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お花畑で捕まえ……ません!

ジオンは、ブランカとの定例のお茶会を控えていた。

週に一度行われているものだが、ジオンは段々と億劫になっていた。

前回はジオンが倒れたため開かれなかったのだが、ブランカからは、ジオンの体調を心配すると言うよりは、お気に入りのアクセサリーのお店が新作を出したので一緒に見に行ってほしいとの催促の内容で周囲をガッカリさせた。

いっそのこと今日も倒れてしまおうかと思ったりもしたが、決着を着けたい、あの令嬢から解放されたい!との思いが強かった。

王宮内の騒ぎを知らないであろうブランカに対して嫌悪以外何の感慨もないジオンは誓約魔石で見た光景に思いを馳せていた。

誓約対象者の見ている光景を自分が見たと言うことは、対象者にとって自分はどういう存在なのか。

幾度となく面会したロイヒシュタイン公爵令嬢は、夢の中では、醜悪な表情をしていた。彼女を見上げる視界には彼女に対する暴力行為も伺われた。

(あれは……ないな。)

部屋の扉がノックされブランカが来たことを告げた。

(あれを、再教育?無理でしょうに。)

父親も宰相も、ロイヒシュタイン公までもがブランカの正体についての追求は保留し、伯爵代理の罪だけを明らかにしようとしている。

(一蓮托生と言うことをわたしは希望するとしよう。)


目の前のブランカはピンク色のふわふわしたドレスにリボンをしていた。婚約者への贈り物を侍従に適当に頼んでいたが、彼女曰く、リボンはわたしが贈ったものらしい。前々回に贈ったのもリボンだったが(本当に適当だ)屋敷の下女が洗濯中に地面に落としてしまい泥の汚れがとれなくなってしまったので、またリボンを貰えて嬉しかったと告げた。

「その下女は、本当に仕事ができませんの。とっても汚くて見窄らしい、灰色の髪ですのよ?いつか盗みを犯すのではないかとお父さ、おじさまも申しておりました。」

さっきから、ブランカ嬢は伯爵代理を“お父様”と呼びたくて仕方ないらしい。なら、本当の親子にしてやろう。うん、それがいい。

彼女の話題によく出てくる見窄らしい下女。恐らく可愛らしい容姿をしているのだろう。彼女は無意識に或いは意図的に他の令嬢を貶める発言を繰り返す。前公爵が亡くなり、老公は領地経営など頑張っておられるが、如何せん、この令嬢のせいで公爵家の評判は落ちている。それをお茶会などで感じているのだろう、出席していた令嬢を貶める発言を10歳を越えた頃から聞くようになった。こういうことは、得意らしい。

「そうですわ、聞いてくださいませ!」

お茶会で知り合ったケイン伯爵令嬢と騎士団に所属する婚約者が街で流行りの甘味処でデートしたことを自慢していたこと、デビュタントのドレスのこと、アクセサリーのことなど次々に語る。これは、ねだられているのだと分かったが、伯爵代理が老公に任されていた伯爵家の収益の低下について、いずれ公爵家を継ぐブランカに考えを聞きたいと話題を変えてみた。

我ながら意地悪だと思うが、たどたどしく述べた彼女の考えは机上の空論と言うレベルにも到達しないもので、ちゃんと税を納めない民が悪いとまで言い出した。思わず吐いたため息に何とかしようとようと脂汗を掻く彼女が滑稽に見えた。

何回目か分からないため息を吐くとブランカが涙を目に溜めていたのが見えた。

興醒めである。

「数ヶ月後には成人になるのですから、領地の経営についての見識は深めておいでなのでしょう?何を泣くことがありますか?」

そういうと、

「だって、この間、ジオン様から指摘されるまで、知りませんでしたもの。」

情けない。

「常識を常識として教育していない伯爵代理には失望しますね。最近、よい噂も聞きませんし、彼には隠居してもらって、あなたは、ロイヒシュタイン公爵領家に居を移して再教育と言う方針になると陛下が仰っていたよ。」

ブランカ嬢の顔色がなくなった。

「そんなっ!お父さ、おじさまは悪くありません!教師達がちゃんと教えなかったのですわ。」

どこまでも人のせいか。

「それは、おかしいですね。報告では、そんな初歩的なことは、とっくの昔に教え終えていると聞いてますよ?」

ブランカは真っ青だったが気にせず畳み掛けた。そろそろ潮時だ。

「一度聞きたいと思っていたんだけど、」

話題をわたしが変えたことでブランカに安堵の色が見えた。

「はい。」

急に崩れた言葉にも戸惑いもしない。

「何時から、髪の色も目の色も変わったの?ううん、顔も変えた?」

口調を変えてみたから、ブランカ嬢の戸惑いが目に見えた。

「えっ?な、何を仰っていますの?私の髪も、瞳も出会った時から変わってませんわ。」

不思議そうに苛立たし気にブランカは言う。

「ジオン様ってば、そう意地悪なことを言って私の気をお引きになりたいのでしょう?私は、そのように回りくどいことをならさなくても、」

「俺さ、先日、お茶会をキャンセルしたでしょ、」

長くなりそうな彼女の言葉を遮った。

「は、はい、御加減を悪くしたとお聞きしました。ですから、今日は、」

再び娘の言葉を遮るようにジオンは語った。

「前回の約束の前日ね、見学のために魔術の塔に行ってね、君の魔石を見たんだよ。」



後、一時間後に、次話をアップ。

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