヨアンナにクスッと笑う。

「では、アルフォンス。ブランカが命じます。」



顔の半分を仮面で隠した青年がダンジョンの前にあるギルド小屋に来た。ダンジョンに潜ると言うよりは、カフェのウェイターのような出で立ちだ。

ダンジョンの周辺には少し開けたキャンプ場があり、ダンジョンに挑戦予定の猛者達が寝泊まりしていた。

ダンジョンに入るには、ある一定の魔力保有、魔術の行使が可能かどうかが必要だ。ギルド登録、各国の騎士登録がされていれば話は早いのだが。青年は魔力を測定する水晶を破壊してしまった。

いくら魔力保有量が桁違いでも何らかの武器や防具が必要だ。しかし、青年は笑う。

自分の身に付けている服は特殊な糸が使われており、魔術による防御も施されていると。武器については笑って語らない。

ダンジョンを舐めていると突っ掛かってきた冒険者がいたが、青年は彼をあっという間に気絶させてしまった。

青年は申請書とダンジョンに入る際の誓約書にサインをしてさっさと穴に潜っていった。ギルドの職員は青年のサインを見たが複雑な文字に誰一人として読むことは出来なかった。


暗い穴の道を進む。

このダンジョンは、南の森の中で一番最初に見つけられたものらしく、第一階層から第二十階層までは、冒険者の手が入っており、松明が道中を照らしていた。階層が変わる際に違う空間に飛ばされ恐らくは階層の主的魔物と遭遇する。その主は一度倒しても次の挑戦者が来る時には復活しているらしい。

Aランクの冒険者が余裕で倒せる相手であり、十二階層まではサクサクと進めるが、以降の階層から少し様子が違ってくる。確かに暗い洞窟のような道を進んでいたはずだったのが、ちょっとした異国情緒溢れる無人のエリアのようになったり、密林のジャングル、活火山を有する広い空間に変化したりする。階層毎に全く様子が違うのだ。

(階層の主の趣味かな?)

誰がダンジョンを作るのか、魔物はどうやって生まれるのか解明されていないのが現状だった。

「さて。」

ここから先は冒険者達がまだ足を踏み入れていないエリアだと青年は口角を上げる。彼の後ろには巨大なミノタウロスが5体倒れ静かに消滅仕掛かっていた。



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