魔術とスキル
無事に依頼の終了報告終わらせて、アンナ達の場所にたどり着いた。
「ねぇねぇ、皆依頼の報酬出たんでしょ?どっかご飯に行こうよ。
あ、勿論アキトも一緒だよ。午後の訓練前に美味しもの食べたいよ。」
そんな風にアンナが騒いでいた。
「確かに、訓練前にご飯は食べたいけど、街中でお店探す時間はないぞ」
「えぇ~。ケイトはどっか美味しいお店知らないの?空腹で訓練なんて嫌だよ」
「いやいや、皆と一緒にナスカまで来て、午前の依頼以外はほとんど一緒に行動してるんだぞ、アンナが知らなきゃ俺も知らないだろ」
そんな風に、アンナとケイトが漫才みたいな会話をしていた。
「ギルドの酒場でランチもやってる。あそこの酒場は美味しい。時間も無いから早くいく。」
急にフィデスがそんなことを言い出すと、そのまま酒場の方へ歩いて行ってしまった。
「ちょっと、フィデス待ってよ~」
そう言いながら、アンナはフィデスの後を追っていった。
「なぁ、ケイト。お前らって、いつもあんな感じなの?」
「そうですね。アンナは思ったことを、すぐ口から出てしまい、一度言ったら中々曲げないですし、フィデスは口数が少ないですが、自分の興味があることには一人で黙々と行動してしまいますから」
ケイトはため息をつきながら、答えてくれた。
「まぁ、頑張れ。ウォルフもいるんだから、なんとかなるさ。
さぁ、自分達も行こう。昼飯を食べそこねるよ。」
そう言って、3人で酒場へと向かったのだった。
酒場には、ローラさんはいなかった。
朝も夜も酒場を仕切っているんだから、昼くらいは休憩をとっているのだろう。
さて、今日の昼飯だが、黒パンのサンドイッチと朝食にも出てきた野菜のスープだった。
具材はハムのようなもの、サラダ、卵を炒ったものの3種類だ。
昼飯は有料になるが、結構なボリュームもあって銅貨5枚だ。
まだ、この街の相場って把握できてないが結構安いんじゃないのかな?
どれも、一口サイズにカットされているので、固い黒パンでも一口で頬張れるので食べやすい。
ハムのようなものは、地球で食べていたハムよりも塩気がだいぶ強いのだが、黒パンとの相性は中々良い。
サラダは、シャキっとした歯ごたえが、黒パンとはまた違った食感をだしていて、こちらも中々の美味である。
そして、卵のサンドイッチだが、これも十分美味しいのだが、如何せん日本生まれでマヨネーズであえた卵サンドに慣れてしまっている自分には少々物足りない気がする。
あぁ、マヨネーズも既に物品創造できるのだが、今はまだ手の内を証したくないので、気軽には使えないな。
「そうそう、あたしは今日はね、パン屋さんの販売手伝いをやって来たんだよ。
その場で、すぐに計算しなきゃいけなくて、大変だったよ」
アンナが今日の仕事に付いて話し始めた。
「アンナは計算がそんなに得意じゃないしな。
僕はドワーフの親方がやっている武器屋で鍛冶場の雑用だったな。
現場は暑いし、重い鉱石を運ばされるしでキツかった」
「私は教会の運営する孤児院で子供の面倒。私のうさみみに子供たちもメロメロ」
そう言って、自慢のうさみみをピコピコ動かしている。
Gランクの依頼って結構色んな種類の依頼があるんだな。
もしかしたら、ただ街の依頼を受けるというだけでもなく、何かギルドとしても考えがあるのかもしれない。
そんな感じで昼食を終えて、自分達は午後からの訓練に向かった。
「よし来たな。今日の訓練を始めるぞ。」
ギルド長であり、自分達の指導員でもあるデニスがGランク冒険者達に声をかける。
「今日は、魔術に関しての修行やりたいと思う。
と言っても、知ってる者もいるかと思うがギルドで魔術を専門に教えていた爺さんは、ついこの間死んじまった。
なんでも「ものすごい才能を持ったものが現れる、これは気合を入れんと」とか言って、爺さんの癖にヤバい薬を使って無理をして娼館で遊んでいる最中におっ死んじまった。
いいか。お前らはこんな風になるなよ」
お、おぅ。もしかしたら、すごい才能ってチート特盛の自分のことだったのかもしれないぞ。
で、でも自分が悪いわけじゃないし、大丈夫だよな。
しかし、何で「すごい才能を持ったものが現れる」なんて分かったんだ?
