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苛めるのも飽きました

花と鬼の17部の加筆訂正。

「下女として過ごして参りましたけれど、わたくしの記憶の中には父母の思いが残っております。直接お会いすることは叶いませんでしたが、お父様とお母様の愛は確かにこの身に注がれていたと思いますの。伯爵代理に飼われていた魔術師は、その思いも封じていたようですけど、その思いの中には、貴族としての矜持も含まれておりました。それに、この屋敷で与えられた教育はわたくしの宝です。その経験をさせて頂ける機会を与えてくれたことは、偽物令嬢に感謝しております。」

偽物に燃やされてしまったが、事故当初、ブランカは素敵なおくるみに包まれていた。真っ白な柔らかい生地に母が施した美しく可憐なレースと刺繍。あの事故でブランカが難を逃れたのは父母の特に母の我が子への思いと言う魔力の込められたおくるみのお陰だった。健やかに、神の加護がありますようにとの願いは、何度もブランカを殺そうとした伯爵代理から物理的に守ってくれた。

はっきりと述べる孫娘に祖父母は背筋に汗が流れる。

「学園の寮には、侍女を1人連れて行ってもよいとのこと、わたくしはヨアンナを連れて参ります、彼女は、この屋敷でわたくしに何かを感じ守ろうとしてくれた信頼できる者ですから。」

と言うか、ヨアンナは側に置いたほうが、わたくし安心です。

旦那様の話によると、学園は第四王子の支配下にあるらしいのよね。飛び級でさっさと学園を卒業してしまった旦那様は今になって後悔をしておられるみたい。デイビス殿下は、我が物顔で小さな王国を築いてらっしゃるとのこと。

旦那様には、暫くわたくしに関わらないようにお願いした。この世界の新しい縮図と言うものを学園とやらで学ぶとしましょう。

楽しみです。

そう言えば、あの子も同い年の貴族令嬢だったわね、通うのかしら。

「私達に、何か望むことはないか?」

祖父の言葉に思案する。

「そうですわね、あの偽物に鉱山での強制労働を……でしょうか。」

息を飲んだのは祖父母のどちらか。

「………嘘ですわ。アレを鉱山などに送っては、いつ何時ゴブリンの群れが襲いに来るか分かりませんもの。ゴブリン自体はランクの低い魔物ですけれど、集団でこられると、拘束具をつけられた労働者では太刀打ちなど出来ません。ゴブリンの花嫁など、神殿の奥で結界の中で息を殺して生きるか、死ぬしかない。人にとっては厄災ですわ。」

ゴブリンキングの唾が付いた娘は、例え唾を付けたゴブリンキングが死んでも他の集落のゴブリンキングの花嫁として存在し続ける。自死は呪いで封じられいるとあの子が教えてくれた。

精神もいずれ壊れ、自らゴブリンキングを求めるようになり、神殿の奥に監禁したとして、どれ程持つだろうか。

淡々と語るわたくしが恐ろしく思いましたか?そう祖父母に言ってみた。祖父母は真っ青だ。

「ここだけの話です。」

本当は、ブランカの名誉のため語るのはと躊躇したが、あの偽物がブランカに何をしたか教え、偽物に対する思いを砕いて差し上げましょう。


はらはらと涙を流す祖母と、祖母の体を支える祖父も涙を溜めている。

「余りに辛い経験は、ブランカの心と体を壊しました。そして、わたくしは、新たに生まれ変わらなければなりませんでした。ブランカの体を事件の起こる前の状態に戻し、記憶だけを有した状態で新たな魂をこの身に宿し今に至ります。わたくしは、ブランカを痛め付けた者を許しません。」

ブランカを犯した物達には男としての尊厳を奪うことで溜飲を下げた。あの子に言ってブランカにした仕打ちを口にした、しようとした時に発動する呪いもかけてもらった。公爵令嬢としての尊厳は守られるだろう。

祖父母の顔が理解不能であることを示している。

「わたくしは、ブランカであってブランカではない。死ぬことを渇望したブランカの魂が安らかに天に召されるよう助けたのです。強い死の渇望は、良くないモノも引き寄せます。となるとブランカは、ブランカではなくなり、邪悪なモノに体を支配されることになっていたでしょう。ブランカがブランカであるために、わたくしは、彼女の体を清純なものに再構築し、ここにいるのです。」

ますます混乱なさってますわね。わたくしも何だか面倒くさくなってまいりましたの。

「つまり、あなた方が本当にすまないと謝るブランカは、既に天に召されたのです。」

偽物を孫として愛し、本来の孫の存在に気付かなかった後悔を理解して差し上げるのです。感謝してくださいませ。

「まぁ、色々と申し上げましたけれど、新たな関係の再構築に臨みましょう、お祖父様、お祖母様。」

公爵家を守るためにお2人にはまだまだ息災で居てもらわねばなりませんもの。

ニッコリと微笑むとドアの側に立っていたヨアンナがよろめいた。


祖父母と比較的和やかな夕食を共にした。

あなた方の本当の孫であるブランカは素晴らしい娘なのだと植え付ける。

「突然色々な事を思い出し、辛くて、悲しい記憶に心が痛みました。あの偽物を庇おう、救おうとするお祖父様とお祖母様に冷たい言葉を掛けてしまい申し訳ありません。」

だめ押しで謝れば祖父母は抱き締めてくれた。

2人は暫くの間、王都にあるこのタウンハウスに滞在するらしい。正直邪魔ですけれど、関係の再構築と言ってしまいましたから、仕方ないことですね。客室に案内し、いつものように屋敷内に結界を張る。今頃、祖父母を含めた普通の使用人達は深い眠りに落ちていることでしょう。今日の結界は、幼児に受肉した2人だ。一人ならまだまだ不安定だけど2人なら大丈夫そうね。

湯浴みを済ませ、ヨアンナが髪を梳かしてくれている。

「姫様、面倒くさくなったでしょ、」

ギクリとする。ヨアンナが言っているのは、祖父母への対応だろう。

「仕方ないでしょう?わたくしにとって“悪”でも、偽物が祖父母にとって可愛い孫であったのは事実ですもの。偽物の末路をわたくしやあなた達は当然だと思っていても祖父母にとっては、酷いことなのでしょう。それをやられて当然とブランカが思ってるなんて祖父母の精神に更なる負担だわ、せめて、わたくしが自立するまでは元気でいてもらわなくては。」

柔らかい寝着に着替えベッドに入る。

「そうね、いつか、あの偽物の本性を2人には、目の当たりにしていただきましょう。」

わたくしの呟きにヨアンナが満面の笑みを浮かべた。



つぎからは、花と鬼の名でアップしていた、旦那様のお話の序盤を加筆訂正したものです。恋愛っぽくありません。


後、4時間後にアップ。

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