ナスカの街へ再訪
その日は、ブレアフル辺境伯邸で一晩過ごさせて貰った。
夕食は俺がお土産に持ってきた海産物オンパーレドの食事会になった。
地球のお酒も提供してブレアフルさんやオットーさんを中心に、海鮮とお酒も一緒にして楽しんだ。
翌朝、朝食を頂いてからナスカへと転移をした。
ナスカでも街の外に転移をして、外からナスカへ徒歩で向かう。
街の入口で警備をしている兵士は俺が知らない若い子だった。
まぁ、若い子といっても俺の今の身体の年齢よりは少し歳上なのだろうが。
「ようこそ、ブレアフル男爵領、領都ナスカへ。ギルドカードの掲示をお願いします」
そう、ここはもう辺境伯領ではなく、ジョルシュさんが領主として治めるブレアフル男爵領なのだ。
兵士さんに冒険者ギルドのギルドカードを掲示した。
すると、その兵士は俺のギルドカードをじっと見つめて、驚いたような顔をして俺を見つめた。
「あ、あなたがナスカの英雄、アキト様ですか!」
「えぇ、まぁ、多分、一応。アキトって冒険者が他にいるかは知りませんけど・・・」
すると、ギルドカードを持っていない手を握って来た。
「俺、アキト様の大ファンなんです!
ダンジョンの魔物が溢れ出してナスカへ迫って来た時に、俺も兵士として街の外で街を守るって意気込んでいたのに、ほとんど何も出来なくて、そんな時に俺よりも若い冒険者が自分の従魔と一緒に大活躍したと聞いて、それで門番に配属されたらアキト様に会えると思っていたら、アキト様が魔術学園へ行ってしまったと聞いて。あの、あの・・」
「ありがとうな。でも、あの時は街の兵士も冒険者達が一丸となって対処したから、ナスカの街を守れたのさ。
貴方も兵士の1人として活躍できずとも頑張っていたのでしょ。ならば、貴方も英雄の1人ですよ」
「あ、ありがとうございます。流石、ナスカの英雄ですね。
失礼しました。どうぞ、お通りください。アキト様でしたら、何も問題ありません」
その兵士の許可がおりて、ナスカの門をくぐった。
うーむ、やっぱりナスカの英雄って感じが浸透しているのかな。
ナスカを離れていれば、ナスカの英雄って名前は自然と収まっていくと思っていたのだけどな。
これはとっとと移動をしちゃった方が良いかもな。
まずは、冒険者ギルドへと向かった。
ギルドの中は、既に大半の冒険者が依頼を受けてしまって閑散としている。
併設の酒場にも、誰もおらず食事の仕込みをしている人が見えます。
その中には、ギルド長の奥さんで酒場を仕切っているローラさんの姿は見えない。
そういえば、いつも昼食の時間はいなかったな。
ならば、先にギルド長のデニスさんに挨拶にいくか。
「アキトさん、お久しぶりです」
受付にいくと顔なじみの受付嬢が声をかけてくれた。
顔なじみというか、俺が初めてナスカに来た時に冒険者登録をしてくれた受付嬢だった。
「確か、魔術学園の生徒として、王都へ行っていたのですよね」
「えぇ、それで長期休みになったので、デニスギルド長に挨拶に来たのですが、今いらっしゃいますか?」
「この時間でしたら、ギルド長室にいらっしゃいますよ。
アキトさんならば、直接行かれても問題ないでしょう」
まぁ、ナスカにいた時は受付を通さずにギルド長室へ行っていたし、それを咎める人もいなかった。
ということなので、ギルド長室へ向かって、その扉をノックした。
「はいよ~。入ってくれ」
許可を得られたので、ギルド長室へ入った。
「デニスさん、お久しぶりです」
「おぉ、アキトじゃないか。元気そうだな。」
デニスさんはそう言って俺を迎えてくれた。
ギルド長室のソファで向かい合って、近況報告とかをした。
