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お兄ちゃんは、胃が痛い

行方不明になっていた弟が見つかったと報告が入ったのは、母上が祈りはじめて一週間が過ぎた頃だった。

母上は倒れるし、城はてんやわんやだ。

俺の名は、ジオルド・オーヴェルシュタイン。このオーヴェル国の第一王子だ。

神獣の加護を受け、何不自由なく暮らしていた俺にとってジオンは、血を分けた実の弟だ。6歳年下の弟は少々内気で体が弱い。しかし、2歳下の異母弟とも仲が良く、よく3人で遊んだ。もう一人ジオンより数ヶ月遅く生まれた異母弟もいるが、ヤツとはあまり交流がない。

幼い頃、城の裏にある森の中で俺は子供が抱えるには大きすぎる卵を見つけた。三兄弟の秘密にしようと思ったけど、卵は俺に付きまとった。どこに行くのにもゴロゴロ。風呂やトイレ(扉前で止めた)にまでゴロゴロ。

恐怖でしかなかった。

けど、慣れたなって思った時、突然卵が光りだし家族団欒の最中だったから、皆を慌てさせた。卵から生まれたのがドラゴンのセフィロスだった。

セフィロスは、人語を理解し、喋ることが出来、自身を神獣だと言った。

胡散臭い。

家族の総意だったが、神殿から神官が飛んできてセフィロスが本物であると示した。

父上は、神獣のことを知っていたが何代も前の歴史書に記されていたことなど忘れていたらしい。

セフィロスは、不貞腐れた。実にめんどくさいヤツだった。よくケンカもして悪友のような関係になった。


ジオンが拐われたと知った時に神獣セフィロスに弟を探してくれと頼んだが、セフィロスは願いを叶えてはくれなかった。

『この事件には関わるなと神の啓示があった。何、ジオンは帰ってくる。』

何だよそれ!ジオンの誘拐が神に決められたことだなんて!

セフィロスの言葉を聞いた母上は礼拝堂に籠った。

母上は、隣国の王家から嫁いできた姫巫女と呼ばれる特殊な魔力の持ち主だ。ちょっとした未来視が出来ると聞いた。神に祈り母上が見たものは、ジオンの死だった。

到底受け入れられない母上は更に祈り続けた。そして、ジオンが神から何らかの恩恵を与えられ生き返ると言う未来を見た。

ジオンの無事を祈る母上と心配でならないのに、皇帝として政務をこなす父上。

王宮魔術師達は、皇帝の命だと言うのに今一つジオンの捜索に力を入れていないように見えて腹が立った。

きっと、あの女の実家が圧力をかけているに違いない。ジオンを殺し、自分の息子の地位を上げたいのが見え見えだった。

この国の王太子は俺だ。神獣の加護持ちだからと10歳の時に公表された。害することもできず、揺るがない。満場一致の判断だった。

父上には、母上の他に2人の側妃がいる。一人は母上とも親交がある本人曰くビジネス側妃なナディア妃。彼女と父上の間には王子が一人いて、彼はいずれ俺の右腕として軍部を預かる立場となるだろう。ちょっと見た目はごついが剣の天才とはコイツのことかと思うほど才能に溢れ5歳の時には剣を振り回していた。筋肉バカ……いや、信頼できる相手だ。ジオンのことも可愛がってくれている。で、もう一人の妃がマリアナ妃だ。彼女の実家であるケルン侯爵家は代々優秀な魔術師を輩出し、王家に貢献してきた歴史ある家系だ。現当主も魔術師で魔力保有量も多いが、如何せん性格に難ありの人物で現在は魔術省の幹部ではあるがトップではない。そんなマリアナ妃との間にも王子がいてジオンより数ヶ月遅く生まれたデイビスと言う。

魔術師の才に恵まれていると言う噂だが、今のところ未来の魔術省を背負って立つのはジオンだ。ジオンは王族内でダントツの魔力保有量を誇り、繊細な魔術の扱いを容易く行う天才だ。ケルン侯爵家の力を削ぐために父上はジオンをいずれは魔術省のトップに据えるつもりだ。だから、今回の誘拐だってケルン侯爵家が怪しいんだ。

ジオンが拐われた時側にいた近衛騎士のライナスは処罰を願い出たがジオンはライナスを慕っていた。父上はライナスに2度目はないとジオン奪還作戦に参加させた。

時間だけが過ぎていく日々、セフィロスが“新たな神の啓示がきた”と言って現れた。

『これ以上、時が経てばジオンの肉体までも滅びてしまう。それは避けねばならないとの啓示だ。』

“肉体までも”との言葉に引っ掛かりを覚えたがセフィロスの言葉通り、辺境近くのとある貴族の屋敷の地下でジオンは発見された。

発見時のジオンは、それは酷い状態で直ぐ様治癒魔術と聖水による浄化が施された。

幼いジオンの体は生きているのが不思議なほどギリギリだった。


最悪な状態だったジオンは、目覚めると人が変わったようによく食べ、喋った。

あまり得意ではなかったステーキを好み、セフィロスのことを知らず、“りゅう”と呼んだ。セフィロスを見た時に何故かガックリしていたのを彼に突っ込まれていた。

「なるほど、所変われば、龍の見た目も変わると言うことか、りゅ、ドラゴン、ドラゴン。」

何やらブツブツ言っていた。

そして、セフィロスの爆弾発言。ジオンがジオンではない!いや、ジオンだが魂が別人?!だと言うんだ。しかも、妻って誰!

「わたしの魂の名は、坂上田村麻呂。妻の名前は鈴鹿御前。わたしは、ジオンの復讐と妻探しを頑張る予定です!兄上!!」

元気良く言われても……ううっ、胃が痛い。



後、一時間後にアップ。

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