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エルフの里の里長

何故か、リリスちゃんを真ん中にユーリアと俺とで手を繋いで里長のところまで歩いている。

リリスちゃんがそうしたいと言い出したのだが。


「楽しいなぁ。お父さんがずっと里にいないから、こういうのに憧れていたんだ」


そうか、学園長先生がずっと魔術学園にいることで、リリスちゃんも寂しい思いをしているんだろうな。

ユーリアも微笑ましそうにリリスちゃんを覗いている。


「それに、こうするとアキト兄がお父さんで、ユーリア姉がお母さんみたいだよね」


そういうと、ユーリアは顔を真っ赤にしたが、リリスちゃんが寂しい思いをしていたというのが分かって、手を離すことが出来ずにあたふたしながら歩いていた。

リリスちゃん、もしここまで分かって発言をしていたら、恐ろしい娘だ。




ということで、里長の家に着いた。

里長の家といっても、他の家と同じ程度の大きさで、特別豪華な感じもしない普通の家だ。

ユーリアが里長の家の扉をノックする。


「はいはーい。あら、ユーリアちゃんにリリスちゃんじゃない、それにその男の子がアキト君ね。中に入ってちょうだい。」


玄関に出てきた女性は、ベルタさんと見た目は同じくらいである。

ただ、エルフの女性だから、見た目じゃ年齢は分からない。

完全にボン・キュッ・ボンって感じでスタイル抜群だ。


部屋の中に入ってみたが、中も普通の家って感じで、特別な感じはしない。

ソファに座るように案内されて、3人揃ってソファに座った。


「それじゃ、アキト君は初めてお会いしますよね。

私がこのエルフの里の里長を務めている、ディードー・ルサールカといいます」


「ユーリアと魔術学園で同じSクラスのクラスメイトのアキトです。

あの、ルサールカの名字っていうと、ユーリアと親戚ですか」


「あぁ、私はユリウス・ルサールカの母親だよ」


「学園長先生の母親ってことは、ユーリアやリリスちゃんのおばあちゃ・・・」


そう言おうとすると、ぐっとディードーさんが顔を近づけて来て、


「確かに、ユーリアちゃんとリリスちゃんの父親は私の息子だけど、こんなに若くて、綺麗なのだから、おばあちゃんはないんじゃないのかなぁ。」


そんな風にディードーさんに迫られています。


「里長は、おばあちゃんと呼ばれることや年齢のことを聞かれることが嫌いなのです。

私達も基本的には里長と常に呼んでいますから」


ユーリアが耳打ちをして教えてくれた。リリスちゃんも隣でうんうんと首を縦に振っている。

そういうことは、もっと早く教えてくれると助かるのですが。


「ユーリアちゃん、何かあるのかな?」


「いえいえ、里長。私からもアキトさんに注意をしていたところですよ」


「えぇ、大変失礼しました。確かに、こんなにお綺麗な方には合いませんよね」


「ふふふ、よく分かっているじゃない。アキト君はエルフの里の住人じゃないから、里長じゃ微妙だろうから、ディードーさんでもディードーちゃんでも好きに呼んでいいわよ。

それとも、ユーリアちゃんのお婿さんになって、すぐにここの住人になるのかな?」


「え、それなら私も嬉しいな。ユーリア姉とアキト兄お似合いだよ!」


ディードーさんの冗談に、リリスちゃんが乗ってしまっている。


「そんな予定はありません!

それにアキトさんは魔術学園を卒業したら、冒険者となって世界を回るのですよ。

エルフの里で収まるような方ではありません」


「じゃあ、ユーリアちゃんも将来はアキト君に付いていくのかな?」


「え、え、そんなことは・・・」


うん、またユーリアがフリーズした。

エルフの里では、いつもフリーズしてしまうことが多いな。


「ユーリア、里長に学園での学業の進捗状況を報告するんじゃなかったの?」


「そ、そうでした。ご、ごほん」


ユーリアがわざとらしい咳払いをして、姿勢を整えた。

ディードーさんも、その様子を見てユーリアからの報告を聞く態勢になった。


「エルフの里、ユリウス・ルサールカとベルタ・ルサールカが長女、ユーリア・ルサールカが、エルフの里、里長のディードー・ルサールカに、魔術学園での学業の進捗状況を報告いたします。現在の・・・」