「そういえば、王都の統括ギルド長から、お前がAランクの模擬戦さえ受けてくれたら、とっとと昇格をさせるのに、いつまで経っても受けに来ないから、もしこっちに来ることがあったら、早く受けるように説得してくれって手紙が来ていたぞ」
「いやぁ、一応魔術学園を卒業するまでにはAクラスに昇格をするつもりですよ。
王都ってそんなに人手不足なんですかね」
「まぁ、強い冒険者っていうのは、出来るだけ確保しておきたいのがギルドとしての考え方だ。
それに、いざという時にAランクにしておけば、外野が何を言ってきても文句を言わせずに派遣を出来る」
「それって、王都のギルドには文句を言うような人がいるってことですか」
「まぁ、王都は顧客に貴族や豪商も多い。
動く金額も多ければ、それだけ色々と言われることも多いんだろうよ」
王都の統括ギルド長のシーメンさんも大変ということだ。
じゃあ、王都に帰ったら早めにAランクになっておこうかな。
王都の冒険者ギルドには、シーラやダキニと一緒に狩りまくった魔物を大量に売ってお世話になっているからな。
最近は俺が王都の冒険者ギルドに行くと、ギルドの職員さん達がビビりだす。
大量の魔物はそれをさばいたり鑑定したり金額を出したり、やることが大量に増える。
それだけ、ギルドとしても儲けが大きくなるだろうが、仕事量も大変なのだろう。
うん、迷惑かけている分、Aランクには早めになっておこう。
「そういえば、ケイトやアンナ達は元気にやっていますか?」
「おう、しっかりと経験を重ねて今はEランクの冒険者をしているぞ。
それに、前にも話をした通り、あの4人はジョルシュの道場にも通っている。
流石にアキトほどじゃないけど、このギルドの中でも一番伸び盛りで成長をしているんじゃないか」
あの4人も成長して頑張っているんだな。
「どうせ、この後にでもジョルシュのところにも顔を出すんだろ?
ちょうど、今日は冒険者の活動を休みにして、ジョルシュのところで訓練をしてくるって言っていたぞ。
流石に今は領主の仕事があるから、アキトが通っていた時のようにつきっきりでの訓練とはいかないから、決まった日に道場で訓練をしてくれるそうで、あいつらもそれに合わせて冒険者の活動は休みにして、ジョルシュの道場に通うようになったらしい」
「勿論、ジョルシュさんのところにも顔を出しますよ。
じゃあ、ケイト達が道場にいるならちょうど良かった。
そういえば、ローラさんはこの時間帯って、ギルドにいらっしゃいませんでしたよね。
ローラさんにも挨拶しておきたいのですが」
「ローラは朝と夜に酒場に出て仕切っているから、昼は家の仕事をしてくれているのさ。
それだったら、ジョルシュのところにいれば良いさ。
あいつとは定期的に情報交換ってことで会っていて、今晩もあいつのところへ行く予定だったから、その時にローラも連れていくさ。
酒場の従業員も成長しているって言っていたから、一日くらい夜に引っ張り出しても問題ないさ」
「じゃあ、ジョルシュさんのところへ顔を出したら、そこで待たせて貰っていますね」
「その時は、またアキトの国の酒を出してくれよ」
「デニスさん、そっちが目当てになってりゃしませんか?
まぁ、良いですけど・・・
そうだ、俺、海沿いの街で長期休みを過ごしていたので、海産物を大量にお土産に用意をしているので、その時に出しますから、お腹も空かせて来た方が楽しみですよ」
「ほぉ、そりゃ酒もすすんでしまいそうだな。
それに、こっちじゃ海産物なんて滅多に流れて来ないから楽しみだわ」
デニスさんと、夜にまた再会することを約束して、早速ジョルシュさんの道場へ向かった。
目の前にある道場は、俺がダンジョンへ入る前はずっと通っていたので、今は懐かしさすら覚える。
さて、ジョルシュさんやケイト達は元気にしていますかね。
ナスカの英雄の名は未だ覚えられています。