「それで、今回は俺が教えられる、近接技能になる身体強化の魔術を全員に教える。
魔術スキル持ちの後衛の魔術師達は不要と思うかもしれないが、前衛が崩れた際にすぐにその場を逃げるたり、あると便利だから出来る限り覚えるように。
勿論、近接戦闘をするものは、ほとんど必須とも言える。
ある程度の強さの魔物までならば近接の戦闘技術でなんとかなるが、それを超えて来ると身体強化がないと厳しくなってくるぞ」
そんな風に説明していたが、俺には気になることがある。
「あの、デニスさんよろしいでしょうか?」
「ん?何だアキト、質問か?」
「はい、身体強化なのですが、それってスキルが発現しないと使えないのでしょうか?」
「あぁ、そういうことか。他にも勘違いしているものもいると思うから、よく聞いておけ。
魔術に関しては特に勘違いしやすいのだが、特にスキルがなくても発動することは出来る。
勿論、人には得意不得意があるので、発動しない奴もいるがな。
例えば俺でも”火よ灯れ”」
人差し指に一瞬火が灯って、すぐに消えた。
おぉ、異世界に来て初めて他人の魔術らしい魔術を見たぞ。
「ふぅ、俺はこういう属性魔術は得意じゃないから、一瞬火を灯すだけでかなり魔力を消費してしまうがな。
それでも長年、身体強化を使っていればこれくらいは出来るようになる。
身体強化の魔術も体内の魔力を使う立派な魔術の一種だからな」
なるほど、じゃあ身体強化を使っていけば、身体強化のスキルは勿論、他の魔術系のスキルを手に入れるスキル創造の必要魔力も減っていくわけだな。
魔術系のスキルを手に入るのは随分先だと思っていたが、案外近いかもしれない。
「んで、身体強化の魔術の訓練方法だが体内の魔力を動かして、その魔力を身体の一部、強化したい場所に集めて維持するのが基本だ。
だんだん慣れていくと、それを複数の場所に魔力を集めたり、魔力を高めて身体全体に巡らせて全身を身体強化する方法もある。
身体強化した部分は力が増えるし、耐久性も持久力も上がるが、使用中はずっと魔力を消費し続けるから、ここぞという時に使うのがいいな。
勿論、慣れれば消費する魔力量は減っていくがな。
さて、この中で属性魔術でもなんでもいいから、魔術を使えるやつはどれくらいいる?」
そうすると、Gランク冒険者の中で1/3くらいの人間が手を挙げた。
アンナとフィデスも手を挙げる。
俺はスキルで魔力を消費することは出来るが、魔術自体は使えないから手は挙げなかった。
あ、もしかしたら鑑定や転移って魔術になるのかな?まぁ、いいや。
「それじゃ、魔術の使える奴は体内の魔力の動かし方をわかってるだろうから、パーティや知り合い同士で両手を繋いで、魔力を動かしてやれ。
別に魔術が使えんでも、魔力の動かし方がわかるやつは自分なりに身体強化の練習をしてみていいぞ」
そうすると、皆パーティ毎に固まって練習を始めた。
俺の知り合いも、ケイトはアンナに、ウォルフはフィデスに、それぞれ手を繋いで練習を開始した。
アンナなんかは、
「ケイトの魔力なんかすぐに動かせるようにして、アキトの手伝いしてあげるから」
なんて言ってくれるがな。
まぁ、自分は物品創造の時にタブレットに魔力を抜かれる感覚もわかるし、鑑定や転移の練習の時も魔力を使っていたので、なんとかなるだろう。
短編がヒットしたおかげか、この連載のアクセス数もちょっと増えて来て嬉しい限りです。
まだ、なろうっぽい”俺めっちゃ強いやろ”って感じは出せていませんが、もう少しお待ち下さい。
そろそろ、スキルも増えていくかと思われます・・・(たぶん)
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