思った以上に、格式張った形で報告をするんだな。

俺とリリスちゃんが同席していても良かったのだろうか。

流石にリリスちゃんもその雰囲気を察したのか、静かにその様子を見ている。

うん、天真爛漫な感じだけど、結構頭は良い感じだよな。


「以上で報告を終了します。」


そんなこんなで、ユーリアの報告も終わった。


「はい、全体的には順調。近接戦闘に関しては異常だね。

エルフはどちらかというと、近接戦闘の得意な種族ではないのに、今の報告のとおりの実力だと考えるとアキト君との模擬戦のおかげなんだろうね」


確かに、ユーリアは種族的に得意とはいえない近接戦闘もしっかりと頑張っている。


「リリスちゃんもアキト君も付き合わせて悪かったね」


「いえ、それは良いのですが、かなり形式張った報告の仕方をするんですね」


「あぁ、そこは気になるよね。

元々はエルフの里がエルトリア王国の一部になった時に、エルフの里からエルトリア王国を代表する魔術学園へ留学生を送ることで、エルフの里とエルトリア王国の友好を深める使者としての扱いがあったのさ。

使者としては、魔術学園はもとより人族が中心のエルトリア王国内でどういう状況で生活をしていたのか、事細かに説明が必要ってわけさ。

今もその流れで、エルフの里から魔術学園へ向かう者は長期休みの度に報告に来る形になっているのだけど、もうエルフの里がエルトリア王国の一部になったのもだいぶ昔だし、ユリウスのように魔術学園で働いて学園長にまでなってしまうのもいるから、この制度も無くしてしまっても良いと思っているんだけどね」


「でも、エルフの里を代表して魔術学園へ行っているのは、今も昔も変わりません。

そういう伝統も大事だと思います」


「こうやって、通っている張本人の頭が固いから、今でも続いているわけさ。

この報告さえ無ければ、ここに帰って来る必要もなく、スムーズに同級生達との旅行に行けただろうに。

あ、それともアキト君と2人でラブラブな時間を過ごしたいのかね。

どうせ、転移ですぐに移動できちゃうだろうから、短い時間なのにいじらしい子だよ。」


「そういうことを言っているのではありません!この報告も大事なものなのです。

アキトさんとはそういう関係じゃないと、さっきも言いましたよ!」


祖母がからかって、孫が本気になっている感じだな。

その横で、リリスちゃんもラブラブラブラブ言っているが。


しかし、俺が転移を使えることも知っていたな。

まぁ、ベルタさんが里長の許可がどうこうと言っていたから、その時に伝わったのだろう。


「そうそう、アキト君のエルフの里での滞在は住人には知らせてあるから、ゆっくりしていきなさい。

まぁ、自然しかない里だから、見る物なんてないだろうけどさ」


「そうしたら、木の中位精霊がエルフの里にいると、ユーリアから聞いたのですが、お会いすることは出来ませんか?

まだ、一度も中位精霊を見たことがないので、会ってみたいと思っていたのです」


そう、精霊魔術の実技の授業で、木の中位精霊の契約者の学園長先生が、精霊召喚で見せてくれると思っていただが、結局長期休みまでには見る機会がなかった。


「あら、ユリウスが精霊魔術の授業をやっているはずなのに、まだ見せていないのね。

木の中位精霊は世界樹のところにいらっしゃるので、自由に見学に行って良いですよ。

ただ、精霊は必ずしも姿を現すとは限りません。この里のエルフの中でも、姿が見えない者も多くいます。

だから、見られなくても落ち込まないでね。

ユリウスに召喚をさせれば、ユリウスの魔力を媒介にして誰にでも見える姿で現れるから」


はい、おばあちゃんネタは、拝借をしています。

あの作品大好きなので、今後も拝借・オマージュがあるかも知れません。

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